SPSS Modeler ヒモトク
Tカードのデータをオープンにして新たな価値を創出
2018年07月16日
カテゴリー SPSS Modeler ヒモトク | アナリティクス
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CCCマーケティングの「DATA DEMOCRACY DAYS」をIBM SPSS Modelerが支援
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下、CCC)のグループ会社としてマーケティングプラットフォーム事業を手掛けるCCCマーケティング株式会社(以下、CCCマーケティング)は、CCCグループが保有する「Tカード」のデータに接する機会をオープンにして外部に開放。より良い豊かな暮らしにつながるライフスタイルの企画を創出すべく、オープンイノベーションプロジェクト「DATA DEMOCRACY DAYS」を実施しました。この取り組みのデータ分析環境を支えたのがIBM SPSS Modelerでした。
お客様からお預りしているデータの価値を社会に還元
CCCマーケティングが実施した「DATA DEMOCRACY DAYS」(以下、DDD)とはいかなる取り組みでしょうか。同社が2018年1月22日に発行したニュースリリースには、次のように記されています。
「”データは、人と世の中をより楽しく幸せにすることができるだろうか?”との問いをテーマに、新たな企画や事業、サービスの創出に興味・関心を持つ社会人、学生などに参画を募り、参加者自らがデータに接しながら企画を作り上げるプロジェクトです」
つまりDDDとは、CCCグループが蓄積してきた「Tカード」の購買データ(ID-POS)や属性データ(個人の特定につながらない限定的な項目のみ)を用いたオープンな共創の場であり、そこから創出された事業やサービスの優れたアイデアに対して、実際の協同ビジネスとして推進していくことも視野に入れています。
ちなみにTポイントがサービスを開始したのは2003年のことで、15年を超える歳月を重ねる中で、現在その会員は日本の2人に1人(6,676万人)に達しており、提携先も182社、827,702店舗(2018年3月末現在)に拡大しています。
また、1週間あたりのTカードの利用者は約3,000万人で、年間トータルで約7兆円分の買い物に関与しています。消費者庁が発表した家計が支出する消費額の総額は、2015年時点で約285兆円となっており、そのうちの2%以上を占めることからも、Tポイントが私たちの日常生活にいかに密着しているか見て取ることができます。
CCCマーケティングで広報を担当する安藤 舞氏は、「Tカードのデータはお客様よりお預かりしたものであり、そこから得られる価値を社会や生活者へ還元していくことは、これからの企業としての社会的責務となります。この考え方が今回のDDDにつながっていきました」と話します。
個人情報保護法の改正も追い風となり長年の構想が実現
もっともTカードのデータをオープン化(=民主化)し、社会にその価値を還元していくという考えそのものは、ずっと以前からありました。
DDDの企画運営にあたったCCCマーケティング 経営企画Mission Unitの強谷 武史氏は、「すでに5~6年前からCCCマーケティングのトップ(北村 和彦氏)自ら、『Tカードのデータを囲い込み、自分たちだけで活用していたのではだめだ』と訴えていました」と振り返ります。
それにも関わらず、なかなかデータのオープン化が進まなかった背景にあったのが、個人情報保護法に代表される“法規制の壁”とそれにセンシティブに反応する“世の中の情勢”です。
CCCマーケティング データサイエンス・ラボの所長の堀井 克倫氏は、「利用者を特定できない形でサービス利用データを外部に提供しようとした企業に、『個人情報保護の観点で問題があるのでは?』という指摘が殺到し、中止に追い込まれるという出来事もありました。個人情報にまったく該当しないデータであっても、個人が起点となって発生するあらゆるデータの利用に対して、世の中の理解が追い付いていなかったのです」と話します。
こうした状況が少しずつ変化しはじめたのが2017年頃です。法規制の観点からも個人情報保護法が改正され、利用目的の制限が緩和されたことも追い風となりました。この機をいち早く捉えるべく、DDDのプロジェクトはスタートしました。
年齢層も性別も所属もバラエティーに富んだ人材が集まった
今回のDDDでは、社会人、学生、個人・グループなど年齢や国籍を問わず、広く一般から参加者を募りました。参加者はCCCマーケティングと業務委託契約を結んだ上で、5日間の「オープン日」を通じて実際のデータを利用。新たな企画やサービスを立案し、最終的にプレゼンテーションを行うというのが大まかな流れとなります。
ただ、特別な資格を設けることなく募集した参加者に対して、「どこまでのデータに触れてもよいのか」という懸念が残っていたのも事実です。そうした中で重視したのが、参加者との緊密なコミュニケーションです。
