IBM Watson Blog

IBM Watsonで、データ、モデル、プロセスに対する信頼をどのように築くのか

記事をシェアする:

 

2021年4月21日 By Seth Dobrin (英語)

IBMの最高AI責任者として、私は組織と協力して、AIに対する包括的なアプローチを確実のものにする立場にあります。私たちは、企業のAI戦略立案、指針の設定、責任あるAI製品にあらゆるビジネスの「意図」と「目的」を盛り込む作業を協力して行っています。

IBMは、IBM Watson製品の新機能の発表を行いました。企業のデータとAIモデルへの信頼構築の支援を目的として設計された機能です。以下は、AIのライフサイクル全体を通じて信頼できるAIを構築する、包括的なアプローチを行うための新機能です。

IBMの管理するデータとAIテクノロジーは、AIライフサイクルの3つの主要要素(データ、モデルおよびプロセス)に対して、倫理的AIの基本原則(透明性、説明可能性、公平性、堅牢性、およびプライバシー)に沿って構成されています。AIライフサイクルの主要な部分に信頼を築くためのツールを提供することで、企業がAIとその成果に信頼を寄せられるよう支援しています。

データへの信頼

データへの信頼とは、管理され、分析の準備ができている質の高いデータを総合的に表示することを意味します。私は、データとそのリネージュ(来歴)が時間の経過とともに適切に構造化され、理解され、維持されるようにするために、企業がタイムリーかつ信頼できる質の高いデータを持っていることがいかに重要であるかを実際に見てきました。質のよくないデータでは、どんなに高度なアルゴリズムでも対応できません。

私たちがデータに信頼を築くうえでの目標は2つあります。第一に、リネージュの追跡やポリシー適用といったデータのガバナンスに関するもので、どちらもデータを管理して堅牢なデータ基盤を提供するために必要です。第二に、データを使用する必要がある人々や、セルフサービス機能を通じてデータを利用するAIモデルがデータを利用できるようにするために、企業を支援します。

そのため、IBM Watson Knowledge Catalogでは、組織がどこにいてもデータ資産とその関連性にアクセスでき、キュレートし、分類して共有できるよう、ハイブリッド・マルチクラウドのエンタープライズ・メタデータ・リポジトリーを利用可能にすることで、エンドツーエンドのデータ管理機能を提供します。Watson Knowledge Catalogは、データとAIで行うあらゆることを集約するいわば「神経系」であり、人々がデータを理解し、データとAI資産を管理および保護し、データ品質を向上することを目的として設計されています。このソリューションは、企業が複数のパブリックおよびプライベートのクラウドにまたがるさまざまなソースからのあらゆるデータを網羅するエンタープライズ・カタログを構築するのに役立ちますが、それだけにとどまりません。ペルソナや役割に応じて、データの表示やアクセス権限をさまざまに変更できるようにも設計されています。

モデルへの信頼

モデルへの信頼とは、モデルの精度に対する信頼を高めることです。どうすればよいのでしょうか。IBMでは、必要と考えられるツールや機能を統合することで、AIモデルをより効率的に実行および管理し、AIライフサイクル管理を簡素化し、データサイエンティストがデータ主導の意思決定を業界最先端のツールであるIBM Watson Studioに集約して最適化できるようにしました。

IBM Watson Studioは、AIライフサイクル管理を自動化することで、企業が組織全体で信頼と透明性をもってAIを構築および拡張できるように設計されています。継続的なモデル・ガバナンスを備えたAIを導入することで、組織はAIの説明可能性を維持し、ビジネス要件に合わせて調整しながら、発見、予測および成果までの過程をスピードアップできます。さらに、製品にインテリジェントなオートメーションを導入しました。これは、バイアスやドリフトといった問題を特定して軽減しながら、モデルを構築して管理するうえでの人間のスキルを補完する目的で設計されています。

IBM Watson Studioは、データ・プライバシー、守秘義務、コンプライアンス、あるいは単純に取り扱うデータ・サイズなどの問題によって、データの移動ができない、または移動すべきではない状況で役に立つ、機械学習の手法の適用を支援するフェデレーテッド・ラーニング機能のテクニカル・プレビューを追加しました。IBM Watson Studioを使用すると、従来はサイロ化されていたデータ・ソースを使用してAIモデルをトレーニングできるようになります。

