IBM Consulting
コンタクトレス・トラベルの到来
2021年07月08日
カテゴリー IBM Consulting
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〜コロナを足掛かりに顧客体験の飛躍的イノベーションへ〜
パンデミックが落ち着き、旅行需要が回復した後の旅行体験はこれまでと様変わりすると考えられています。マスクの着用やソーシャル・ディスタンスは勿論ですが、旅客に安心・安全な旅を提供するためには、これまで以上にシームレスな旅客体験が求められるようになり、航空会社や空港各社はタッチレス技術の導入を加速させています。
コロナ禍で認識されるデジタル化の重要性
今回コロナを経験した事で、本来であれば数年かけて実現されるようなイノベーションを数ヶ月で実現する事が求められています。
バンクーバー空港のVP Innovation & CIOを務めるLynette DuJohn氏は、World Aviation Festival 2021の中で、テクノロジー投資の重要性と、デジタルを活用したシームレスな旅客体験を進めていく必要性を語っています。
“過去5年間、空港建設への投資を重点的に行ってきたが、その内の5%でもこれまでIT投資に充てていたら、今より遥か先を進んだサービスが提供できていただろう。今後は、よりテクノロジーへ投資を行い、実体験とデジタルを融合したシームレスな旅客体験の提供を進めて行かなくてはならない。”
Lynette DuJohn /VP innovation and CIO of Vancouver Airport
デジタルの重要性は旅客に対してだけではありません。多くの航空会社や空港会社においては、過去の煩雑なオペレーションに引き戻されず、より効率的でデジタル技術を活用したスムーズなオペレーションをどのように実現させるか論点になっています。
IBMで運輸・旅行業界の常務取締役を務めるDee Waddell氏によると、「これまでお話しした全てのCEOがデジタル戦略の重要性を語っており、デジタルはコロナ禍におけるGame Changerとなり得るだけでなく、アフター・コロナにおいても、各社の差別化要素となり優位性に繋がる」と話しています。
United AirlinesのCEO であるScott Kirby氏は、IBM Think 2021の対談の中で、United Airlinesがデジタルをどれだけ重視しているか語ってくれました。
“収益が99%減ってしまい、私達は生き残る事が出来るのかさえ心配され、基本的には全ての投資を止めましたが、テクノロジーへの投資だけは例外です。コロナはこれまでのどんな事象よりも長期的に深刻な影響を及ぼすと考えていますが、一方で私達は最高の回復を実現できる事に自信を持っています。
テクノロジーがエアラインの再編やより良い顧客体験の醸成の鍵になると考えているからです”
Scott Kirby/ CEO of United Airlines
挑戦の年からの気づき
デジタル変革は業界全体に渡って進められていますが、特に手作業で行っていたプロセスがデジタルを活用したスマートなプロセスに置き換わりつつあり、QRコードや5G、RFIDといった近距離無線通信、IoT、生体認証、発熱者スキャニング技術等が採用されつつあります。
生体認証が進むにつれ、空港、航空会社、国といったステークホルダー間でのID情報の共有、整合性の担保が問われるようになり、グローバル全体でIDの信頼性を担保する仕組みが求められるようになってきました。
IT企業の一つであるSITAの調査(Air Transport IT Insights)によると、空港は生体認証技術に対して重点投資をしており、64%の空港が2023年までに生体認証を活用したセルフ搭乗ゲートとパスポート搭乗の両方を可能とすべく進めており、この数値は2020年と比較すると3倍にも及びます。
航空会社の生体認証の採用は更に進んでおり、導入数、投資額共に2020年から2023年までに倍になり82%が導入予定と言われています。
このような自動化や生体認証を活用した旅客体験を推進する上では、複数のデータ所有者との調整や各国/各管轄を意識したコンプライアンスへの考慮が必要となり、各ステークホルダーが調和し、全てを確実に実行できるかが主要課題となります。
