IBM Consulting
建設業のデジタルツイン・テーマを考える上での視点
2022年08月23日
カテゴリー IBM Consulting | IBM Sustainability Software | デジタル変革(DX)
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建設業におけるデジタルツインの潮流
デジタルツインとは、現実世界(リアル)にある「モノ」「コト」の情報をリアルタイムに仮想デジタル空間に連携し、状況の可視化・予測シミュレーション等を実施、その分析結果を元に現実世界の活動を改善させていく循環を指します。IoT・AIや画像解析技術、ドローン、ロボット、AR・VR機器といった各種デバイス等の進歩もあり、昨今拡がりを見せています。
そもそも建築分野は、熱・風・音・光などの建物に関わる環境シミュレーション、土木分野においては水理、土質、波などの自然環境や交通流動に対するシミュレーションなど、建設ライフサイクルの上流では多くの予測がこれまで行われており、それらが構造物の設計に反映され、設備運用・維持管理においても活用されています。
一方、施工計画から施工領域においては、長年、紙媒体及び2Dを中心に施工計画を行い、それを元に現場における仮設物、本設構造物のイメージを技能労働者に伝達し、実際に構築された構造物を目視にて施工管理者が確認し、進捗を管理することが続いていたと思います。
それが、BIM/CIMを中心にタブレットで施工管理業務を行うことが当たり前になっている近年、さらにデジタルツインの技術を活用して、「設計情報や部材の建方情報をAR・VR機器にて現場で確認することで手戻りを解消する」「現場の進捗情報や状況をモデルにて可視化し、管理工数を削減する」など、現場業務の生産性向上に繋がる取り組みが加速していると感じます。
デジタルツイン・テーマを考える上での視点
業務システム全体をリアル・デバイス・デジタルの階層で分け、データの流れを俯瞰する
現場と事務所において分断される点も多かった建設業の業務において、デジタルツインで繋がることで生産性向上に寄与する機会も増大すると考えます。よって、これからデジタルツイン・テーマを検討される、または多くのデジタルツインのテーマがある中で、優先度を決めて継続的に取り組まれようとされている建設業のお客様も多いのではないでしょうか。
デジタルツイン・テーマ検討にあたっては、業務システム全体を「デジタル・デバイス・リアル」の階層構造に分けて可視化することが重要だと考えています。
「デジタル」領域については、バックエンドに構える(1)基幹・業務システム、建設業のお客様の業務の中心である(2)モデル(BIM/CIM)、リアルに最も近い層として(3)外部接点・情報共有・ダッシュボードなどの関連システムと3層に分けると整理しやすいでしょう。
「デバイス」領域は近年拡大している領域で、モバイル・タブレット・ウェアラブル、AR・VR機器、カメラ、ロボット、IoTセンサー、GNSSなどが該当すると考えますし、こちらの層は今後もアップデート・追加されていく領域だと考えます。
これら大きく3階層に分けた業務システム全体像を用いて、「どこから」「どこへ」「どんなデータ」を連携するか整理しながら、デジタルツインのユースケースが討議可能ですので、実現性・ソリューショニングにも合わせて検討できます。
例えば、建設現場の取組例でマッピングするのであれば、「設計情報や部材の建方情報をAR・VR機器にて現場で確認する」ことについては、「モデル階層→リアル階層」に、AR・VR機器のデバイスを通してモデルデータを反映させているような流れになりますし、「現場の進捗情報や状況をモデルにて可視化する」ことについてはその逆の流れになります。
考えられる建設フェーズのデジタルツイン・ユースケース・イメージ
上述する、デジタルツイン・テーマを考える上での視点を元に、IBMとして考えられる建設フェーズのデジタルツインの全体像とユースケース案をまとめました。
理想的な全体像としては、リアル、デバイス、デジタル(外部接点、モデル、基幹・業務システム)間で、うまく循環しながらデータが連携されることだと考えます。状況の可視化・予測シミュレーション等を実施、その分析結果を元に現実世界の活動を改善させていく循環こそが、現場業務目線のニーズであり、技術者・技能労働者の生産性の向上に寄与する点だからです。
デジタルツイン・ユースケース案については、現場業務目線のニーズから考えておりますが、これら階層にマッピングすることで「可視化したい情報はカメラで取得可能だ」「データは既存の業務システムから連携可能だ」など実現性や課題なども言及できるかと思います。
デジタルツイン・ユースケース案
(以下は図中の内容を、おおよそ「リアル→デバイス→デジタル→リアル」の循環順に記載)
- 現場の進捗情報をカメラにて自動的に取得し、モデルにて可視化。さらに工程管理、出来形管理のシステムに連携
- 風、気温などをセンサーで取得し、モデルで可視化、メッシュ気象予測とも掛け合わせ注意喚起に活用
- 現場の仮設物設置状況をモデルに反映し、立案
距離を計測し搬入・移動経路の確認
安全設備の不足をモデルで確認
在庫状況や需給予測を踏まえ、仮設転用計画立案
- 現場からカメラにて資機材の数量、搬入場所、仮置場などの情報を取得し、モデルに反映
- 現場の入荷情報、搬入・仮置場所などの情報をデバイスにて入力・取得し、資材管理、調達管理システム、在庫管理システム等に連携
- 出面・工数管理の自動化
- 歩掛り取得→積算への展開の簡素化
- 業務システム(工程、会計、積算)とモデルを連携した上で、出来形に応じた予実確認を実施、その後の収支シミュレーションを実施
- 作業指示、施工手順などの伝達を、モデルを通じて実施
- モデルにて可視化された現場資機材の数量・仮置場を技能労働者に伝達
- 仮設物の不備や安全上注意点をデジタルツイン化したモデルを通して施工管理者、技能労働者に伝達
デジタルツインに関わるIBMのご支援領域
デジタルツインに関わるIBMのご支援領域は、実証実験、企画・構想策定、システム化計画(ソリューション・デバイス)、システム開発、デバイス現場導入など、デジタルツインの現場展開に向けてワンストップでご支援可能です。
今回の記事では、デジタルツインを考える上での視点とユースケースにフォーカスしており、実現方法としての技術的な側面については言及しておりません。「どのように実現するのか?」も含めて建設業のデジタルツイン・テーマを検討したいお客様は、是非お問い合わせ頂ければと思います。
奥村 拓也
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部
インダストリアル・プロダクツ・サービス事業部
マネージング・コンサルタント
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