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EAMの力 ~Maximoで勝つ~:第4回 資産管理最新ソリューション

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ここまでできるMaximo EAM

日本アイ・ビー・エム株式会社 ソフトウェア事業 Tivoli事業部
兼 日本プラントメンテナンス協会 PE最新保全技術調査研究会 幹事  長南 剛一

はじめに

昨年後半に発生した世界的な自動車不況は日本も例外ではなく部品工場を含め自動車業界に大きな爪あとを残しました。今年の国内自動車産業を注意しな がら見ていますと国内のメーカーがこぞってEV(電気自動車:Electric Vehicle)を前面に出し、燃費向上などの技術面、税制や高速道路の課金体系の変化などの追い風もあり国内の自動車産業は復活の兆しを見せています。
日本国内でもコンプライアンスや有害物質などの企業責任に対して社会の監視の目がますます厳しくなっていますが、反面、「環境にやさしい」「安全」「安 心」などのキーワードが評価される時代になってきたようです。EAMはもともと「資産のライフサイクル全体の最適化」を実現するための仕組みですが、 HES(H;衛生、E;環境、S;安全)をはじめとする国内のキーワードに関連して最新EAMがどこまで支援できるのかを、今回は「環境」を通して紹介してまいりたいと思います。


1.EAMの目的と企業責任の関係

EAM(企業資産管理;Enterprise Asset Management )は企業資産のライフサイクル全体を通して最適化することを目的にしていますが、具体的なライフサイクルとは資産のどのフェーズを意味するのでしょうか。

具体的には、

  1. 資産・設備戦略策定
  2. 資産設備計画策定
  3. 評価と設計
  4. 建設と発注
  5. 運用(操業)
  6. 保守
  7. 改修
  8. 廃棄

となります。

EAMシステムイメージ

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【図1】では下の帯がこれらのフェーズに該当します。その中の「6:保守」フェーズをさらに細分化したものが上の「EAMシステムイメージ」になります。 すなわち、上段の業務を司るのが設備保全部門であるのに対して下段のライフサイクルにかかわる件を決済するのは1、2は「企業の経営層」、3は「経営層」 に加えて「生産管理部門」や「エンジニアリング部門」など、4は「エンジニアリング部門」「資材調達部門」、5「生産管理部門」をメインに「設備保全管理 部門」含む、6は「設備保全管理部門」をメインに「生産管理部門」「予備品在庫管理部門」や「資材調達部門」を含む、7は「エンジニアリング部門」「生産 管理部門」「設備保全管理部門」などが担当します。
しかしながら、各フェーズでは各種法令による作業管理の規制、環境対策の規制、消防法などの安全管理に関する規制があったりします。受発注にかかわる フェーズでは商取引の規制があるでしょう。これらの規制が遵守されることは経営の責任です。万が一、基準を逸脱することがあれば経営責任を問われることに なります。EAMの目的のひとつは適切な設備管理を実現するための支援ツールです。
たとえばIBM Maximoでは6の保守フェーズで作業管理がありますが、作業完了後に管理者が承認すると作業指示の案件をクローズします。クローズ後は権限あるユー ザーのみが修正できるのですが修正内容はすべてログに残ります。不正な改ざんを防止する策がシステム内部で取られているわけです。適切な設備保全管理業務 が遂行されているかどうかシステムへの適切なアクセス権限があれば、誰でも作業内容のチェックを行い、業務が正しく遂行されていることがエビデンスをもっ て確認することができるのです。
製薬業界ではGMP(Good Manufacture Practice)として日本、米国、欧州といったエリアごとに「製造管理及び品質管理の基準」を策定していますが、IBM Maximoの厳格な改ざん防止機能が評価されたためか世界トップ14社のうち13社がMaximoユーザーです。
このように適正な業務により生産活動を行うことが社会的に評価され、消費者の「安全」「安心」を保証します。適正な業務は近年「SOxやCO2の削減」、 「グリーン調達」、「環境へ負荷を与えない」などの内容が含まれるようになり、社会的な企業評価の尺度としてますます重要性が増してきています。

全体最適を実現する設備保全管理ソリューション
EAM:企業資産のライフサイクル最適化を目的とするシステム Enterprise Asset Management
CMMS:保全現場の最適化を実現するための業務支援システム Computerized Maintenance Management System

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このように企業全体で実現する資産施策であるEAMと、国内に多い現場最適化のツールであるCMMSとの相違をイメージで【図2】に示します。
それではEAMで環境を含むHESに対してどのような貢献ができるのでしょうか。その前に私たちIBMの環境への取組みをご紹介いたします。

2.環境問題に対するIBMの取り組み

実はIBMでは30年以上前に、当時の会長であったトム・ワトソンJr. が環境ポリシーを制定したことから環境への取組みを開始しています。さらに1997年にISO14001を取得しています。以下、ISO14001取得 10周年当時のプレスリリースから引用します(灰色は筆者による)。