例えば、国境を越えて何かしらの物理機器を持ち込む際には、タイムリーにID管理システムに同期される事が求められ、遅延やセキュリティ違反の発生などの事態は避けなくてはなりません。
これらの実現に向けては、モバイルとインターネット接続で何処からでもアクセス出来る、統合的なシステムが必要不可欠となり、横断的でシームレスな機能提供が行える環境を整える事が、様々なシーンにおいて、旅客/社員への柔軟なサービス提供に繋がります。
クラウド推進による旅行業界の革新
航空会社や空港会社はクラウド・シフトを進めており、特にハイブリッド・クラウドが注目されています。
ハイブリッド・クラウドを採用する事で、プライベート・クラウド、パブリック・クラウドの制約から解放され、より多くのサービスやツールが選択出来るようになり、ステークホルダー間のコミュニケーションやオペレーションを促進します。
また、ハイブリッド・クラウドは多くの航空会社が積極的に取り組んでいる二酸化炭素排出量の削減にも繋がると言われており、IDCの予測によると、ハイブリッド・クラウドを推進することで、コンピューターリソースの集約による効率性・性能の大幅な向上が見込まれ、今後4年間で10億メトリックトンのCO2削減に貢献すると言われています。
世界有数の巨大空港の一つと言われているイスタンブール空港はIBMと共にハイブリッド・クラウドの導入を進め、新たなオペレーション、新たな旅客サービス提供に向けて、多くのアプリケーションベースのソリューションの利用を可能にしています。
ハイブリッドクラウドのアプローチは、継続的なオペレーションの実現、システムのモダナイゼーションにも貢献しています。
コンタクトレス・トラベルでよりスムーズな旅客体験に
空港におけるコンタクトレス体験の取り組みは、空港によって様々ですが、チェックインや手荷物預け時の顔認証から着手している空港が一般的です。
イスタンブール空港では、チェックインの際にスマート・カメラが旅客の生体情報を捉え、その情報がセキュリティゲートや出入国管理、ラウンジ、小売店、搭乗ゲートに共有される事で、接触なく顔認証だけのタッチレスな旅客体験の提供を試みています。
タッチレスな体験はセキュリティゲートを越えても提供され、手荷物運賃やその他料金の支払いに関しても、お財布アプリをスキャンするだけで支払う事ができ、搭乗ゲート到着後も、長い列で待たされる事はなく、個別に搭乗に呼ばれることでソーシャル・ディスタンスが確保され安全が守られます。
イスタンブール空港のCEOであるKadri Samsunlu氏は、「これまでと異なる技術領域へ挑戦しアドバンテージを得たことで、イスタンブール空港はユニークでデジタルな旅客体験を提供する事ができ、運用能力の向上、空港コストの削減にも繋がっている」と話しています。
エアライン業界は$370 billionの巨額の損失に直面していますが、航空・空港会社は、旅行業界の躍進に向けた姿勢を継続しています。アメリカの空港における5月の旅客数は前年比750%向上していますが、これまでの投資が旅客に安全と信頼を与えているからだと考えられています。
シームレスな体験は、旅客に安心感・信頼感を与え、航空旅行の回復を促すと共に、中長期的な効率性や利益の向上をもたらします。
本ブログの日本語翻訳者:
市 史子
ソリューション・セールス
製造・流通事業部
グローバル・ビジネス・サービス
E35398@jp.ibm.com
linkedin.com/in/fumiko-ichi-405135166
金融業界や航空業界という社会のインフラとなる産業における幅広い知見があり、航空業界においては営業として5年以上の経験を有する。
構想策定など上流および先進的な領域を得意としており、営業活動のみならずGarageやDXの立ち上げなどの実践も経験し、お客様評価において高いスコアを継続的にマークするなど、高い評価を得ている。
この投稿は、2021/3/18に発行された “Contactless travel has arrived: from pandemic experimentation to long-term innovation(英語)” の抄訳です。
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