モデルへの信頼を築くことはまた、モデルやその結果の予測に対する説明可能性を高めることでもあります。そのため、当社は2021年第2四半期にはIBM Planning Analytics with Watson(英語)に新しい統計詳細ページを追加して、予測を生成した方法について、より透明性に優れ理解しやすい情報を提供する予定です。

プロセスへの信頼

プロセスへの信頼を築くための当社のアプローチは、大規模AIのコンプライアンス、再現性、および総合的な説明可能性の維持を支援することを目的としています。そこで、IBM OpenPages with Watson (英語)  のような、高度に拡張が容易なGRC(ガバナンス、リスク、コンプライアンス)ソリューションが登場しました。

IBM OpenPages with Watsonは、サイロ化されたリスク管理機能を単一の環境に一元化し、とりわけ今日の変化の激しいビジネス環境において、企業がリスクやコンプライアンスを特定、管理、監視および報告する義務を果たすのに役立つように設計されています。IBM OpenPages with Watsonに新たに追加されたData Privacy Managementモジュールは、刻々と変わるデータ・プライバシーの課題に、企業が対処するのに役立つよう設計されています。OpenPagesとWatson Knowledge Catalogを統合することで、企業はサイロを解消し、アプリケーションからAIモデルまでにわたり、プライベート・データがどのように使用されているかをより包括的に把握できるようになります。

信頼の構築は、IBMのビジネス戦略向けAIにおいて中核となる要素であり、企業がAI活用を進めていくうえで重要です。

IBM Researchとの連携によって、IBM Watsonにより優れた革新的なツールとアプローチを継続的に提供することにより、当社は倫理原則とオープン・エコシステムへの取り組みに支えられた一連の製品を設計してきました。これにより、企業はAIライフサイクルのどの時点においても信頼を構築できるため、ハイブリッド・マルチクラウド環境全体で確信を持ってAIを運用できるようになります。

プレスリリースを読む

 

将来の見通しに関する記述および注意事項:IBMの計画、方向性および指針に関する記述は、IBMの裁量に基づき予告なく変更または撤回される場合があります。将来の潜在的製品に関する情報は、IBMの製品に関する一般的な方向性を概説するもので、購入の決定はこれに依存するべきではありません。将来の潜在的製品に関する情報は、資料、コードまたは機能の提供を確約、保証または法的に義務付けるものではありません。将来の潜在的製品に関する情報は、いかなる契約にも組み込むことはできません。IBMはその裁量に基づき、IBM製品の将来の機能開発、リリースおよびタイミングを決定します。

 

 

原文:How IBM Watson is helping clients build trust in data, models and processes (https://www.ibm.com/blogs/watson/2021/04/ibm-watson-trust-data-models-processes/(英語))

More IBM Watson Blog stories

ジェネレートするAI。クリエートする人類 。 | Think Lab Tokyo 宇宙の旅(THE TRIP)

IBM Data and AI, IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software

その日、船長ジェフ・ミルズと副船長COSMIC LAB(コズミック・ラブ)は、新宿・歌舞伎町にいた。「THE TRIP -Enter The Black Hole-」(以下、「THE TRIP」)と名付けられた13度目の ...続きを読む


IBM Cloud『医療機関向けクラウドサービス対応セキュリティリファレンス (2024年度)』公開のお知らせ

IBM Cloud Blog, IBM Cloud News

このたびIBM Cloudでは総務省ならびに経済産業省が提唱する医療業界におけるクラウドサービスの利活用に関するガイドラインに対応していることを確認し、整理したリファレンス『医療機関向けクラウドサービス対応セキュリティリ ...続きを読む


イノベーションを起こす方法をイノベーションしなければならない(From IBVレポート「エコシステムとオープン・イノベーション」より)

Client Engineering, IBM Data and AI, IBM Partner Ecosystem

不確実性が増し、変化が絶え間なく続く時代には「イノベーション疲れ」に陥るリスクがある。誰もがイノベーションを起こしていると主張するならば、結局、誰もイノベーション(革新的なこと)を起こしてなどいないことになるだろう 当記 ...続きを読む