IBM Cloud Blog
第7回『グローバルワイズ社 EcoChange におけるコンテナ共創の取り組み』
2021年10月25日
カテゴリー IBM Cloud Blog | IBM Cloud Partner Blog | IBM Partner Ecosystem
記事をシェアする:
上段左からグローバルワイズ廣瀬様、千葉様、坂本様。下段左から日本アイ・ビー・エム古川、藤井。
DXを推進するためのテクノロジーとして世の中で注目を浴びる技術の一つにコンテナがあります。しかしアプリケーションをコンテナし、要求に追従して迅速にアプリケーションをリリースすることは簡単ではありません。アプリケーションのアーキテクチャーの変更や改修、体制やプロセスの変更など大きな変化を伴います。日本アイ・ビー・エムではコンテナ共創センターを立ち上げ、お客様とともにコンテナ技術を利用したシステム、アプリケーションの開発を推進してまいります。
今回はコンテナ共創センターの取り組みの一つである、お客様アプリケーションのコンテナ化をご支援する「個別技術相談会」にご参加いただき、既存アプリケーションのコンテナ化を達成されたグローバルワイズ様にお話しをうかがいます。
— まず、今回コンテナ化したEcoChangeについて紹介ください。
(グローバルワイズ廣瀬様) EcoChangeは、中小企業共通EDI標準仕様に準拠した業界横断型のXML-EDIサービスです。
まずEDIについて簡単に説明します。EDIとはElectric Data Interchangeの略で、企業間の受発注を始めとする電子データの交換を行う仕組みです。EDIは取引関係のある企業で同じシステムを導入する必要があります。多くの取引先がある場合、互換性のあるEDIを利用することにより、取引関係のある企業間で効率的なやり取りを実現できます。
弊社ではこのような「つながるEDI」(共通EDI)の普及を目指し、EcoChangeではあらゆる業種の中堅・中小企業様にご利用いただき、受発注を効率的に実施いただける機能を提供しております。特に共通化の障壁となっていた独自メッセージフォーマットを排除し標準化できる、XML-EDIを採用することにより、電話FAXを使用していた処理を自動化することによる作業の効率化や、決済業務との連携機能により煩雑な請求と入金などの省力化を実現できます。
EcoChangeの稼働イメージが湧くように少しシステム的な話をすると、EcoChangeは発注者と受注者の間に位置します。イメージとしては以下のようなものです。
発注者と受注者のそれぞれの業務アプリケーションとEcoChangeの連携にはデータマッピング作業が必要となります。EcoChangeは中小企業共通EDI標準使用に準拠しており、中小企業共通EDIの辞書項目を標準で利用しています。お客様の業務アプリケーションのデータ項目とこの辞書項目とをマッピングします。
業務アプリケーションにおいて、業務データの項目の名称や順序が異なる場合でも、発注者・受注者それぞれがデータマッピングを行うことにより、EcoChangeを介した円滑な連携を行うことができるようになります。データマッピングの項目としては以下のような例があります。
この図では1つの発注者と1つの受注者のみが存在しますが、実際には複数の取引先が存在するのが当たり前です。共通EDIに各業者が対応することにより、取引先ごとに業務アプリケーションを用意する必要がなくなるほか、共通EDIに対応したシステムが容易に接続できるようになり「つながるEDI」を実現することができるようになります。このように受発注業務を簡単にIT化し、DXを推進できるのがEcoChangeの最大の特徴となります。
— コンテナ化をご検討された背景について教えて下さい
(グローバルワイズ廣瀬様) 昨今のEDIはかなり変化が激しい領域で、それらに迅速に追従していく必要があります。大きな変化が見込まれるものとして、近いところでは2023年10月にインボイス制度が施行され、企業間の取引のさらなるデジタル化の推進が見込まれます。さらに2024年1月にはISDN回線が廃止されることにより、従来型のEDIで使われてきた環境からインターネットを活用したEDIへの移行が予想されます。その結果としてEcoChangeの共通EDIを利用するユーザー数、トランザクション数は大幅に増加することが見込まれます。
システムに対する変更に強く、また、柔軟にスケール可能でかつ高可用性を求められるサービスを提供する基盤としてコンテナ技術に注目し、EcoChangeのコンテナ基盤上での稼働について検討をはじめました。
もうひとつIBMからコンテナ共創センターについての紹介を受けたことも大きな要因の一つです。有識者の支援を受けられる「個別技術相談会」を利用できることは、コンテナ化をすすめる上で非常に魅力的に映りました。
— こういった課題をお持ちだったので、コンテナ共創センターにご参加いただけたのですね。今回は個別技術相談会を通じてEcoChangeのコンテナ化を実施いただきましたが、その取り組みについてご説明をお願いいたします。
(グローバルワイズ坂本様) まず、弊社の開発チームメンバーからIBMの技術アドバイザーにEcoChangeについて説明しました。そこでは稼働しているシステムの構成や利用している開発言語を元に技術アドバイザーと共に、コンテナ化にかかる技術的な課題などを抽出しました。幸いEcoChangeのアーキテクチャーはアプリケーションとしてはコンテナ化を行うための障壁が少ないことがわかり、環境を構築し、コンテナ化にチャレンジすることとなりました。
弊社でのこれまでのコンテナの経験はEcoChangeとは別の製品で少し利用したことはあるだけで、販売している製品では経験がありませんでした。その際はAWSのECSを利用しました。
今回はIBM Cloud上のKubernetes Serviceを利用しましたが、KubernetesもIBM Cloudも初めての利用で、少し戸惑う部分が多かったですが、疑問点等は個別技術相談会などを通じて解決することができました。
アプリケーションのコンテナ化は当初の目論見と比べ、多少苦戦しました。アプリケーションのパッケージをコンテナイメージにすればよいと思いましたが、それだけでは不足していました。アプリケーション内で使用しているライブラリの依存関係や、外部への接続に関するセキュリティ証明書の設定など追加で対応が必要でしたが、比較的短期間でそれらの課題を克服することができ、アプリケーションのコンテナ化を達成しました。
IBM Cloudの利用についてはリソースやアクセス管理の概念を理解する部分でつまづきました。IBMから紹介されたIBM Cloud 柔らか層本を見て、その機能や特徴を理解し、徐々に必要な機能を利用できるようになりました。
個別技術相談会は定期的に数回実施しましたが、その局面ごとに新たな課題が出てくるので、それらを解決していきました。コンテナとIBM Cloudのスキルについて足りない部分をちょうど補うことができ、EcoChangeのコンテナ対応を進める上で効果的でした。
— 製品・サービス化するためにはアプリケーションのみならず周辺の領域でもコンテナ化に対応する必要があると思いますが、そのあたりはどのように取り組まれていますか?
