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Db2 開発総責任者が伝える IBM Db2 が愛される理由

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今年、IBM MQとDb2は30周年。WASは25周年を迎えます。3製品のアニバーサリーを記念して、弊社では3製品にまつわる方々へのインタビューを実施しています。第4回目第3弾となるインタビューでは、IBMのDb2の開発総責任者である、マイケル・クウォック 氏 にインタビューを行いました。


Michael Kwok
(マイケル・クウォック)

世界トップクラスのプロフェッショナルチームを牽引。数百人のグローバル開発チームを率い、世界トップクラスのデータベース製品&サービスを提供している。また、エンタープライズデータベース技術において15年以上の経験を持ち、分散システムのスケーラビリティとパフォーマンスに関する博士号を取得。Db2、Big SQL、Data Virtualization、Db2 on Cloud、Db2 Warehouse on Cloud、Watson Queryなどの製品群を担当製品とし、Db2の領域におけるトップクラスの専門知識を持っており、現在はレイクハウスアーキテクチャを実現するwatsonx.dataの開発責任者も務めている。製品開発の他、クラウド上でのデータベースサービス提供、カスタマーサポートを担当し、開発以外でも幅広く活躍。

 

インタビュアー
IBM Data, AI and Automation
営業 早野真央
IBM Data, AI and Automation
製品統括  四元菜つ

 

 

1.現在の立場と製品との関わりについて教えてください。

-(クウォック 氏)こんにちは、博士号を取得した後、約17年前にDb2パフォーマンス・エンジニアとしてキャリアを始めました。その後、カラムエンジンの開発やDb2製品サポート、Db2クラウドサービスといった様々な分野で働いてきました。現在は、オンプレミスやCloud Pak for Data上、クラウド上でDb2、Big SQL、データ仮想化、Q-Replicationなど、 IBMトロント研究所でDb2ポートフォリオ全体の開発責任者です。

 

2.お客様のリアルな問題を解決する製品を開し提供することを重要視していますが、IBM の強みは何でしょうか?

クウォック氏)製品開発と研究が手を組んで、お客様のために最先端のイノベーションを継続的に生み出していることです。IBMは世界中に製品開発のチームを持っています。また包括的かつ豊富な専門知識とグローバルに展開していることで、世界的に見ても他に類を見ない存在です。これは一夜にして築いてきたものではなく、112年以上の歴史の中でお客様やパートナーとのコラボレーションによって構築してきました。IBMほどお客様のニーズを理解している企業は他になく、幅広いポートフォリオを持つ企業もありません。私たちグローバルの開発チームは、「企業にいるお客様のリアルな問題を解決する製品を開発する」といった強みを活かす力を持っています。

IBMならではの価値の1つであるIBM基礎研究所についてもご紹介させてください。Db2の始まりは1990年代に私たちのトロント研究所とIBM アルマデン研究所(シリコンバレー)が共同で行ったプロジェクトです。現在のDb2には、いくつかの研究プロジェクトから派生した多くの機能があります。私自身もIBM基礎研究所のチームと共にカラム技術に関する最初の12人の開発者の1人でした。このように製品開発と研究が常に寄り添い、弛みなく製品を進化し続けています。

(四元)お客様から製品の改善のためのリクエストをいただく中で、具体的にお客様とコラボレーションしたエピソードはありますか?

(クウォック氏)私たちは International DB User Group (※ 以下IDUG)という非常に大きなユーザーグループに所属しています。IDUGは35年、DB2は30年、この長い期間の中で私たちはお客様と協力してきました。毎年開催されるイベントの中で、IBM Consultingや経験豊富なテクニカルアドバイザリーボードからフィードバックをもらったり、お客様からどのような機能が必要かヒアリングを行っています。

「この新しい機能を作るときは、こうすべき」といった具体的なフィードバックをいただき、お客様と協力しながら一緒に機能を考えていくこともあります。お客様から「そのような使い方をすることはない」というフィードバックを受けたり、非常に技術レベルに長けているお客様からは、「そこに多くのログを置くべきだ」とか「そのログを移動することでパフォーマンスが改善されるはずだ」と提案いただいた内容を開発に反映しました。IBMにとって、お客様との継続的な対話が非常に重要であり、どこに向かうべきかを決断することができます。

 

(インタビュー中のクウォック氏)

 

3. お客様のニーズ、使いやすさ、品質にこだわる「Db2」の開発方針にはどのようなものがありますか?