IBMはISO 14001統合認証を取得、10周年を迎えました。
― 30年以上にわたる環境マネジメント分野でのリーダーシップ ―

2007年12月、IBMはISO 14001環境マネジメントシステム(EMS)の統合認証取得、10周年を迎えました。
ISO 14001は、1996年9月に国際標準化機構(ISO)によって発行された環境マネジメントシステムに関する規格で、組織が環境に及ぼす影響を効果的に 管理するために必要な環境マネジメントシステムの要素を体系化したものです。IBMは、ISO 14001の統合認証を世界で最初に取得した多国籍企業です。それも、わずか1年でこの統合認証取得を達成しました。統合認証の対象範囲は、世界中の IBMの製造部門、製品設計部門、開発部門、化学物質を使用する研究部門、そして日本を含めたいくつかの国の営業・サービス系事業まで及んでいます。

IBMは、1971年に環境ポリシーを制定し、その中で環境保護のリーダーシップを積極的に追及することをコミットし、グローバルな環境マネジメントシス テムを30年以上にわたり維持してきました。IBMは、事業活動を行う場所は世界中どこでも同一の環境基準により運営することをコミットメントとして、先 進的な環境リーダーシップを発揮してきました。このため、ISO 14001のために新たな環境マネジメントシステムを構築する必要はなく、自社の環境マネジメントシステムをISO 14001の規格と調整し、対象となる事業所や部門が認証監査を受けるだけで、統合認証を取得することができました。

現在でもISO 14001の統合認証を取得しているのはまだ数社のみであり、大半の企業が事業所毎の認証にとどまっています。このことからも、この環境マネジメント分野におけるIBMのリーダーシップがうかがえます。

(中略)
IBMのISO 14001の統合認証は継続的に拡大しています。これまで統合認証を受けていなかった各国の営業・サービス系事業も新たに認証審査を受ける予定となっています。

IBMは30年以上にわたり環境保護へのリーダーシップをコミットしています。今から38年前の1971年、当時の会長であったトム・ワトソンJr.が、環境ポリシーを制定しました。

 

環境へのリーダーシップ
日本IBMのCO2排出量と原単位(INDEX)1990−2007

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IBMでは環境に対する施策を長年にわたり正面から取り組んできていることから、経験【図3参照】を持ってお客様へご提案させていただいております。
環境対策のお客様へのご支援メニュー(※)は【表4】にある通り多岐に渡りますが、これ以外の内容に関しましてもご相談をお受けしておりますのでお気軽にご連絡ください。

 

表4:日本IBMによる環境問題に関するご支援メニュー

1 環境配慮製品提供仕組みM
構築支援(基準作成)
環境配慮製品提供プロセスの構築、業務運用に向けて、グローバルの視点に立って、且つ全社統一的に環境規制、温暖化の規制に準拠した業務プロセス基準の作成、見直し、改善を行う支援をご提供致します。
2 環境配慮製品提供仕組み
構築支援(設計)
グローバル視点での環境配慮製品提供基準に従って製品を設計し検証するプロセスを全社統一で構築すると同時に、法令、規制の変更対応も考慮した業務プロセスを構築するご支援を提供致します。
3 環境配慮製品提供仕組み
構築支援(グリーン調達)
環境配慮製品提供プロセスの構築、調達においてグローバル法令・規制を遵守しつつ、低炭素化の環境基準を反映したグリーン調達プロセス構築のご支援を提供致します。
4 環境配慮製品提供仕組み
構築支援(情報管理)
環境配慮製品提供プロセスの構築、業務運用に向けて、設計~調達~製造の一連の業務プロセスにおけるITシステムの構築のご支援を提供致します。
5 CO2見える化ソリューション(製造) 工場の生産ラインにおけるCO2排出量を一定の小範囲に区切り見える化すると同時に、その範囲でのCO2排出量見える化と削減のための制御方法を提供するご支援を行います。
6 CSR/環境戦略策定支援 全社での環境への取組みが必須となってきており、重要性の高まっているCSR/環境戦略の策定を支援すると共に、全社展開を支援します。
7 カーボンマネジメント診断 自社の企業活動におけるCO2に関する優先順位を踏まえ、CO2管理の観点で対応すべき業務領域を明確にし、今後の対応施策の検討を進めます。
8 カーボンマネジメント(Green Sigma) CO2排出量の可視化と、CO2排出量を管理・削減するマネジメント手法のコンサルティング。
9 製品別CO2排出量算出の仕組み構築 製品提供における自社内外での企業活動におけるCO2排出量をベースに、原価計算の仕組みを用いてカーボンフットプリントを算出する仕組みを構築します。
10 CO2排出量リスク管理の仕組み CO2排出量の管理指標に対応して収集されたデータや経理データを基に、カーボンリスク等の環境関連リスク予測を実現するシステムを構築し、CO2排出量のリスク管理の仕組みを作ります。

