CIO|CTO向け

先進クラウド技術を活用した既存IT資産の変革、新たなシステム構築により、変化を勝ち抜いてビジネスの成長を加速する

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これまでビジネスを支えてきたアプリケーションを移行するとき、企業のクラウド活用はいよいよ本格期を迎えます。クラウドの最新技術で既存システムを再構築(モダナイゼーション)することによってビジネスをアップデートし、顧客ニーズに迅速に応えるクラウドネイティブ開発でビジネスのスピードをさらに加速する──実際にさまざまな業界のお客様が、モダナイゼーションとクラウドネイティブ開発でビジネス変革に挑まれています。

渡海 浩一

渡海 浩一
日本アイ・ビー・エム
マイグレーション/モダナイゼーション戦略・サービス
アソシエイト・パートナー
マイグレーション/モダナイゼーションの戦略/計画立案とデリバリーサービスを提供する組織を担当。業界/業種を問わず、数多くのお客様へクラウドを活用したITコンサルティング支援、モダナイゼーションの実行プロジェクトを実施してきた。デジタル変革実現のためのモダナイゼーションをテーマにしてセミナーでの講演多数。

 

前田 幸一郎

前田 幸一郎
日本アイ・ビー・エム
クラウドアプリケーション開発
アソシエイト・パートナー
クラウド・アプリケーション開発にかかわるコンサルティングやデリバリーを行う組織を担当。流通/製造業を中心に、大規模なクラウド・ソリューションのアーキテクチャー策定とデリバリーの実施、クラウドネイティブ開発におけるコンサルティングなどを手掛ける。年間50件以上のクラウド案件の提案活動に携わり、成功に導いてきた経験と実績を持つ。

 

既存システムのモダナイゼーションは喫緊の課題

「クラウド上でアプリケーションを運用することに、どんなメリットがあるのか?」──CIOの皆様は、経営者や事業部門から、こんな質問を受けることがあるかもしれません。

今日、あらゆる業界が新型コロナウイルスへの対応に追われている中、改めて企業に求められているのは「社会や市場の変化、そして顧客の要望などのビジネス・ニーズに迅速に対応していくこと」であり、ITシステムにはそれを下支えすることが求められています。クラウドは、まさにその要求に応えるプラットフォームの1つだと言えます。

また、経済産業省が2018年に公開した『DXレポート』でも指摘されているように、企業の既存システムが抱える次のような課題がデジタル変革(DX)の推進にとって大きな足かせとなっています。

  • 迅速性や柔軟性の低下による新業務/新商品の投入の遅れ
  • 運用保守のコスト増大による新規開発への投資不足
  • 旧式化したアプリケーション・アーキテクチャーによる業務の拡大や変化に対する制約
  • データへのアクセスの難しさによるデータ資産の利活用不足
  • 複雑化したアーキテクチャーによる開発/保守の生産性や品質の低下
  • 一定のスキルを有する要員の不足による新規案件への対応の遅れ

これらの課題の解決を目指した既存システムのモダナイゼーションは企業経営における喫緊の課題であり、その手段としてもクラウドが最適なのです。

さらに、クラウド上で利用可能な最新技術や開発手法を駆使してアプリケーションを作るクラウドネイティブ開発は、DXの強力な推進剤となります。

それでは、クラウドによるアプリケーションのモダナイゼーションとクラウドネイティブ開発は、具体的にどう行い、企業にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。

モダナイゼーションでは既存資産を有効に生かせるソリューションが重要

IBMが推進するクラウド・ジャーニーでは、クラウドの最新技術を利用して既存システムをモダナイズします。前回(前回記事にリンク)ご紹介したように、既存システムをクラウドに移行するアプローチには「リフト」と「シフト」がありますが、後者に当たるのがモダナイゼーションです。

クラウド移行のアプローチ ─ リフトとシフト

なお、あえて既存システムをモダナイズするのは、それらのシステムに凝縮された機能やデータ、ノウハウを極力生かすためです。企業がこれまでに蓄積したシステム資産を全て捨ててゼロからアプリケーションを作り直すのは現実的ではありません。そのため、モダナイゼーションでは既存のシステム資産を有効に活用できるソリューションを選ぶことが、成否の面でも投資対効果(ROI)の面でも極めて重要になります。

モダナイゼーションでは企業全体の戦略/計画の策定が大切

モダナイゼーションの取り組みでは、いきなり個々のシステムについて個別に検討して作業を行うのではなく、下図に示すように企業全体の戦略/計画を策定するフェーズを設け、それらを明確にしたうえで進めることが大切です。なぜなら、これをやらなかった場合、途中で目的を見失い、取り組みが頓挫してしまう恐れがあるからです。

モダナイゼーションの実行ステップ(戦略/計画フェーズ)

 