クウォック氏)1番重要なことは、私たちのお客様に喜んでもらうことです。Db2のような製品を開発する際には、お客様が製品のことを大好きになってくれることを望んでいますし、それがいくつかの問いの中で開発の方向づけを行なってくれます。


①「開発する特長や機能はお客様のニーズにあっているのか。」
お客様の意見を聞くことはとても大切です。これは私が現在東京にいる理由でもあります。お客様からのフィードバックは私たちのロードマップを定義し、改善の機会を提供してくれます。場合によっては、私たちはお客様と一緒にビジネスニーズやユースケースに対応するためのソリューションを作ることもあります。

②「製品(Db2)は使いやすいか。」
私たちは優れたユーザーエクスペリエンスに重点を置く開発チームと密に連携するデザインチームを編成しており、製品の使いやすさにこだわっています。


③「品質、品質、そして品質。」
私たちは品質保証(QA)に大きな投資をしています。例えば、アーキテクチャーのレビュー、コードのレビュー、品質の承認を行ったり、QAパイプラインを週7日、24時間稼働させたりしています。具体的には、リリースごとに100,000時間以上のストレステストを実施しています。他にも、リグレッションテストに向けて適切な開発者に割り当て、問題を解決するための自動化ツールを使用したり、50,000回以上の異常終了やリカバリー実行を実施したり、製品が障害などの予期しないシナリオで正常に動作することを確認したりしています。品質に重点を置くことはとても大切です。なぜなら、多くのお客様がDb2上で大規模な本番環境を運用しているからです。

4. 日本と海外の Db2 への考え方や立ち位置、活用事例の違いについて教えてください。
(クウォック氏)世界的にみて、世界の市場と日本の市場は似通っています。
例えば、一般的にお客様は、トランザクションワークロード、分析ワークロード、またそれらを組み合わせて実行するために、Db2の技術を利用しています。日本を含むその他の北米やヨーロッパの国々でも多くの大手銀行様が、1日に数兆件の金融取引をサポートするために、ミッションクリティカルな銀行システムでDb2を運用しています。また小売業界でも、市場の洞察を得る数万の店舗全体の在庫やペタバイトのデータの分析を通じて、サプライチェーン管理を強化するため、多くの国々でDb2を使用しています。
一部のお客様は、Db2のコンテナ化技術やフルマネージドサービスを活用してクラウドへ移行しています。とは言え、私は最新のDb2リリースや最新の機能やイノベーションを、日本のお客様にもますます活用していただきたいと思っています。

 

 

5. watsonx.dataを含めた製品の今後のプランについてお聞きしたいです。

(クウォック氏)多くのアナリストが予測しているようにデータベース・マネジメント市場は、データ量の急激な増加やビジネス洞察の需要の増加などにより、次の5年間で二桁の成長が続くと予測しています。そこにはAIの人気も影響しています。AIはアルゴリズムとデータに依存しています。つまり、データこそがAIの燃料で、それがデータベース市場が2桁で成長し続ける理由です。

Db2はIBMの代表的なデータベースなので、私たちは引き続きDb2の技術に大きな投資を行っていく必要があります。投資先としては、まず初めに「Db2 OLTP、Warehouse、pureScaleを含む既存技術の強化とモダナイズ化」があります。日本では、Db2 pureScaleのようなDb2上でOLTPワークロードを実行するお客様が数多くいらっしゃいますが、Db2 Warehouseのような機能豊富なデータウェアハウスやパフォーマンス最適化されたエンジンをご利用いただく機会がもっと増えたらと思います。

この5月に、watsonx.dataというデータに関する大規模な新しい発表がありました。これには、オープンデータやオープンテーブルのサポート、オープンソースエンジンが含まれています。Db2 Warehouseは、watsonx.dataと連携が可能となる予定です。日本のお客様にとって、リレーショナルデータウェアハウスをさらに探求する機会が非常に多くあります。データレイクを持っている場合でも、watsonx.dataを使用することができます。両者は共存することができるため、私たちは日本のお客様に当社のウェアハウスの機能をますます活用いただけることを期待しています。また、7月には、Db2 Warehouse on CloudがクラウドのObject Storeをサポートしました。これは、ストレージコストと総所有コストを削減するためのさらなるオプションとなります。

また、「パブリッククラウド、セルフマネージド型、もしくはSaaSに移行を考えるお客様にとって、Db2がデフォルトになりたい」とも考えています。しかし、オンプレミスをご利用のお客様も私たちにとっては非常に大切です。お客様の中には企業内の規制によってオンプレミスをご利用されているお客様もいらっしゃるので、どのようなお客様に対してもサポートを行い、IBMとして、ハイブリッドクラウドデータエコシステムを提供いたします。

