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業務自動化はなぜ失敗するのか? 5つの理由と、その回避策

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イタリアの高級ファッション・ブランドMax Maraが業務自動化を取り入れ、カスタマー・サービスにおける問題解決の時間を90%短縮した方法をご紹介します。

常に進化が続くビジネス環境の中で事業を運営していく上では、多くの課題に直面します。顧客の要求が高まり続け、スキルのある労働者が不足し、デジタルによる破壊的な変革(デジタル・ディスラプション)が絶え間なく起こる中、企業は成功を収めるために自動化に着目し始めています。イタリアのファッション・ブランドであるMax Maraは、パンデミック下でデジタル部門の売上が3倍に伸びたとき、インテリジェントな自動化に目を向けました。

同社はインテリジェントな自動化の活用により、急激に増えた顧客の満足度を高めたのです。自動化は、他の多くの組織にもプラスの効果をもたらすことが分かっています。IBMの委託を受けてMorning Consult社が行った最新のグローバル調査「」では、世界のITプロフェッショナルの30%が、すでに自社の社員が新しいAIや自動化ソフトウェアを活用して時間を節約していると回答しています。

もっとも、多くの組織は積極的な取り組みの必要性を認識してはいるものの、自動化への投資から十分な成果を得るのに苦戦しているのではないでしょうか。事業を継続していくためには、サプライ・チェーン管理や受注管理(受注から入金まで)、調達管理(調達から支払いまで)など、さまざまな複雑なプロセスが必要です。これらのプロセスはしばしばボトルネックや非効率性によって妨げられ、レスポンス・タイムの低化やリスクの増大、顧客満足度の低下などを招く恐れがあります。インテリジェントな自動化は、AIやプロセス・マイニング、タスク・マイニング、Robotic Process Automation(RPA)などを用いて組織全体における意思決定を合理化および拡張し、こうした問題を解決します。

インテリジェントな自動化は、プロセスを簡素化してリソースを解放し、運用効率を高め、投資の早期回収を可能にします。その導入を検討している組織は、プロセス・マイニングから始めるのが理想的でしょう。事業の要となるERPやCRMなどのシステムから得たデータを使い、これらのプロセスを継続的に識別して最適化することができます。それにより、プロセスがどのように運用されており、どこが非効率的なのか、どの部分にインテリジェントな自動化を適用すれば最大の効果を得られるのかといったことを詳細に把握できます。プロセス・マイニングが理想的な出発点であるのは、こうした理由からです。

IBMは、長年にわたり企業のデジタル変革(DX)を支援する中で、自動化の取り組みがうまくいかないという話をよく耳にしてきました。以下に、自動化の取り組みが失敗する5つの理由と、プロセス・マイニングから始めることでそれらの落とし穴を回避する方法を紹介します。

  • やみくもな導入
    滅茶苦茶なプロセスや不出来なプロセスを自動化したために、ほとんど成果が得られないというケースは少なくありません。何を自動化し、何を自動化しないかを見定めることは、自動化の計画を成功させるための最初のステップです。プロセス・マイニングにより、プロセスがエンドツーエンドで実際にどう運用されているのかを完全に可視化できます。組織の情報システムから得たデータに基づく洞察により、業務部門とIT組織がプロセスの非効率性やボトルネック、逸脱に関する認識を共有するのです。
  • 無計画な導入
    業務自動化に投資する前に、分析と計画、優先順位付けを行うことが大切です。導入を成功させるためには、変更した業務プロセスに関する広範なテストとシミュレーションを実施し、ボトルネックが生じる可能性や変更によって生じる影響を分析することが必要です。変更計画の決定と優先順位付けは、What-ifシナリオの分析、シミュレーションから導き出された投資対効果の予測に基づいて行います
  • プロセス全体ではなく業務タスクを自動化
    一般に、RPAなどのツールを使って反復的な日常業務を自動化すると、従業員の生産性は向上します。しかし、それによって得られるメリットは、従業員や顧客のエンドツーエンドの体験を完全にモダナイズすることで得られるメリットと比べれば微々たるものであることがほとんどです。自動化の検討に際しては、個々の業務タスクに着目するのではなく、自動化によって容易に解決できる問題を特定することに努めます。それにより、プロセス・マイニングやタスク・マイニング、意思決定マイニングで得られる洞察を含むプロセスの全体像を把握することができます。
  • モニタリングの不在
    影響と結果を測定せずにプロセスの改革や自動化を行う組織は、往々にしてプロセスを継続的に最適化することができません。実施後のモニタリングにより、組織はプロセスのパフォーマンスを事前に定義した重要業績評価指標(KPI)と比較して、プロジェクトが最適なレベルで運用されていることを確認できます。IBM Process Miningの新しいInsight to Action機能により、組織はKPIを継続的にモニタリングし、事前に定義したしきい値を超えた際に正しい是正措置を開始することが可能となります。
  • 自動化を拡大展開するスキルの欠如
    今日、インテリジェントな自動化テクノロジーの導入を望むほとんどの企業にとって、人材の確保が主な採用リスク要因となりつつあります。プロセス・マイニングやRPAなどのツールを使いこなすための適切なスキルと専門知識を有する従業員が不足しているのです。自動化の推進で核となるこれらの従業員が、計画や分析といったより高い価値をもたらす仕事に集中できるようにするにはどうすればよいでしょうか。IBM Process Miningが提供する洞察を活用すれば、RPAによる自動化を迅速に行い、開発時間を短縮しながら、企業全体に自動化を拡張していくことができます。

IBMは、プロセス・マイニングから始めることの利点を、身をもって実感しています。イタリアのファッション・ブランドであるMax Maraの取り組みを見てみましょう。同社にとっての最優先事項は、顧客が満足する購買体験を提供することです。新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経て、同社のデジタル分野の売り上げは約3倍に拡大しますが、それに伴ってプロセスの潜在的な問題点やボトルネックが多数顕在化しました。Max Maraのチームは、それらのボトルネックを解消してより優れた顧客体験を提供するために、シーズン中の需要が高い時期に販売後のカスタマー・サポートへの問い合わせプロセスを最適化する方法を知りたいと考えました。そこで、IBM Process Miningを活用し、このプロセスの中でインテリジェントな自動化が効果を発揮する繰り返し部分を特定します。そして、この部分に変更を加えた影響をシミュレートして、問い合わせ内容の解決に要する時間を90%短縮し、問題解決1件あたりの平均コストを46%削減できることを実証しました。

Max Maraのケースは、組織がインテリジェントな自動化の取り組みをプロセス・マイニングから開始した場合の成功例の1つにすぎません。お客様がすぐにこの取り組みを始められるよう、IBMはプロセス・マイニング・ソフトウェアの最新版をリリースしました。新版では、是正措置の開始や自動化の作り込みがより簡単になり、調達から支払いまでのプロセスの最適化がさらに迅速化され、RPAボットの導入が容易になりました。

IBM Process Miningは、スタンドアロン製品、およびIBM Cloud Pak for Business Automationの一部として提供され、RPA、意思決定、ワークフローや他の自動化テクノロジーと統合して利用することができます。これはIBMが提供するビジネスとITのためのインテリジェントな自動化ソリューションに関するポートフォリオの1つであり、その多くをIBM Researchが開発しています。

IBM Process Miningの詳細と、同ソリューションが組織の自動化をどのように加速するのかを詳しく知りたい方は、2022年11月2日に開催されたWebセミナー(英語)をご視聴ください。


この投稿は2022年10月13日に米国IBM Newsroomに掲載された記事 (英語)  の抄訳です。

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