強谷氏と共にDDDの企画運営にあたったCCCマーケティング プラットフォーム事業企画 Mission Unitの畠中 みさき氏は、「『人と世の中をより楽しく幸せにする』というDDDのコンセプトを参加者といかに共有し、理解していただくことができるか。初日のオリエンテーションからしっかり意見を交わし、お互いの信頼を醸成することが、プロジェクト全体を通して最も注力したポイントです」と話します。
この結果、全20チーム49名(うち5名は個人参加)のすべての参加者の賛同を得て、データ利用のルールを徹底した上でプロジェクトを進めることができました。
こうして実際にどんなチームがDDDに参加したのかというと、「20歳代の学生チームから50歳代の社会人チームまで、年齢層も性別も所属もバラエティーに富んだ人材が集まりました」と強谷氏は話します。
さらに興味深いのがそのチーム構成です。「各チームは必ずしも同じ企業の仲間というわけではなく、企業の枠を超えて得意とするスキルを持ち寄った混成チームも数多くありました。学生チームも同様で同じ大学の友人というより、SNSなどのコミュニティーで知り合った者同士でチームを組んで参加するケースが目立ちました。まさにクラウド時代を象徴した動きで、新しい人の“つながり”をCCCグループに持ち込んでいただけたという側面からも、今回のDDDには大きな意義がありました」と堀井氏は話します。
誰もがフラットにデータと対話できる環境としてIBM SPSS Modelerを活用
DDDの参加者のもう1つの大きな特徴は、全員がデータの扱いに慣れた経験者ではないことです。「今回の選考では応募者から提出されたアイデアを『顧客価値』『革新性』『実現性』『収益性』といった事業創造の4つの基準から評価することとし、データベース操作のスキルレベルなどはあえて問いませんでした」と強谷氏は話します。実際、SQLなど触ったことがないという参加者も少なくありませんでした。
このようにバックグラウンドもキャリアも大きく異なる多様な参加者によるデータ活用および新たな企画やサービスの立案を支えたのが、IBM SPSS Modelerです。
「データから新しい価値を生み出すためには、アナリティクスの専門家だけでなく多様性をもった多才・多能な人材を受け入れる必要があります。ただ、そのためには『言語』および『文化(データ分析の流儀)』の2つの課題を乗り越えなくてはなりません。SQL、Python、Rなどの言語環境も準備しましたが、どれもハードルが高くすぐに使いこなせるものではありません。そうした中でIBMからIBM SPSS Modelerを貸与していただいたことで、すべての参加者に対して『フラットにデータと対話できる環境』を提供することができました」と堀井氏は話します。
たとえば慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科からDDDに参加した安齋 達彦氏、内川 一明氏、古田 裕亮氏の3名のチームも、5日間のオープン日を通してほぼ全面的にIBM SPSS Modelerを活用しました。
主にデータ分析を担当した安齋氏は、「これまでSQLを使った経験もほとんどなかったのですが、IBM SPSS ModelerはTカードの大規模なデータもGUI上でハンドリングすることができ、『これなら使える』と思いました。レコード単位でデータを検索するだけでなく、同じ分析シナリオを容易に横展開すると共に結果をグラフ表示するなど、思い描いたデータ処理をスムーズに実行することができました」と話します。
内川氏と古田氏もまた「IBM SPSS Modelerの画面を後ろから眺めているだけで、どんな分析を行っているのかすぐに理解することができ、その場で分析の視点を変えてもらうなど、チーム内の効率的な意思疎通ができました」と話します。
最初の成功モデルはDDDの次のステップに必ずつながる
2018年4月21日に行われたプレゼンテーション&審査会では、人気が高く品薄の商品を購買履歴から検索するユニークな在庫検索サービスが最優秀賞を受賞。そのほか生活データを利用した婚活マッチングアプリが優秀賞を、購買履歴から好みそうな商品やTポイントを親子間で贈るポイントシェアアプリが審査員特別賞をそれぞれ受賞しました。
「我々だけでは踏み出せなかったようなデータ活用のテーマに対して、非常に大きな気づきをいただくことができました」と堀井氏は評価します。
また、安藤氏も「門外不出だったTカードのデータを外部に開放するということで今回のプロジェクトには非常に大きなプレッシャーがありましたが、成功裡に終わったことでほっとしています。この最初の成功モデルはDDDの次のステップに必ずつながっていくと考えており、同時に他社の皆様にもぜひ参考にしていただけたら幸いです」と話します。社会全体でのデータの民主化を促すと共に、CCCグループとしてさらなる価値創造に貢献していくことを目指しています。
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