IBM クラウド・ビジョン
AIが複雑化したWebSphere環境の運用管理と既存アプリのモダナイゼーションを支援 ─ IBM WebSphere Automation、IBM WebSphere Hybrid Edition
2021年10月07日
カテゴリー IBM クラウド・ビジョン | IT部門向け | クラウド・アプリ構築
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日本でも多くのお客様にご利用いただいているJavaアプリケーション・サーバー製品「WebSphere」。従来型のJavaアプリケーション実行環境に加えて、近年はクラウドやマイクロサービスに適したランタイムのWebSphere Libertyも加わり、ニューノーマル時代のアプリケーション/サービス実行基盤として今後も皆様のビジネスを支えていきます。ただし、それに向けて多くのお客様で課題となっていることがあります。それは「オンプレミスやクラウドで動く大量のWebSphere環境の運用管理」と「既存のJavaアプリケーションのモダナイゼーション(クラウドへの移行)」です。2021年5月に開催した年次イベント「Think 2021」において、IBMはビジネスやITの業務課題に「AIを活用した自動化(AI-Powered Automation)」でアプローチすることを表明。WebSphereをご利用中のお客様が直面している2つの課題をAIの活用によって解決するソリューションとして「WebSphere Automation」と「Mono2Micro」を発表しました。本記事では、これらの主な特徴と、クラウドに最適化された軽量ランタイム「WebSphere Liberty」の最新機能をご紹介します。
- 「AIを活用した自動化」でWebSphereユーザーのIT運用を支援
- WebSphereも「AIを活用した自動化」で大きく進化
- AIで複雑化したWebSphere環境の運用管理を自動化 ─ IBM WebSphere Automation
- AIが既存アプリケーションのモダナイゼーションを支援 ─ Mono2Micro(IBM WebSphere Hybrid Edition)
- クラウドネイティブに最適化された軽量ランタイム「WebSphere Liberty」
鬼頭 巧
日本アイ・ビー・エム テクノロジー事業本部
データ・AI・オートメーション事業部
ストラテジー&ソリューション統括部長
ミドルウェア製品を主管し、IBM Cloud Paksの日本市場における立ち上げをリード。メインフレームからクラウド、ソフトウェアまでの幅広い知識と経験を基に、お客様のDX推進を支援。製造業の担当経験を生かし、クラウドを活用した新規事業の企画からソフトウェア/インフラの提案まで、お客様のビジネス変革を包括的にサポートしている。
上野 亜紀子
日本アイ・ビー・エム テクノロジー事業本部
データ・AI・オートメーション事業部
ストラテジー&ソリューション統括部
オートメーションリーダー
WebSphere製品やコンテナ・プラットフォームなどのアプリケーション基盤から、ハイブリッド・マルチクラウドおよびエッジコンピューティング環境における運用管理ソリューションまで幅広い製品群を担当。テクニカル・セールス部門のマネージャーとして、さまざまな業界のお客様への提案や技術支援を経て、現在はこれらの製品群の日本における戦略策定やオファリングの展開をリードしている。
「AIを活用した自動化」でWebSphereユーザーのIT運用を支援
IBMは今年5月に開催したThink 2021において、お客様のデジタル変革のさらなる加速をご支援するコンセプトとして「AIを活用した自動化(AI-Powered Automation)」を発表しました。IBMはこのコンセプトに基づくソリューションの提供を通じて、ビジネス・オペレーションの自動化による業務生産性の向上や、IT運用の自動化と実用的なインサイトの提示によるIT運用の高度化、アプリケーションやデータの改善による顧客体験の向上などをご支援します。
このうち、WebSphereをご利用いただいているお客様におけるIT運用の自動化や高度化を支援するソリューションとして発表されたのが「WebSphere Automation」と「WebSphere Hybrid Edition」です。以降では、両製品の主な特徴をご紹介します。
WebSphereも「AIを活用した自動化」で大きく進化
IBMはここ数年、WebSphereに関して対外的に大きな発表を行っていませんが、実は非常に活発に機能強化を進めてきました。その集大成として、Think 2021ではWebSphereに特化した領域で「AIを活用した自動化」を実現する最新ソリューションとしてWebSphere Automationが発表されました。
