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IBMの半導体への取り組み(3) ―ミッションクリティカルな半導体製造をSiViewで支える(技術者編)

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急速に需要が高まり世界が注目する半導体業界に向けて、日本IBMグループでは、AIチップの研究開発から生産技術、ソフトウェア開発、コンサルティングサービスなど多くの領域で取り組んでいます。本稿では、半導体の製造実行システム「IBM SiView Standard」(以下、SiView)のIT開発、コンサルタント、データ分析の3つの役割を担う技術者に半導体業界に関わる魅力ややりがいをインタビューしました。

 

大崎 智弘
T.O
日本アイ・ビー・エム株式会社
 
半導体工場向けMESソリューションSiViewの製品開発と導入・保守を経験した後、製造業のお客様を中心にデータ分析技術を用いた構想策定プロジェクトを数多く担当。現在は半導体業界のお客様へのSiViewを中心とした幅広いソリューションコンサルティングをリード。全体最適の視点を活かした実際の現場で役立つ提案に取り組んでいる。

 
目次

  1. 「世界中、全部やる。」をスローガンにSiViewは1998年から世界展開へ
  2. 半導体の業界スキル x IT技術力、両方を併せ持つメリットを仕事に活かす
  3. “ファブレス”のイノベーションに期待、ワクワクを形にするために
  4. 社会の営みを止めないために、何があっても製造し続けるシステムを

 

1. 「世界中、全部やる。」をスローガンにSiViewは1998年から世界展開へ

 

―半導体工場向けの製造実行システムSiViewにはどのような特徴がありますか。
 
半導体は非常に複雑なプロセスを経て作られています。徹底した品質管理のもと、製造ラインは大規模かつ24時間365日稼働していて、製造ラインが1時間止まるだけでも社会に大きなインパクトを与えてしまいます。SiViewは、こうしたミッションクリティカルな半導体の製造プロセスを管理・制御するための製造実行システム(Manufacturing Execution System、以下MES)です。
SiViewにはシステム的に優れた機能がたくさんありますが、詳細はこちらのIBM SiView Standardのページをご覧頂くことにして、ここではIBMらしい2つの特徴をご紹介します。
 
1つ目は、何といっても日本で生まれ育ったMESという点です。1980年代に滋賀県のIBM野洲工場の最先端製造ラインで使用していた自社用のソリューションを、その後外販したのがSiViewビジネスの始まりです。私が入社した当時も「世界中、全部やる。」というスローガンのもと、多くの先輩社員が熱烈な意気込みを持ってSiViewの展開に取り組んでいました。
まだ駆け出しの技術者だった私も懸命に製造の現場を学び経験を積みましたので、今でも格別の思いがあります。現在SiViewは 300mm半導体工場を中心に多くのお客様工場に導入され、MES市場で高いシェアを占めています。
 
2つ目の特徴は、お客様へのコンサルテーション、システム開発、導入、保守のフェーズまで全て日本IBMグループが一気通貫で行うという点です。前述の通り、IBMの半導体に関する取り組みには長い歴史がありますので、業界とMESに精通したコンサルタントとITエンジニアが数多くいます。そうしたエキスパートが総力を結集し、高い技術力と品質でSiViewのEnd to Endのサービスを提供しています。SiViewの標準機能を利用して工場を早期に立ち上げるのはもちろんのこと、お客様固有の要件を組み入れたきめ細やかなカスタマイズも行っています。

 

2. 半導体の業界スキル x IT技術力、両方を併せ持つメリットを仕事に活かす

 

―ITエンジニア、コンサルタント、データサイエンティストの一人三役でSiViewに関わっていますが、秘訣はどのようなところにありますか。
 
三役というと大層なことのように聞こえますが、いずれの役割でもベースになっているのは製造、半導体業界の専門知識です。新卒で日本IBMグループに入社したあと、数年間はSiViewの製品開発に携わり、半導体業界について基礎からみっちり学びました。MESの開発にはITスキルが必要なのはもちろんですが、それと同じくらい半導体に関する知識と製造現場を詳しく知っていることが必要なのです。プロジェクトの先輩やお客様にたくさんのことを教えてもらいました。業界や製造プロセスが分かってくると、関連するシステムのことやデータの動きを理解することができるようになって、仕事が格段に面白くなったのを憶えています。
 