3. HESへのIBM Maximoによる対応

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IBM Maximoでは資産のライフサイクル最適化をご支援することは冒頭述べたとおりです。衛生・環境・安全に資する設備保全管理業務を考えたとき、企業価値 向上要因として大変重要な位置を占めることがご理解いただけたでしょうか。【図5】は主に生産と保全の業務を視点とした企業価値向上の影響要因を表してお り【図6】は生産と保全以外に焦点を当てた企業価値向上要因になります。【図5】【図6】ともに2007年の資料を元にしていますが、図5では「省エネル ギー」、図6では「廃棄物対策」「公害・周辺対策」「地球環境対策」などの環境関連の企業価値要因として指摘されています。

 

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省エネルギー
工場やデータセンターでの電力消費量を監視・管理するためのIBM Maximoを活用した仕組みはMaximoのビジネスパートナー様にて「Green対応総合施設管理システム」として既にソリューションを実現しています。
内容は大きく5つに別れ

  1. 環境エネルギー管理
  2. <建屋内>空調、照明制御管理
  3. <建屋外>雨水利用制御管理、太陽光発電管理
  4. セキュリティ管理
  5. 資産管理

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以上のような構成ですが、いずれも中央からの遠隔監視やモニタリング、閾値を超えたときのリマインドメールを駆使したリモートメンテナンス技術、などを中 心に履歴を収集してレポーティングまで自動化されているシステムで、電力以外のユーティリティ全般を可視化・管理・自動化を実現するシステムです。

MaximoシリーズではMAMEO:Maximo Asset Management for Energy Optimizationを紹介いたします(図7参照)。エネルギー最適化を目的としたMaximo資産管理ソリューションです。
上下2つの図がありますが、上の図が工場やデータセンターなどのフロア平面図の温度分布図です。縦横のラインがありますが、下の図ではそのラインの交差ポ イントの上下の温度を表示しています。暖かい空気は上昇するため、天井の高い工場やデータセンターでは上と下の温度が大きく異なることがよくあります。そ のため高さの温度管理を実現しています。

このソリューションにより、「空調設備を最適な位置に取付け」、「極端に温度の高い箇所の発熱減である設備を省電力設備にリプレースする」、などの 作業支援を行うことができます。また突発保全の原因である急激な温度上昇が確認された場合はMaximoの標準機能である作業要求機能から保全部門へ作業 依頼を発行することができます。
複数プラントや複数フロアの温度情報を収集することで、最も必要な箇所に対して戦略的な費用投下で省電力、すなわちCO2削減に寄与できるソリューションです。

4. 現在の国内で行われている仕組み

今年に入り、環境問題を伴った案件が増加しています。PPMS:プロパティ・パフォーマンス管理をはじめとする案件や、サードパーティメンテナンス 入札案件に「環境」に関してISO14001取得の条件が付与されていたり、必ずしも設備保全や資産管理案件ばかりではないのですが、遊休品管理を目的と した資産設備の有効活用を支援するシステムが求められたりしています。

国内での設備保全管理案件の中の「環境」関連案件はまだまだこれからですが、税制的な措置や補助や助成金の制度の拡充、社会的な監視などの要因によって環境案件は確実に増えてゆくことと個人的にも予測しております。
企業の環境に対する問題は保全部門だけで解決できる問題ではありません。J-SOXのような経営参加型の全社で取り組むべき企業課題です。EAMの対象と する設備資産の多くのフェーズでは保全部門だけではなく「経営層」をはじめとする多くのステークホルダー部門の参加が不可欠です。資産の新規導入時に「資 産戦略」から入るように環境でも企業の責務を負う経営層が参加した「環境戦略」が必要になります。

IBMでは環境に対して深い知見、長い経験、優れたソリューションがあります。お気軽にお声をかけていただけましたら幸いでございます。

一口メモ 「やはりEAM」

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保全部門と生産部門の協業は古くて新しい問題で、さらにその住み分けは各企業や工場ごとに異なるという厄介な組織構造になっていることが多いのです。そこで生産管理と保全管理の協業の話を少しだけ。
図8はちょこ停が発生したときに生産部門が修理しただけの左の図と、ちょこ停に対して生産部門と保全部門が情報共有した右の図になります。左は表面的な修 理で恒久課題が解決していないため同じ現象(トラブル)が繰り返し発生します。都度直すのですが、累積した費用は高くなりばかりで、設備リスクも高まります。右は生産と保全で情報共有した結果、恒久対策が発見され正しい維持管理活動によってリスクが減少するサンプルです。恒久対策のために上等な素材の予備 品に変えるかもしれません。一時的な費用は増加する可能性がありますが、設備資産リスクは確実に減少します。資産設備のライフサイクル視点で考えれば、左 側よりずっと廉価で安全性や信頼性の観点からも優れた対処を行っています。
保全業務は他業務とのリレーションシップが大変多い業務です。そのリレーションをさらに増加(情報共有)させたら、さらに可視化を推進することで適格な管理を推進できます。
CMMS的な活用も十分可能であるMaximoですが、全社的なEAM的な活用によりさらに大きなビジネスバリューを創造することができます。それが私たちの願いでもあります。

 

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