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DXの近道「アプリケーション・モダナイゼーション」の始め方 成功の秘策とは

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運用コストの増大、新サービス開発の迅速性や柔軟性の低下など、レガシーシステム特有の課題を解決してデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するには、アプリケーション・モダナイゼーションが不可欠です。成功のセオリーを解説します。

DX実現に不可欠なアプリケーション・モダナイゼーション

多くの企業にとって、「2025年の崖」をいかに克服するかが大きな課題となっていますが、レガシー・システムが抱える数々の問題が足かせになっています。レガシー・システムと聞くと、メインフレームで構築された基幹システムをイメージする向きもありますが、今やオープン系基幹システムの一部もレガシー・システムになりつつあます。

日本IBMの渡海浩一(IBMコンサルティング, アプリケーション・モダナイゼーション戦略・サービス, パートナー)は、2000年代にはJavaによるWebアプリケーション開発が主流となっていたことを例に挙げ、次のように説明します。「2000年代に構築したWebベースの基幹システムを、現在に至るまで改修を繰り返しながら利用しているケースは珍しくありません。これらのシステムでさえ今や15年〜20年が経過しており、レガシー・システムと呼ばれています。早期のモダナイゼーションが必要です」

同様に、2001年に公開されたオープンソース・ソフトウェア(OSS)のWebアプリケーション開発用フレームワーク「Apache Struts」(以下、Struts)も、既にサポートが終了しておりセキュリティーの問題があります。Strutsで構築した基幹システムを使い続けている場合は、早期にモダナイゼーションを考えなければなりません。

しかし、レガシーシステムを運用・保守できるスキルを持った人員は不足しています。それに伴う運用・保守コストの増大も代表的な課題です。渡海は「既存のレガシーシステムは属人性が高く、アプリケーションの改修に数カ月単位の工数がかかってしまうため、柔軟性や迅速性の低下も課題になります。こうした背景からも、モダナイゼーションの必要性が高まっています」と話します。

モダナイゼーション方針は要件・コスト・移行期間で決定

渡海によると、一般的にモダナイゼーションを実施する場合は図1のような5つのステップ(STEP)で進むのが望ましいといいます。中でも重要になるのがSTEP3「モダナイゼーション方針の決定/To-Beアーキテクチャー策定」です。

STEP1から5のモダナイゼーションの戦略・計画を経て、実行フェーズを実施 STEP1 ビジネス戦略、IT戦略の整理(ビジネス戦略・施策、全社IT戦略、クラウド戦略) STEP2 IT資産の現状分析(簡易的な分析、専門家による分析、ツールによる分析) STEP3 モダナイゼーション方針の決定 To-Beアーキテクチャー策定(API化、UXモダナイゼーション、フレームワーク更改、DevSecOps適用、PaaS化、SoE・SoRの分離、マイクロサービス化) モダナイズ手法 リファレンス・ アーキテク チャー STEP4 移行ロードマップ・計画作成(ロードマップ、プロジェクト計画、費用見積) STEP5 継続的なモダナイゼーションの実行(クラウドの設計/構築、DevSecOpsの実装、継続的開発の実践)

図1モダナイゼーションの実行ステップ

 

まずマイグレーションかモダナイゼーションか、またはその組み合わせにするか、といった方向性を決めます。このとき、既存のアプリケーションから何が変わるのかを示しているのが図2です。一般的なアプリケーションの開発プロセスと同様に、

  • 業務仕様の決定
  • アプリケーション仕様の決定
  • ソースコードの作成
  • プラットフォームに実装

という4つのレイヤーに分けて考えていくことになります。

4つのレイヤーごとに既存の アプリケーションから何が変わるのかを示した図 プラットフォーム、ソースコード、アプリケーション仕様、業務仕様の順にコストと移行期間が大きくなる

図2モダナイゼーション方針の決定

 

プラットフォームだけを変えるならば「リホスト」、つまりプラットフォームをクラウドにマイグレーションするアプローチになります。業務は変えずにアプリケーションだけを変える場合は「リビルド」、ソースコードから変更するならば「リライト/コンバージョン」となります。業務ごと見直すなら「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング」(BPR)や、業務要件定義からやり直す「スクラッチ開発」という手段を選ぶことになります。外部に向けてインタフェースの仕様を変えるならば「API化」のアプローチになります。

重要なのは、図2で示すレイヤーの上の方ほど、コストや移行期間が大きくなるということです。業務要件定義からやり直すアプローチはコストや期間が大きくなりますが、API化のアプローチならコストも期間も小さく抑えられます。ビジネスとして目指すべきものを見極めた上で、コストとスケジュールを検討し、最終的な移行方針を決定することになります。

モダナイゼーションの方針が決定したら、課題を解決してあるべき姿を実現する「ToBeアーキテクチャー策定」に進みます。渡海によると、代表的な適用パターンとして、

  • フレームワーク更改
  • PaaS(PlatformasaService)化
  • SoE/SoR(SystemsofEngagement/SystemsofRecord)分離
  • コンテナ化/マイクロサービス化