また、WebSphereでは従来型のJavaアプリケーションで多くのお客様にご利用いただいているランタイムと、クラウド向けに軽量化してDevOpsなどとの親和性を高めたWebSphere Libertyという2つのランタイムをご提供してきました。現在はそれらをWebSphere Hybrid Editionとして1つにパッケージングし、お客様がオンプレミスからクラウドへとアプリケーション・モダナイゼーションを進める過程で必要なランタイムを組み合わせてご利用いただける柔軟なライセンス体系でご提供しています。Think 2021では、このWebSphere Hybrid Editionで、お客様の既存のJavaアプリケーション資産をモダナイゼーションするためのツールとして「Mono2Micro」をご提供することを発表しました。
以降では、WebSphere AutomationとMono2Microについて、それぞれの特徴をご紹介します。
AIで複雑化したWebSphere環境の運用管理を自動化 ─ IBM WebSphere Automation
WebSphereは今日、国内でも大変多くのお客様にご利用いただいています。オンプレミスの既存システムのほか、クラウドでご利用いただいているケースも多く、なかにはコンテナやマイクロサービスといったクラウドネイティブなアプリケーションでお使いのお客様もあるなど、使う場所や使い方が多様化しています。
それらのお客様で現在、深刻な課題となっているのが「システムごとに運用がサイロ化されてしまい、どこで何が動いているのか、何が起きているのかを一元的に把握できない」「サイロ化によって運用管理が非常に煩雑化している」といったことです。
この課題を、「AIを活用した自動化」によって解消するために開発したソリューションがWebSphere Automationです。これを使うことで、お客様はさまざまなWebSphereベースのシステムを1つのWebSphere Automationの配下で一元的に管理し、ダッシュボードによってシステム環境全体を容易に把握できるようになります。
また、お客様が個々のWebSphere環境に対して日々行われている「脆弱性管理」「何か問題が生じた際の原因分析」「アップデート/セキュリティー・パッチの適用」「パフォーマンス・チューニング」などの作業を、お客様に代わってWebSphere Automationが行います。その際には、WebSphereが生成するログやパフォーマンスなどのさまざまな稼働データを自律的に分析し、最適な選択を自ら判断して実行します。これにより、お客様はWebSphere環境の運用管理を自律化/自動化できるのです。
なお、WebSphere Automationは5月に最初のバージョンがリリースされ、その後のバージョンアップで上記を実現する各機能が随時追加される予定です。
【参考情報】
『IBM WebSphere Automation』
AIが既存アプリケーションのモダナイゼーションを支援 ─ Mono2Micro(IBM WebSphere Hybrid Edition)
WebSphereをご利用のお客様の多くが直面しているもう1つの課題は、「クラウド時代に向けた既存資産のモダナイゼーション」です。
既存資産のモダナイゼーションでは、アプリケーション自体のモダナイゼーションと、そのランタイムや運用のモダナイゼーションの両方が必要となります。後者のランタイムと運用のモダナイゼーションについては、WebSphere Hybrid Edition(クラウドネイティブ対応)とWebSphere Automation(運用自動化)で実現しました。
一方、アプリケーション自体のモダナイゼーションについては、これまでもいくつかの支援ツールをご提供してきました。それらに加えて今回、新たに提供が開始されたのが、AIによって既存アプリケーションのマイクロサービス化を支援するツールであるMono2Microです。開発には東京基礎研究所が参加しています。
Mono2Microは、お客様の既存のJavaアプリケーションの実行ログをAIや機械学習を使って分析し、どのような単位でマイクロサービス化するのが望ましいかの推奨設計をビジュアルに提示します。その設計に対して、必要に応じてお客様ご自身でビジュアルに変更を加えた結果に基づき、一部のコードを自動生成することができます。
これにより、お客様の既存資産を生かしながら、より容易にマイクロサービス化やクラウドネイティブ化を進められるようになるのです。
【参考情報】
『WebSphere Hybrid Edition』