最後に「新規お客様の獲得とパートナーエコシステムの拡大を行いたい」と考えています。Db2は30年にわたるイノベーションの実績があります。イノベーションは私たちのDNAに組み込まれていて、今後も私たちは新機能の提供、製品の品質向上、そして何よりもお客様のニーズに応え、多くのお客様に喜ばれる製品を提案し続けます。Db2こそが次世代のミッションクリティカルなワークロードと分析ワークロードに対応した唯一のデータベースだと信じています。

(インタビュー中の早野)

 

6.IBM Power サーバー が2040年までソリューション提供することが決まっていますが、Db2も同様にお客様の基幹システムを支える重要なソリューションですが、Db2やpureScaleなどの長期的な視点で見たときのサポートに関し、今後どのようにお考えですか。

-(クウォック氏)pureScaleは連続稼働性、自動復旧、オンライン保守、および伸縮性(スケールアップまたはスケールアウト)といったDb2の特長を提供しています。日本のお客様からも、他のアジア圏のお客様からも高く評価されており、北米と比べても展開率は非常に高いです。

pureScaleのビジョンは、「ハイブリッドクラウド環境で99.999%の可用性と高性能なOLTPデータベースを実現すること」です。このビジョンを実現するためにKubernetesのマイクロサービスアーキテクチャとコンピューティング、そしてストレージの分離を行えるようpureScaleを再設計する予定です。また、Pacemakerなどの最新のオープンソースコンポーネントでpureScaleをアップデートしていきます。さらには、pureScaleをクラウドに導入(まずはPaaSとして、その後はSaaSとして提供)することを考えています。

現在、私たちはPaaSとしてAWS上にpureScaleをデプロイすることに成功しています。これからは、例えばAWS上でEFA(Elastic Fabric Adapter)を取り入れることで、耐障害性とパフォーマンスの更なる改善を行うことも視野に入れています。AWSに加えて、他のハイパースケーラーもサポート予定です。オンプレミスやクラウド上でミッションクリティカルなワークロードをスケーリングして実行し、ROIを最大化するためにお客様がpureScaleを信頼して利用することができるようにします。私たちは今後も長年にわたりpureScaleへの投資を行います。

 

7. WAS/Db2/MQをご利用中のお客様やパートナー様、また今後ご利用いただくお客様にむけて、今後の製品に対する期待とメッセージをいただきたいです。

-(クウォック氏)私は以前、日本のお客様がDb2はレガシーのデータベースだと言っていたと聞いたことがあります。”レガシー”データベースという言葉は、時に否定的な意味合いを持っています。

Db2を一旦脇に置いて考えてみてください。「データベースを利用して何がしたいですか?」「どのような要件を求めますか?」この質問に答える瞬間は、Db2のことは考えないで、「データベース」に焦点を当ててみてください。全員ではないにしても、ほとんどの人が「信頼性」「高可用性」「セキュリティ」「パフォーマンス」と答えると思います。また、銀行、保険会社、小売業、メディア・通信業などの企業に利用されるような大規模な顧客基盤を持つデータベースの技術であれば十分です。もしそうであるなら、「現在のどのデータベースがあなたの要件とサービスレベルを満たしますか?」実際、そのようなデータベースはほんの少しです。しかしDb2がその1つであることは確かです。ですのでDb2をよりよく表現すると、「発達した、信頼性のある、セキュアで高性能なデータベース」になります。そしてそれがお客様のニーズでもあります。

私たちは常に新機能を追加し続けており、決して古いものではありません。Db2は、大量のデータを効率的に処理するための基準を設定することで業界にイノベーションをもたらしました。最新の11.5のリリースでは、お客様がDb2上で簡単にAIモデルを構築できるツールや組み込み関数を提供しています。また、更なる効率化の向上のためにコアエンジンにAIと機械学習を取り込みました。数か月後、Iceberg、Parquet、Orcなどのオープンなテーブル/データ形式とクラウドのオブジェクトストレージをサポートするDb2 Warehouse on Cloud の第3世代をリリース予定です。これにより、既存のデータレイクに接続したり、もしくはレイクハウスやより具体的に新たなデータストアであるwatsonx.dataに展開してすることが可能になります。

要約すると、Db2は非常に優れたパフォーマンス、信頼性、セキュリティ、イノベーションを持つミッションクリティカルなワークロードを実行するために構築された唯一のデータベースです。だからこそ、多くのFortune100のお客様、日本のお客様にDb2は採用いただいています。Db2は過去30年にわたり画期的な特長と機能を提供してきましたが、お客様、パートナー様のお声を取り入れながら、常にイノベーションの最前線にあり続けるよう開発を継続していきますので是非ご期待ください。

 

(記念写真:左から四元、クウォック氏、早野 

記事執筆:アニバーサリー広報チーム(Data, AI and Automation 事業部) 

撮影者:鈴木智也 

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