(グローバルワイズ千葉様) まずはアプリケーションの稼働に欠かせないセキュリティとモニタリングの機能については同時にIBM Cloud上で実装することを進めています。DNSやWAFなどの一通りのセキュリティ機能を備えたCloud Internet Services、そしてアプリケーションのログを収集・管理する Log Analysis (with LogDNA)、アプリケーションのメトリクス情報を収集・管理するMonitoring (with Sysdig)は利用を開始しています。
(グローバルワイズ坂本様) コンテナ化を進める上でCI/CDをはじめ開発業務の高度化も課題ですが、当初のコンテナ化では既存のアプリケーションの開発・運用のやり方をなるべく変えずに進めています。CI/CDなどを通じて開発からリリースまでのサイクルを省力化はこれから実施していきたいですし、コンテナ実行環境の特徴を使った動的な使用リソースの最適化についても合わせて実施していきたいと考えております。
IBM Cloud上でのEco Changeの実装イメージ
(Blog本文には掲載しない注釈:Cloud DatabasesについてはDBの実装がわからないように具体的なサービス名を表示していません)
— 引き続きEcoChangeをよりよい製品・サービスとするために個別相談会等を通じて、ご支援できればと思います。最後にEcoChangeの今後の展望やご利用中のお客様に向けたコンテナ版のメリットなどを教えていただけますか?
(グローバルワイズ廣瀬様) 2021年10月には郵便法の改正があり、土曜日の配達の廃止など郵便配達に従来よりも日数がかかるようになりました。これは企業間取引の大きな業務の一つである請求業務にとっては非常に大きな変更であり、お客様の請求業務を効率化する観点でEDIをご利用いただくことにメリットがあると考えています。さらに2022年1月に施行される電子帳簿等保存制度の改正(以下、改正電帳法)により、EDIデータが会計処理の正確性を証明する証憑書類として認められることから、クラウドサービス上での電子データ保管・閲覧のニーズが高まることが予想されます。
EcoChangeはどのような業種のお客様にもご利用いただけるEDIで、今回コンテナ化により変更に強く、動的に環境を変更できる基盤面での柔軟性を備えます。お客様の業務を変更に追従し、先にも述べた新しいインボイス制度への対応など、頻繁に繰り返される環境の変化にも対応することで、企業間取引のデジタル化やイノベーションを進めていきたいと考えております。
IBM Cloud柔らか層本
IBM CloudのエンジニアがまとめたIBM Cloudにかかる技術的な解説資料。IBM Cloudを初めてご利用されるエンジニアにとってはバイブルとも言える資料で、多くのお客様、ビジネスパートナー様より好評を博しております。日々更新されておりますので、以下のURLより最新版の資料をご利用ください。
廣瀬 賢次郎
株式会社グローバルワイズ
EDMシステム本部
EcoChange部 部長
坂本 清
株式会社グローバルワイズ
EDMシステム本部
EDIシステム部 青森システム課 課長
千葉 直樹
株式会社グローバルワイズ
EDMシステム本部
EDIシステム部 青森システム課
古川 正宏
日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
ITスペシャリスト
藤井 航
日本アイ・ビー・エム株式会社
パートナー・アライアンス事業本部
事業戦略 広域パートナー営業部
セキュリティー・ロードマップ
IBM Cloud Blog
統合脅威管理、耐量子暗号化、半導体イノベーションにより、分散されているマルチクラウド環境が保護されます。 2023 安全な基盤モデルを活用した統合脅威管理により、価値の高い資産を保護 2023年には、統合された脅威管理と ...続きを読む
量子ロードマップ
IBM Cloud Blog
コンピューティングの未来はクォンタム・セントリックです。 2023 量子コンピューティングの並列化を導入 2023年は、Qiskit Runtimeに並列化を導入し、量子ワークフローの速度が向上する年になります。 お客様 ...続きを読む
ハイブリッドクラウド・ロードマップ
IBM Cloud Blog
コンポーザブルなアプリケーション、サービス、インフラストラクチャーにより、企業は複数のクラウドにまたがるダイナミックで信頼性の高い仮想コンピューティング環境の作成が可能になり、開発と運用をシンプルに行えるようになります。 ...続きを読む