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宇宙のはじっこを知りたいじゃないですか(Watson IoT 藤巻 智彦)

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Watson IoTチームメンバー・インタビュー #10

藤巻 智彦  シニア・ITスペシャリスト

 

IoTとAIの過去・今・未来について、Watson IoTチームのメンバーが語るインタビューシリーズの第10回です。今回は藤巻 智彦さんに登場いただきました。

(インタビュアー 八木橋パチ)

 

     — はじめまして。まずは簡単に職歴を教えてもらえますか?

初めて就職したのはヒューレット・パッカード(HP)社で、そこで計測機器を扱っていました。

その後、日本ラショナルソフトウェアに転職したのですが、その後わりとすぐに会社がIBMに買収されて、それからずっとIBMで働いてます。

 

     — 転職してすぐ買収ですか。びっくりしたんじゃないですか?

たしか、入社後ちょうど半年での買収でした。

…多少はびっくりしたものの、社内でも「IBMかな…それともあっちの会社かな?」って噂にはなっていたんで、それほど驚きはありませんでした。

 

     — 「あっちの会社」がどの会社だったのか気になります(笑)。結果はIBMによる買収だったわけですが…ぶっちゃけ、どう思いました?

当時は正直どっちの会社でもいいって思っていました。それぞれの良さがありそうだったので。

でも結果として、今ではIBMで良かったと思っています。社員の自律性の高さと、それを期待する会社との関係性が、自分にはとても合っています。

 

 

     — Watson IoTでは何を担当されているんですか?

メインで取り扱うのはIBM IoT Continuous Engineeringと呼ばれるソリューションで、設計、開発、テストの全行程を管理して支援するものです。

 

     — どんな業種のお客さまにご利用いただくことが多いんですか?

自動車、金融、医療機器、ソフトウェア開発など、あらゆる業種と言ってもいいかもしれません。

例えば医療機器では、CTやMRIなどの画像検査機器の設計・開発に用いられていて、国内外の多くの医療機器装置メーカーさまにご利用いただいていますよ。

 

     — そうなんですね。じゃあ私も人間ドックなんかでお世話になってるんだなぁ。

MRIだとほとんどのメーカーさまでご利用いただいていると思うので、そうだと思います。こうやって多くの方に役立つものに関係できるのは、やっぱり嬉しいです。

これは自分がContinuous Engineeringの担当だからっていうそれだけの理由で言うわけじゃないのですが、もっと多くの製造のお客さまに活用いただくことで、働きかたの改善にも繋がると思っているんです。

 

     — どういった点でですか?

今、製造の現場では、複雑性がどんどん高まっています。そしてこれから、さらに幅広い技術への対応が求められるでしょう。

そんな中で、一部の腕の良い職人やベテランに頼ってしまうやり方では、働きかた改革も進まないと思うんです。

     — たしかに、分担ができない「個に頼る」働きかたは、長時間労働や低生産性へと繋がりがちですね。

そうなんです。ただ一方で、職人さんたちの「やりたいことを好きなだけやりたい」っていう気持ちもよくわかるんです。自分もそういうタイプなので。

 

     — 研究者の方たちも、よく「研究が好きすぎて、寝る時間さえ惜しい」なんてことを言われますよね。

はい。私も仕事も個人の趣味も、没頭してやりたいだけやりたいって思うタイプです。

ただ、企業として持続性のある働きかたを考えたときには、もっと良いバランスが必要かなと。

 

     — たしかに、企業としてはそうですよね。個人としてはどうですか?

ワークもライフも、理想的には好きなことを好きなときに好きなだけやりたいです。

休日の朝、目覚めたときに「よし! 今日は一日これをやるぞ」って決めて、それに没頭できるときは幸せを感じます。

 

     — 休日はどんな風に過ごされるんですか?

去年ですが、連休のときに個人的に興味を持ってるとあるテーマについて考えたり調べたりしていたら、気がついたら3日くらい家にこもっていたこともありました。

外出するもの好きなんですけど、家にいるのも嫌いじゃないです。結局「何をやっているのか」次第です。

 

     — 外出はどんなアクティビティーが好きなんですか?

