IBM Consulting
データの可視化により拓く風力発電の新たな可能性
2021年07月07日
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写真はすべてJames Fisher and Sons社提供。
土から芽を出す植物のように、かつてないほどの数の洋上風力発電機が海から立ち上がる光景が広がっています。その海面下では重要なケーブル網が根を張るように伸びており、年々多くの消費者に再生可能エネルギーを届けています。
持続可能な未来のため風力発電所の取り組みは年々増加をしています。WindEurope社によると、2018年にはEUのエネルギー需要の14%が風力発電で賄われました。このように革新的な効果を発揮する風力発電機を、継続的に生産・維持していくことは、これからの社会のためにも非常に重要な課題です。
沖合で、80メートルもの高さに達する、風にさらされた巨大な発電機を間近に見ることは、James Fisher and Sons社にとっては日常的な光景です。英国に本拠地を置く同社は、世界をリードする海洋ソリューション企業です。James Fisher社は、海難救助や、船から船への移送を支援する等、統合的なエンジニアリング・ソリューションの専門家チームを擁しています。更には、沖合の風力発電所から陸地の消費者に電力を送る海底ケーブルを保守するためのソリューションとサービスを提供しています。
James Fisher社の業務は、すべて美しい海が背景になっていることは間違いありません。 しかし、170年の歴史を持つこの海洋エンジニアリング企業にはもう一つの宝がありました。James Fisher社には、美しいデータを持ち合わせていました。
データサイエンスの極意
2019年、James Fisher社のデータサイエンティスト達は、無数のソースからサイロ化されたデータを掘り起こすことの利点について仮説を立てました。同社はIBM Data Science and AI Eliteチームの協力を得て、モデルデータのPoC検証を行いました。 これらのデータの可視化はIBM Watson Studio上で構築され、IBM Garage の方法で開発されました。
James Fisher社のチーフ・デジタル・オフィサーであるSean Huff氏は、IBMとのパートナーシップの目的は「データからその意味を生み出す」ことだったと言います。 James Fisher社にとって、様々な業界に蓄積されたデータを集約することが課題だったからです。
AIはあなたの隠れたビジネス課題を明らかにできるか?
ビジュアル化されたデータは、使いやすいダッシュボードからアクセスできました。個々の海底ケーブルのリスク評価のシミレーション結果は、ほぼリアルタイムで可視化され、 洋上風力発電所と本土を結ぶ海底ケーブルのメンテナンスのスケジュールはデータに基づいて最適化されました。
予知保全では、データの可視化により、見えないものを見ることができます。 海底ケーブルは海底に横たわっているため、目視は非常に困難です。ユーザーはダッシュボードを使用してデータをより詳細に確認し、ケーブルの健全性のリアルタイムに把握したり、異常を検知したり、潜在的なリスクの予測を表示したりすることで、ケーブルのメンテナンスや継続性についてより良い計画を立てることができます。
データの分析により海底にある見えない世界が明らかになり、人間の努力だけでは得ることができない洞察を得ることができるのです。
海中の予知保全
データ可視化のエキサイティングな側面は、これらの技術が主要なビジネス課題の解決にも貢献できることです。
例えば、James Fisher社は、高度なスキルを持った専門家やエキスパートを多数雇用しています。社員の退職により知識や経験が失われていくことは、同社の大きな損失です。データ可視化技術は、要求される知識を平準化し、エキスパートに自信を持たせたり、新規雇用者の育成を強化するのに役立ちます。
最も重要なことは、データの可視化によって、比類ない洞察力が得られることです。 EDS HV Group(James Fisher子会社)のエグゼクティブ・ディレクターであるRyan Henderson氏は、海底ケーブルは、洋上風力発電と消費者をつなぐへその緒だと描写します。 深さ数百メートルという制約のある場所にありながらも、遠隔でこれらのケーブルに関する予知保全できる能力は、非常に貴重な資産です。 予知保全は、明かりを灯し続けるために必要不可欠なチャネルを通じて、再生可能エネルギーで発電された電力が岸に届くよう継続的に支援します。
James Fisher社は、データの可視化と予知保全によって得られる有利な立場により、エネルギー・サービスの中断を最小限に抑えることができます。 サービスの信頼性は、風力発電自体への信頼性を損ねるか、もしくは、再生可能エネルギーへの取り組みに風穴をあけるかの分かれ目となるのですから、大変重要なことです。
再生可能な未来を可視化する
James Fisher社とIBMは、データ可視化の強力な力で、再生可能な明日に向かって邁進しています。 James Fisher社はこの成功をもとに、IBM Watson Studioの規模を拡大し、データ可視化をビジネスの他の領域に適用しようとしています。
データの可視化はビジネスの最適化を超えた可能性を秘めているため、James Fisher社にとって、将来は非常にエキサイティングなものです。 データの可視化はビジネス上の問題を理解するために新たな光を注ぎ、将来の可能性に注視することができるようになります。
どのような予測も確実ではありませんが、これだけははっきりしています。イースト・アングリアの沖合、そして世界全体で変化の風が吹いているのです。
この投稿は、2020/8/3に発行された” Data visualization uncovers new dimensions in wind power”の抄訳です。
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