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IBM watsonx Assistantは生成AIでコンテンツを対話型の回答に変える

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watsonx Assistantは対話型検索を提供し、企業固有のコンテンツに基づいた対話型の回答を生成して、顧客や従業員の質問に対応します。対話型検索は生成AIを使用することで、人間の作成者が手作業で回答を書いたり更新したりする手間を省き、価値創造までの時間を短縮し、バーチャル・アシスタントにかかるコストを削減します。

 

IBM watsonx Assistantは、基盤モデルの学習、導入、管理を行うビジネスのためのAIおよびデータのプラットフォームであるwatsonxに接続し、ビジネス・ユーザーがカスタマイズされたwatsonxの大規模言語モデルを使用して、正確な会話による質問応答を自動化できるようにします。

 

IBMおよびwatsonx Assistantは、顧客との対話を含むテキストの高度な処理と理解のために、2020年から基盤モデルを使用してきました。現在、Assistantはwatsonxに接続し、関連する企業固有の情報に基づいた文脈に沿った回答で自然言語の質問に対応する生成AIフレームワークであるRetrieval-augmented Generation(RAG、検索により強化した文章生成)を実装しています。

 

 

Retrieval-augmented Generation(RAG)

RAGは、検索ツールと生成AIを組み合わせたAIフレームワークで、検索ツールやベクトル・データベースから企業固有の情報を取得し、その情報に基づいた対話形式の回答を生成します。

 

検索フェーズ

まず、watsonx Assistant は組織のコンテンツから関連情報を検索します。例えば、コンテンツはナレッジベースやコンテンツ管理システムに保存されている場合があります。Assistantは、検索ツールを使用してこのコンテンツに接続し、見込み客、顧客、または従業員からの質問に応じて正確な最新情報を取得します。

 

watsonx Assistantは、ノーコードからローコード、カスタム構成まで、組織のコンテンツに接続するためのさまざまなパターンをサポートしています。Assistantは検索用の Watson Discovery とノーコードで連携することができます。Watson Discoveryを使用すると、技術的なバックグラウンドを持たないビジネス・ユーザーが文書をアップロードしたり、ウェブをクロールしたり、Microsoft SharePoint、Salesforce、Boxに保存されているコンテンツに接続したりすることができます。

 

また、Coveo、Google Custom Search、Magnolia、Zendesk Supportなどの一般的な検索ツールに接続する方法をステップごとに説明したwatsonx Assistantのスターターキットを利用することもできます。

 

回答生成フェーズ

 

watsonx Assistant が組織のコンテンツから関連情報を取得すると、その情報を watsonx の大規模言語モデル(LLM)に渡し、そのコンテンツに基づいた対話形式の回答を生成します。

 

正確で最新のコンテンツを LLM に渡して回答を生成させることで、watsonx Assistant は、LLM の回答がインターネットのデータというオープンな領域ではなく、企業固有のコンテンツというクローズドな領域に基づいていることを保証します。その結果、LLM が不正確な情報や誤解を招く情報を「ハルシネーション(幻覚)」する可能性が低くなります。

 

このフレームワークはまた、watsonx Assistant が、生成されたすべての回答をそのソース・コンテンツまで遡ることができることを保証します。企業とその見込み客、顧客、従業員は誰でも、回答の出所を確認することができます。生成された回答自体は、そのソースへのリンクやソースからの文章とともに、バーチャル・アシスタントに表示することができます。

 

回答生成をサポートするため、watsonx Assistant は IBMリサーチおよび watsonx と連携し、企業固有のコンテンツに基づいた回答を生成することに特化した、カスタマイズされた watsonx LLM を開発しました。お客様はwatsonx Assistantをカスタマイズされた watsonx LLM に接続するために、対話型検索用のRAGの設定プロセスを一つずつ説明するスターターキットを使用することができます。また、watsonx Assistant のカスタム拡張フレームワークを使用して、独自の watsonx LLM やサードパーティーの LLM に接続し、RAGやその他の生成ユースケースに使うこともできます。

 

対話型検索の実際

このRAGのフレームワークによる対話型検索は、バーチャル・アシスタントの構築、導入、維持にとってどのような意味を持つのでしょうか?

 

最初のバーチャル・アシスタントの構築と導入がより簡単になります。対話型検索により、watsonx Assistant は、技術者でないビジネス・ユーザーが手作業で回答を書かなくても、幅広い質問に正確に回答することができます。チームは、既存のバーチャル・アシスタントの対応範囲を拡張して新しいトピックを扱えるようにしたり、組織の既存のナレッジ・ベースに接続された新しいバーチャル・アシスタントを立ち上げて起動したりすることができます。

 

バーチャル・アシスタントの維持管理にも労力がかかりません。一旦watsonx Assistantが対話型検索のためにナレッジベースに接続されると、生成される回答に情報を提供するために、そのソースから情報を自動的に引き出します。情報が変更されたり、新しい情報が利用可能になったりした場合、チームはナレッジ・ベースの情報を更新するだけで大丈夫です。watsonx Assistantは自動的に更新された情報を取得し、回答に反映します。チームは、手動で回答を更新したり、モデルを再トレーニングしたりする必要がなくなります。

 

全体として、対話型検索は価値創造までの時間を短縮し、watsonx Assistant を使用して優れた対話型体験を構築し展開しようとするチームに必要な労力を削減します。

 

なぜwatsonx Assistantで対話型検索なのか?

watsonx Assistant の対話型検索機能は、あらかじめ組み込まれた統合機能、ローコード統合フレームワーク、およびノーコードでのオーサリング・エクスペリエンスを基盤としています。開発者もビジネス・ユーザーも同様に、対話型検索で質問応答を自動化し、より価値の高いトランザクション・フローや統合されたデジタル体験をバーチャル・アシスタントで構築できるようになります。

 

対話型検索にとどまらず、Assistantは分類、推論、抽出、要約、およびその他の会話型ユースケースに特化したカスタマイズされたwatsonx LLMを開発するために、IBMリサーチおよびwatsonxとの協力を続けています。watsonx Assistantは、大規模言語モデルを使用して、より少ない労力で顧客を理解する能力において、すでに大きな進歩を達成しています。

 

watsonx Assistantの生成AI機能については、今後のアップデートにご期待ください。また、生成AIを活用した対話体験で見込み客、顧客、従業員との関係を強化する方法について詳しくお知りになりたい場合は、こちらから営業担当者との相談予約をお取りください。


IBMの対話型AIソリューションのご紹介


*この記事は英語版IBMブログ「IBM watsonx Assistant transforms content into conversational answers with generative AI」(2023年8月31日公開)を翻訳し一部更新したものです。

 

 

 

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