ドライブが好きですが、でも、ただドライブするというよりは「どこに行きたいのか」「なぜ行きたいのか」「そこに行かないと味わえない体験は何か」とか、行く前にそういうのをしっかり考えて、仮説を立てるのも好きなんです。それで、実際に行ってみて仮説検証をする。

…まあ、慎重派ってことなんでしょうね。

 

     — ドライブに至るプロセスも好きなんですね。おもしろいなあ。

ドライブから帰ってきたら、走行データとかエンジンや車の挙動とかのドライブ中に生成されるデータを取得して分析するのも好きなんです。

あくまで趣味でやっているんですが、この話でお客さまと盛り上がることも案外少なくないです。

そういえば、Watson IoT事業部ではお客さまといろいろなIoTデバイスについてお話させていただくことがあるんですが、そんな時にHP社時代に計測器を扱っていた経験が活きることもあります。これも偶然ですけどおもしろい縁だなって思っています。

 

     — 藤巻さんが最近気になっている問題とか社会課題って何ですか?

いろいろありますけど、身近なこととして、一人暮らしの父親のことが心配です。

もう高齢で、いろいろと生活に支障をきたすようなこともあるんですが、なかなか支援サービスを受けたがらないんですよね。

 

     — 分かります。うちの両親もそうでした、「そんな、人様の世話になるなんて」って。

これっておそらく、特定の地域とか、ひょっとしたら日本だけの話でもないと思うんです。

世の中に便利なサービスやテクノロジーが新しく増えてきても、それを受け入れようって気持ちが人びとの間に育っていかないと広がらないんじゃないかなって。

 

     — 「高齢者には使い方が難し過ぎる」という話はよく耳にしますが、それだけじゃなさそうですよね。

はい。使い勝手やデザインを工夫したり、それがもたらす利点を分かりやすく伝えたりっていうのはもちろんすごく重要なポイントですが、それだけじゃなく、理屈や感情だけではない問題がありそうです。

自分の中にもまだ答えはありませんが、社会的な仕組みや習慣からアプローチしていく必要があるんじゃないかという気がしています。

 

     — 昨年か一昨年だったか、行動経済学のセイラー教授がノーベル賞を受賞しましたね。

そう、社会心理学とか行動経済学とかに大きなヒントがありそうで、勉強してみたいなっって最近は思っています。

例えば、選択肢の提示のしかたを少し変えるだけで、人の行動って大きく変わるわけですよね。そういうところに課題解決の大きなヒントが隠れているのかもしれません。

 

 

     — 最後の質問です。20年後は何をしていますか?

そうですね…宇宙に関する事業をやっていると思います。

自分がロケットを作ったり飛ばしたりしているようになっているとは思わないですが…。例えば、衛星データ解析とか、そういう何か宇宙に関連する事業ですね。

 

     — 何か宇宙に興味を持つきっかけがあったんですか。マンガ『宇宙兄弟』とか?

いや、『宇宙兄弟』はタイトルは知ってますけど見たことはないですね。

未知のものに惹かれるんですよね。宇宙のはじっこがどうなっているのか、知りたいじゃないですか。

 

     — たしかに興味は惹かれます。でも、未知のものって他にもいろいろありますよね。深海とか微生物とか。

そうですね。でも、やっぱり深海には確実に底があるし、微生物のようなミクロの世界にも、必ず最小単位はあると思うんです。
でも、宇宙だと、まだはじっこがあるのかどうかすら分からない。これ以上の「果てしない距離感」を感じさせてくれるものって、他にないと思うんです。

 

インタビュアーから一言

「自分が生きている間に、火星や木星に旅行に行ける世界が実現するのかは分からないけど、いつか実現したときに、その歴史にほんの一部でもいいから関われていたら嬉しいじゃないですか。」

もし、その頃まで現在のWatson IoT事業部が続いていくとしたら、その頃はIoTじゃなくてIoU(インターネット・オブ・ユニバース)とかになっていそう。藤巻さんの会社と事業提携しているかも?

 

(取材日 2019年1月23日)

 

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