IBM Sustainability Software
ドラクエの勇者になりたかった。その夢をPMとして叶えました(Watson IoT 松下 望)
2019年06月15日
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Watson IoTチームメンバー・インタビュー #17
松下 望 Watson IoTサービス
Watson IoTチームのメンバーが、IoTやAIに代表されるテクノロジーを踏まえ、過去・今・未来と自らの考えを語るインタビューシリーズ。第17弾はプロジェクト・マネージャーとしてお客さまと一緒にものづくりの現場に立ち続けている松下さんに登場いただきました。
(インタビュアー 八木橋パチ)
— お久しぶりです。今日はよろしくお願いします。
「変革期のものづくりを支えるテクノロジーと方法論」の取材以来ですね。今日はパーソナルな話も聞かれるんですよね?
実は私、引っ込み思案でして…。ちょっと緊張していますがよろしくお願いします。
— さっそくですが、松下さんはIBMでのキャリアは長いんですか?
2001年に新卒入社したんで、そろそろ20年が近づいてきています。ソフトウェア開発研究所に配属となり、そこで8年間主にRational製品 – 最近では「CE(Continuous Engineering – 継続的エンジニアリング)」と呼ばれているソフトウェア群の開発をしていました。
今も現場でRational製品を使用する機会があるのですが、当時私が書いたコードが今も残っているのを目にすることもあります。
— 今はPM(プロジェクト・マネージャー)の松下さんですが、最初はソフトウェア開発者だったんですね。
はい。開発者だったときの知識や経験が今も役に立っていますよ。プロジェクト現場で、ソフトウェアがなぜこういう作りになっているかを背景と合わせて説明すると「深いレベルで理解できました」と感謝されることも多いです。
— 8年間の開発の後はどちらに行かれたんですか?
自分が開発していたソフトウェアが現場で実際にどう使われているのかを確かめたくて、希望してサービスに異動しました。そこで最初の数年、金融業界のお客さまを担当した後、こちらも自分で希望して現在の製造業の担当PMになりました。
— 現場で実際に目にして、どうでしたか?
衝撃的でしたね。お客さまのユースケースが研究所で想定していたものと違う場合がありました。
お客さまのユースケースを想定して開発していたつもりですが、まだまだアプローチが技術に寄っていた気がします。あの頃はデザイン思考のような考え方も今ほど一般的になっていませんでしたし。
— そうですよね。ユーザーセンタード・デザイン(UCD – ユーザーの目的を中心に据えたデザイン方法)も、まだ「専門家だけのもの」ってイメージでした。
そう、今のように「誰もが意識すべきもの」とはなっていませんでしたよね。
もし、あの頃の自分に戻れるなら、もっと現場に寄り添った開発を進めることができると思います。
— 金融から製造へと移られたのは、どんな理由だったんですか?
やっぱり「ものづくり」って日本の強みだし、日本を支えてきた基幹産業じゃないですか。その支援をしたくなったんですよね。
それに「まずは試して改善する」っていう、それまでいた金融とは少し違う文化の中に自分を置いてみたくなったんです。
— 最初に「引っ込み思案」とご自身のことを言われましたけど、「現場を見たい」とか「違う文化に身を置きたい」と自ら行動する姿は、とてもアクティブで引っ込み思案とは思えないです。
たしかにそうかもしれませんね。でも、「引っ込み思案な自分」を自覚しているからこそ、「自分で道を切り開いていくこと」を強く意識しているんです。
ちょっと唐突ですが、私、ドラゴンクエストの大ファンなんです、テレビゲーム、ファミコンですね。中でも一番大好きなのがドラクエIII(DQ3)で…って、パチさんも知ってますよね?
— はい、やりましたよ。ストーリーはよく覚えていませんが。
3作目は名作中の名作なんです。16歳の誕生日の朝、主人公は王様から魔王討伐の命を受け、勇者としてルイーダの酒場に仲間を探しにいくんです。数々の苦難を乗り越えながら仲間と共に成長し、力を合わせて魔王を討伐するというシンプルなストーリーに憧れました。
私、自分が16歳になるとき、同じことが起きるんじゃないかと少しだけ本気で思っていたんです。でも現実は違っていて…そりゃそうですよね。でも、勇者になりたいという気持ちはずっと残っていました。
— 「勇者になりたかった」ですか…。でも気持ちは分かります。
本当ですか(笑)。でも本気でそう思っていたんです。
そして数年前、PMとして、とても苦しいプロジェクトをリードしていたとき、ふと気づいたんですよね。「ああ、これは勇者になるための試練じゃないか」って。
— …勇者になるための…ですか…えっとー
大丈夫です、心配しないでください(笑)。これから説明します。
ドラクエって、というか多くの冒険ものではパーティーと呼ばれるチームを組むんですけど、たいていは戦闘力や体力に優れた戦士と回復の呪文を唱える僧侶、そして攻撃系の魔法を得意とする魔法使いと勇者っていうのが基本的な組み合わせなんです。
— なるほど。今、ハリーポッターとかスターウォーズとか、指輪物語が頭に浮かんでます。
どれも似たところがありますよね。それで、勇者って戦いも魔法もまあそこそこはできるんですが、別に抜きん出ているわけじゃないんですよ。勇者が本当に得意としているのは、みんなの力をまとめる能力なんです。
それに気づいたとき「これだ!」ってなったんです。これってまさにPMじゃないか! って。
— 本当だ。言われてみればPMですね。そうかPMは勇者だったのか!