などが挙げられるといいます(図3)。アプリケーションの特性や戦略的価値、技術的制約などを考慮して適用パターンを選定します。

アプリの特性や戦略的価値、技術制約等を考慮し、モダナイズのパターンを選定する。現状のアプリケーション課題 トラディショナルなIT・複雑なシステム・レガシーアプリケーションにより、開発スピードが遅い、アプリが複雑で生産性低下、高い運用コストとキャパシティー不足、スキル要員の不足、データ資産を十分に活用できていない、新テクノロジーを活用できていない モダナイズの適用パターン API化、DevOps適用、UXモダナイゼーション、フレームワーク更改、PaaS化、SoE/SoR分離、コンテナ化/マイクロサービス化 To-Be ハイブリッドクラウド・アーキテクチャーとマルチクラウド開発基盤・運用(DevOps)

図3モダナイゼーション方針の決定

 

例えばAPI化は、レガシー・システムはそのままに、データだけを抽出して新しいアプリケーションで活用するデータの利活用に有効な手法です。UXモダナイゼーションは、フロントエンドの改修によって業務の拡大や効率化を実現します。DevOps適用は、アプリケーション開発と運用の迅速性、柔軟性の向上に貢献します。さらにフレームワーク更改とPaaS化はアプリケーション開発の生産性と品質の向上に、SoE/SoR分離は最新テクノロジーの活用に、コンテナ化/マイクロサービス化はモダナイゼーションの迅速性と柔軟性の向上を導きます。渡海氏は「適用パターンはどれか1つを採用するものではなく、適材適所で複数の適用パターンを組み合わせて活用することで効果を発揮します」と説明します。

渡海は次のように話す。「レガシー・システムのモダナイゼーションにより、企業システムのあるべき姿はオンプレミスとクラウドからなるハイブリッドクラウドのアーキテクチャーとなり、さらに複数のクラウドを活用したマルチクラウドでの開発や運用となるのが一般的です」

多くの企業がモダナイゼーションで「2025年の崖」を克服

経済産業省のDXレポートが公開されて以降、多くの企業がブラックボックス化したレガシー・システムをさまざまなレベルで刷新し、DX実現のためのIT基盤整備に取り組んでいます。IBMが提供するモダナイゼーション・サービスの事例を幾つか紹介します。

ある企業は、部分最適によってサイロ化され利便性が低くなったインターネット・サービスを改善する必要に迫られていました。アプリケーション・フレームワークにStrutsを採用していたために、セキュリティー上の問題も抱えていました。その他、各種キャッシュレス決済の技術を採用したり、ソーシャルメディア連携を強化して新しいビジネス領域を開拓したりする必要もありました。そこで同社はToBeアーキテクチャーとして、フレームワーク更改やPaaS化、コンテナ化/マイクロサービス化、DevOps適用を採用。最新のアプリケーション・フレームワークを導入し、コンテナ化による保守性と拡張性の高いアプリケーション構造を実現しました。さらにDevOpsによって新しいサービスをタイムリーに実装・展開できるようになりました。

別の企業では、顧客データが事業ごとに散在して再利用が困難になっており、ガバナンスにも課題がありました。システム構造がサイロ化していたため、アプリケーションのリリース・サイクルが長期化していることも問題でした。そのため、ToBeアーキテクチャーとしてUXモダナイゼーション、SoE/SoR分離、コンテナ化/マイクロサービス化、DevOps適用を採用しました。同社はレガシーシステムに散在していた顧客データを収集し、IBMが提唱する次世代アーキテクチャーに従った変化に強いデジタル・サービス層に集約。マイクロサービスのアプリケーションをコンテナで実装することで、柔軟性の高いシステム構造を実現しました。

メインフレームを利用していたある企業は、レガシー・システムのデータはそのままに、フロント側の各チャネルにデータを提供したいと考えていました。そこで、ToBeアーキテクチャーとしてAPI化、SoE/SoR分離、コンテナ化/マイクロサービス化を採用。次世代アーキテクチャーのデジタル・サービス層にアプリケーション基盤、API管理基盤を設けることで、メインフレーム資産をシンプルにAPI連携させています。

これらの事例が示すように、日本IBMはユーザー企業がアプリケーションのモダナイゼーションを推進するさまざまな支援策と豊富な経験を有しています。日本IBMならではの強みについて、渡海は「ミッションクリティカルな基幹システム構築から運用までの豊富な経験を生かし、クラウド連携、移行、運用までを考慮したモダナイゼーション設計ができること」と話します。

日本IBMには、大規模で複雑なプロジェクトを遂行した経験・ノウハウを有するプロジェクト・マネジャーやアーキテクトが多数在籍しています。経験豊富なアドバイザーがグローバル市場で培った知見を活用し、ベストプラクティスを提供することで企業のモダナイゼーションを支援することも日本IBMの強みと言えます。

日本IBM渡海浩一の写真

IBM コンサルティング事業本部
ストラテジック・セールス&クライアント・ストラテジー
パートナー
渡海 浩一

 

この記事はTechTarget Japan(アイティメディア社)に掲載された記事を一部更新して転載したものです。

 


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