近年、製造業界のスマートファクトリー化(*1)が進み、工場内のさまざまなデータを収集・分析した結果を、業務プロセス改革や生産性・品質の向上につなげることが可能になりました。
製造業のどのお客様でもそうですが、収益を上げるためには歩留まり(製造した完成品の中で検品に合格する製品の割合)を増やさなければなりません。
私の場合はあるプロジェクトで、製造プロセスの処理状況や製品の品質検査結果などの膨大なデータから不良の原因を特定し対策につなげる、という業務を担当する機会がありました。そこから本格的にデータサイエンティストの勉強をして現在に至っています。
データを扱う活動の中で実感したのは、高い精度でデータを分析し課題解決に繋げるには、統計的な手法を知っているだけでは不十分で、半導体の製造プロセスを熟知してこそデータを正しく有効に活用できるということでした。システム開発、データ分析、お客様へのコンサルティングサービスのいずれにも、半導体業界の専門知識が欠かせません。

 

3. “ファブレス”のイノベーションに期待、ワクワクを形にするために

 
―技術者の視点で、半導体業界がこの先どのようになってほしいですか。
 
半導体業界は「参入障壁が高い」と言われています。そこで近年、いわゆるファブレス企業(fab: fabrication facility、ここでは半導体の製造工場を持たない会社のこと)による、工場を所有せずに製造業としての活動を行うビジネスモデルが活発になっています。
ファブレス企業は製品の設計のみを行い、生産はファウンダリと呼ばれる半導体製造に特化した他社に委託します。そうすることで製造設備を持たずとも自社のアイディアを製品化できる利点があります。
 
そうしたファブレス企業は、「半導体を使って何を実現したいか?」にとことんこだわった新しい発想の製品やサービスを設計し世に出してきますので、アイディアは実にさまざまです。高精細な画像処理・映像解析技術で人や物を判別するような最新技術を使った製品をはじめ、私たちの毎日の生活を便利にするスマホのアプリなどもたくさん生まれていますね。
現在はファブレス企業のプレーヤーの数は限られていますが、今後新たな参入企業が生まれる可能性もあると思っています。次はどんなアイディアや製品が生まれるのだろうとワクワクしているんですよ。今後、高性能で安価な半導体が普及することでAI技術がさらに発展し、将来私たちの想像をはるかに超えた新たなイノベーションが起こるでしょう。こちらにも期待を寄せています。
 
SiViewはそうしたイノベーションを形にして量産する製造工場のシステムとして、半導体業界の発展を支える存在です。半導体が安定的に供給されることが快適で豊かな社会を維持する基盤になっていると、私自身も生活者の1人として日々実感しています。テクノロジーで社会を支える使命感や充実感は、この仕事をしていて最もやりがいを感じるところでもあります。

 

4. 社会の営みを止めないために、何があっても製造し続けるシステムを

 
―半導体工場の安定稼働への思いを教えて下さい。
 
半導体は金融機関や交通、インターネット・通信などの社会インフラの基盤となっていますので、もし製造ラインがストップし半導体を供給できない事態になれば、人々の社会生活に大きな影響を及ぼします。
一方で業界を取り巻く社会状況は近年ますます複雑化し、セキュリティやサプライチェーン、災害など多方面にわたるリスクが生じています。半導体製造というミッションクリティカルなシステムの安定稼働は容易には実現できません。
私のチームはシステムを止めないために、また万一緊急事態に陥った場合にも、影響を最小限に抑え、早期に製造ラインを復旧させるために、詳細な分析をもとにした何重もの対策を講じています。
こうした取り組みを中心に、私が長く培ってきた製造、半導体業界に関する知見とMESの技術と実績を最大限に活かして、これからも製造現場から半導体産業全体の成長と拡大を目指して行きたいと思います。
 
 
 
参考
*1: スマートファクトリー:デジタル技術の活用によって業務プロセスの改革や生産性・品質の向上を継続的に行う工場のこと。経済産業省 中部経済産業局 スマートファクトリーロードマップ〜 第4次産業⾰命に対応したものづくりの実現に向けて(2017年)

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス(IJDS)採用情報
 
 
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ijds author
文・写真:加藤 智子 
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス(IJDS)事業企画推進 ラーニング&ナレッジ担当

 
 

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