「違うよ何言ってるんだ。」って人ももちろんいると思いますよ。でも、子どもの頃から勇者に憧れていた私にとっては、そう思ったときPMが特別な仕事になったんです。
だから、本来の自分の引っ込み思案な性格が邪魔をしそうなときにも、気持ちを奮い立たせています。試練に立ち向かって成長したいし、そのために努力することが勇者に近づくことだから。
— 今、グッときてます。ちょっと泣きそうです。
少しかっこいいこと言い過ぎたかも(笑)。でも、こうやって話していたら、就職先をIBMに決めた時のことを思い出しました。まだ学生だった私に、「会社に使われるんじゃなくて、IBMでは会社を使う意識が必要だし重要なんだよ」って言われた社員の方がいたんです。
その言葉が最終的にはIBMに就職しようと決めた理由でした。今振り返って考えても、それがIBMっていう会社を表していると思います。そしてそれを意識して働くことが、自分にはポイントになってきた気がします。
— 松下さんはこれからも勇者街道まっしぐら! ですね。
どうでしょうか、40歳代になり、今、新しいチャレンジのときだなって感じてます。これまでは、自分の時間を犠牲にして最終的にどうにかプロジェクトを成功させてきたところがあったのは否めなくて…。これってサステナブルな働き方じゃない、持続的なプロジェクトの進め方ではないなって思っています。
自分の中で、働き方に対するポリシーをもっと明確にしていく必要があると感じていて。そしてプロジェクトではメンバーのポリシーと自分のそれを重ね合わせて、みんなが幸福で楽しく働ける環境を作っていきたいんです。
— とても重要だけど、とても難しいことですね。具体的に何か取り組まれているんですか?
実は、PM仲間と討議を重ねていて、プロジェクトをもっと良いものにする方法論や、関係者をもっと幸せにするための取り組みを、論文にしたり特許を取ったりしているんです。まだ実装には至っていませんけどね。
私は、今後Watsonに代表されるAIやコグニティブが、プロジェクト支援にどんどん活かされるようになっていくと思っているんです。例えば、状況に応じて自分の過去の成功体験やプロセスをタイムリーに思い出させてあげることで、メンバーがネガティブ思考になり過ぎないようにするとか。AIならではのモチベーション支援ができますよね。
— たしかに、人は困難な状況では自分自身を冷静に見れなくなりますよね。
ですよね。過去に似たようなことを克服しているのに、その経験や事実すら思い出せなくなってしまったりして。
実は、こうしたAIによる支援で、自分自身を成長させたり、プロジェクトを成功に近づかせるソリューションも出てきているんです。残念ながら、私の論文や特許とは異なる技術によるものですが。
— どういう仕組みなんですか?
プロジェクトや開発現場では開発要求仕様書が重要な役割を果たしますが、AIがその要求仕様の品質を担保するよう採点してアドバイスをするものです。RQA(Requirement Quality Assistant)と言います。
具体的には、「INCOSE(International Council on Systems Engineering)」という、世界的に権威ある協議会が認めた「良い要求仕様文章群」を学習したWatsonが、仕様書作成者とやりとりをしながらその品質を高めていきます。
— プロジェクトチームの働き方を変えるものとなりますか?
正直、このソリューションだけでチーム全体を大きく変えることはないでしょう。それでも、チームはこれまでとは違う時間の使い方ができるようになります。まずは最初のステップじゃないですかね。
価格もかなりリーズナブルなソリューションなので、AIを活用して持続可能性の高い働き方に取り組むための第一歩としてもちょうどいいものじゃないですかね。始めないといつまでも変われませんから。
インタビュアーから一言
取材の最後に分かったのですが、松下さんはこの取材の2日後に結婚式を控えられていました。
プロジェクトチームもゲームのパーティーも、目的達成後は解散して別々の道を歩むもの。でも結婚はそれとは違い、一生を共にするであろうパートナーとの道のりです。その一歩を踏み出す直前にお話しを聞くことができたのは、なかなかステキな偶然でした。
改めて、松下さんご結婚おめでとうございます!
(取材日 2019年4月5日)
問い合わせ情報
お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 cajp@jp.ibm.com にご連絡ください。
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