クラウドネイティブに最適化された軽量ランタイム「WebSphere Liberty」
WebSphere AutomationとMono2Microの詳細は以上のとおりですが、この機会にWebSphere Hybrid Editionで提供しているWebSphere Libertyについて、現在の開発方針や特徴的な機能をご紹介します。
WebSphere Libertyの開発が始まった2000年後半は、市場ニーズや最新技術への迅速な対応が何よりも重視されていました。そこで、開発部門は新たな時代に適したアプリケーション・ランタイムの実現に向けて、WebSphereそのもののモダナイゼーションを実施。製品コードのモジュール化を徹底して推し進めた結果、誕生したのが軽量ランタイムであるLibertyです。
その後も、Libertyはクラウド・アプリケーションの開発/運用に最適化するためにコンテナ化や最新技術への対応が継続的に行われてきました。短いサイクルで製品の成長/進化を進めるためにアジャイル開発やDevOpsを取り入れるなど、開発プロセス自体も変革。開発環境としていち早くコンテナやKubernetesを活用し、徹底した自動化を進めることで開発生産性と生産品質を高め、現在は月次リリースを実現しています。
▶Transformation AdvisorでJava EEアプリのコンテナ化を支援
これらの変革で得たノウハウや知見を基に、Libertyではお客様のモダナイゼーションを支援するツールとして「Transformation Advisor(TA)」をご提供しています。
アプリケーションの特性や要件は企業によってさまざまであり、モダナイゼーションの方法も多岐にわたりますが、典型的なアプローチの1つとして多くのお客様が取り組んでいるのがアプリケーションのコンテナ化です。
TAは、お客様の既存のJava EEアプリケーションやメッセージング環境のコンテナ環境への移行とモダナイゼーションを支援するツールです。具体的には、アプリケーションのファイルや構成を解析して移行の難易度や推奨される修正内容をまとめた分析結果レポートを作成し、コンテナ化のために必要となる構成ファイルを自動生成します。分析結果レポートは、クラウドやコンテナ環境への移行に必要なワークロードの見積もりや、移行の優先順位の検討に役立てることができます。
▶「ゼロマイグレーション・ポリシー」でバージョンアップの負担を大幅に軽減
また、Libertyを完全にモジュール化したことで実現された他の製品にない特徴が「ゼロマイグレーション・ポリシー」です。
Libertyのアーキテクチャーの特徴は、「フィーチャー(=モジュール)」と呼ばれる機能単位を柔軟に組み合わせて利用することが可能な点です。一般的なアプリケーション・サーバーは、バージョンアップのタイミングで新しい仕様に対応すると、その仕様を実装したものにランタイムが置き換えられます。その結果、以前のランタイムで動いていたアプリケーションが正常に動作しなくなる可能性があるため十分な事前検証が必要ですが、これがアプリケーション開発者や運用担当者の大きな負担となっていました。
一方、Libertyでは新しい仕様に対応したフィーチャーが従来のフィーチャーを置き換えることはなく、独立した新たなフィーチャーとして提供されます。つまり、新しいバージョンのフィーチャーがリリースされても従来バージョンのフィーチャーは継続して使えるため、既存アプリケーションが新しい仕様を必要としないのなら、従来のフィーチャーのままランタイムを変更することなく利用できるのです。
これにより、Libertyをバージョンアップした場合でも、既存のアプリケーションは検証なしでそのまま継続利用することができます。これは「バージョンアップ時の事前検証などの負担を極力減らしたい」というお客様のご要望に応えて設計/開発されたLibertyならではの特徴です。このゼロマイグレーション・ポリシーにより、既存のシステム構成やアプリケーションに対するバージョンアップの影響を最小化し、お客様の負担を大きく軽減しているのです。
今回はThink 2021で発表されたコンセプト「AIを活用した自動化」をWebSphereの領域で推進するソリューションとしてWebSphere AutomationとMono2Micro(WebSphere Hybrid Edition)の特徴をご紹介したほか、クラウドに最適化された軽量ランタイムとしてWebSphere Libertyの特徴的な機能をご説明しました。お客様がWebSphereの上に築かれた資産をクラウド時代に適合させていく際には、ぜひこれらのソリューションをご活用ください。
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