Data Science and AI

IBMがPyTorch Foundationに加入し、オープンソースのAIコラボレーションを推進

記事をシェアする:

IBMは、理事会に席を置くプレミア・メンバーとして参加します。

ここ数年、AIは大きな変革期を迎えています。現代のAIシステムには、一世代前には想像もできなかったようなことができるようになっています。その革命の多くはクラウドによって促進されました。データがどこにあっても大規模なモデルを学習させることができ、いつでもどこでも必要なときにAIシステムを呼び出せるようになったことで、私たちの生活や仕事のほぼすべての側面にAIが浸透しました。

しかし、1つの企業や組織がこの革命をもたらしたわけではありません。世界中で行われた研究と、オープンソースのソフトウェアで構築されたシステムがこの実現を可能にしました。AIの研究とオープンソースのコラボレーションの可能性をさらに広げるため、IBMはPyTorch Foundationにプレミア・メンバーとして参加しました。Linux Foundationの1プロジェクトであるPyTorch Foundationは、深層学習のコミュニティーがオープンソースのPyTorchフレームワークとそのエコシステムでコラボレーションをするための中立的な場として機能しています。

IBM Researchの主席研究員であるRaghu Gantiは次のように言っています、「ビジネスのためのAIといえば、キーワードはスケーラビリティーです。スケーラビリティーがなければAIの利点をビジネスに活かすことはできません」「これは、今日のエンタープライズAIが直面している大きな課題です。私たちがこれを達成する一つの方法が、PyTorch Foundationとのオープンソースのコラボレーションです」

プレミア・メンバーとして財団に参加することで、IBMは理事会の議席を得ることができます。理事会は、細則、ミッション、ビジョン・ステートメントを通じて方針を定め、財団のイニシアチブの活動範囲を定義します。IBM Researchで基盤AIモデルの学習・検証プラットフォームのリーダーの一人であるGantiが、その席を埋めることになります。彼のチームは主にPyTorchの学習コンポーネントに貢献しており、基盤モデルの学習と検証を民主化することを目標としています。

PyTorch Foundation のエグゼクティブ・ディレクターであるIbrahim Haddadは次のように言っています。「IBMのオープンソースへのコミットメントは、AIツールやテクノロジーへのアクセスを民主化し、研究者や開発者にとって利用しやすくするのに役立ちます」「彼らがコミュニティーと協力することで、より広範なAIコミュニティーにも資するでしょう」

IBMとPyTorchはすでに2つの主要プロジェクトで協業しています。1つ目は、InfiniBandネットワーク・システムのような高価なコンポーネントではなく、イーサネット・ネットワークなどの標準的なクラウド・ネットワーキング・インフラで、何十億ものパラメーターを持つ大規模な基盤モデルを効率的に学習できるようにするものです。IBMとPyTorchはまた、AI学習の際のチェックポイント保存のコストを大幅に削減する方法にも取り組んできました。両チームは、チェックポイントの処理を共有ファイルシステムからオブジェクト・ストレージに移行するためのPyTorchの改良に取り組み、これによってコストを大幅に削減することができました。それも、たった1行のコード変更で。

「IBMとPyTorchは、AIモデルの学習と実行を、より迅速で、コスト効率的で、さらに大規模なモデルにスケールできるように、そしてこれをすべてIBMのハイブリッドクラウド・プラットフォームでできるように進めています」とGantiは言います。

IBMが7月に発表した新しいwatsonxプラットフォームは、このPyTorchとのコラボレーションを活用しています。このプラットフォームは、AI基盤モデルをエンドツーエンドで学習、ファイン・チューニング、推論するための、企業での実運用に適したソフトウェア・スタックを提供します。IBMはPyTorchを使用して、言語、プログラム・コード、地理空間データ、ITデータのための最先端の基盤モデルを作成しており、これらのモデルはwatsonxプラットフォーム上で稼働します。

IBM Researchのハイブリッド・クラウド・プラットフォームおよび開発者生産性担当バイス・プレジデントであるPriya Nagpurkarは、次のように言っています。「私たちはPyTorch Foundationに参加することで、専門知識とリソースを提供してPyTorchの機能をさらに進化させて、柔軟なハードウェアの選択を可能にするなど、ハイブリッド・クラウド環境でAIをより利用しやすくすることを目指しています」「PyTorchとの協業によりIBMは、watsonxプラットフォームを利用してビジネス変革を推進する企業に、基盤モデルと生成AIのパワーをもたらします」

この記事は英語版IBM Researchブログ「IBM joins the PyTorch Foundation to further open-source AI collaboration」(2023年7月28日公開)を翻訳し一部更新したものです。

More Data Science and AI stories

敷居もコストも低い! ふくろう販売管理システムがBIダッシュボード機能搭載

IBM Data and AI, IBM Partner Ecosystem

目次 販売管理システムを知名度で選んではいないか? 電子取引データの保存完全義務化の本当の意味 ふくろう販売管理システムは「JIIMA認証」取得済み AIによる売上予測機能にも選択肢を 「眠っているデータの活用」が企業の ...続きを読む


テクノロジーが向かう先とは〜中長期テクノロジー・ロードマップ

IBM Cloud Blog, IBM Data and AI

IBM テクノロジー・ビジョン・ロードマップ – IBM テクノロジー・アトラスを戦略的・技術的な予測にご活用いただけます – IBM テクノロジー・アトラスとは? IBM テクノロジー・アトラス ...続きを読む


データ・ロードマップ

IBM Data and AI

生成AIによるビジネス革新は、オープンなデータストア、フォーマット、エンジン、製品指向のデータファブリック、データ消費を根本的に改善するためのあらゆるレベルでのAIの導入によって促進されます。 2023 オープン・フォー ...続きを読む