ハードウェアの保守切れなどに迫られ、やむを得ず個別の取り組みを先行させざるをえない場合もあるかもしれません。しかし、“ROIの最大化”という観点では、きちんと全体の戦略を立てて進めることが肝要なのです。

モダナイゼーションで現行資産を生かして最新のビジネス環境に対応

クラウドを活用したモダナイゼーションの事例として、インターネットを介して消費者向けの金融サービスを提供しているお客様のケースを紹介します。

このお客様は「キャッシュレス化社会への対応」「SNSを介したビジネスパートナーとのエコシステムの実現」といったビジネス目標を掲げていますが、Javaで開発された現行システムは老朽化や複雑化が進み、目標達成に向けたビジネス施策を実施するには多くの期間とコストがかかる状態でした。機能追加や変更への対応も大変であり、古いフレームワークを使っていたためセキュリティーにも不安がありました。

そこで、IBMがご支援し、まずこれらの課題を解消した目指すべき姿(To Beモデル)を策定。インターネットを介して新サービスを提供していくための基盤を新たに作り、既存システムも活用しながらビジネスパートナーとのエコシステムを実現するという目標を立てました。それに向けて、現行システムの業務ロジックを生かしながらアーキテクチャーを刷新し、フレームワークを最新のものに変更したほか、インフラをコンテナ化してクラウドに置くことで柔軟性を高めました。

このようなモダナイゼーションを行うことにより、同社では施策実現のスピードを従来の3カ月から1、2週間程度に短縮するほか、ITコストを約30%削減、セキュリティー向上などの成果を見込んでいます。

ユーザー・ニーズへの即応を目指すクラウドネイティブ開発

一方、クラウド上で新規にアプリケーションを作るクラウドネイティブ開発とは、クラウドの技術やメリットをフルに生かし、ユーザーのニーズに応じてアプリケーションを迅速に開発/更新していく手法です。ビジネスのスピードに追随したアプリケーション開発を行うために、ツールによる自動化やコンテナ技術などを駆使する点が大きな特徴です。

次の図は、従来型のアプリケーション開発とクラウドネイティブ開発の特徴を「ITインフラ」「アプリケーション・アーキテクチャー」「開発方法論」「ツール」の4軸で比較したものです。

クラウドネイティブ化で目指すレベル

 

従来型のアプリケーションは、いわゆるモノリシック(一枚岩型)なアーキテクチャーであり、それをウォーターフォール型の開発スタイルで一括して同時に完成させるというのが主流です。それに対して、クラウドネイティブ開発では細かな粒度のマイクロサービスで構成されるアプリケーションを、アジャイル/DevOpsの手法により、さまざまなツールを組み合わせて作業を自動化しながら段階的に開発/リリースしていきます。

クラウドネイティブ開発で基幹の金融機能をAPI化して外部に公開

クラウドネイティブ開発に取り組まれた例として、国内の金融機関様における共通基盤の構築事例をご紹介します。

金融サービスのコモディティ化が進む今日、金融機関では社外のさまざまなサービスと自社の金融機能をいかに融合させて顧客にとっての使い勝手を高めるかが喫緊の課題となっています。

このお客様では、基幹システムが持つ預金や為替、振替などの機能をスマートフォンなどから手軽に利用したり、バーコード決済など新たな金融サービスとスムーズに連携させたりする目的から、基幹システムの主要機能のAPI化を決断。IBMの支援を受けてAPI仕様の策定や実装を行い、マイクロサービス化したAPIを提供する仕組みを整えました。これにより、基幹システムの機能をさまざまな外部アプリケーションで活用し、市場の変化に迅速に対応していくことが可能となりました。

長年のノウハウを生かし、モダナイゼーションとクラウドネイティブ開発を支援

このように、IBMはエンタープライズ領域で長年培った開発/運用の経験やノウハウをそのままクラウドの世界にも投入し、お客様の基幹システムなど現行の環境を生かした最適なモダナイゼーションをご提案します。

また、「Red Hat OpenShift」をはじめとする業界標準のミドルウェアをベースに、ベンダー固有のクラウド技術に依存することのないオープンなクラウドネイティブ開発を実現します。お客様が開発したアプリケーションは、IBM Cloudや他社のクラウド、オンプレミスなど、どこでも自由に動かせるのです。

さらに、モダナイゼーションとクラウドネイティブ開発のいずれにおいても、大規模なプロジェクトのマネジメントを熟知したスペシャリストや大規模かつ複雑なシステムのアーキテクチャー設計を得意とするITアーキテクトなどが、グローバルで蓄積した実績に基づくベスト・プラクティスや方法論、ツールなどを駆使してお客様をご支援します。

なお、IBMのクラウド・ソリューションは、規模を問わず、さまざまなお客様にご活用いただいています。デジタル変革やビジネスの成長を実現するために、先進技術を使った既存システムのモダナイゼーションや新規クラウドネイティブ開発に取り組まれる際には、ぜひIBMにご相談ください。


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