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ラウンドテーブルを通じてPwDA+Week2024を振り返る(後編) | インサイド・PwDA+9

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日本IBMグループのダイバーシティー&インクルージョン(D&I)活動の特徴の1つに、当事者ならびにその支援者であるアライが、自発的なコミュニティーを推進していることが挙げられます。

そしてD&Iフォーカス領域の1つ「障がい者の活躍」においては、「People with Diverse Abilitiesとその仲間たち」から成る「PwDA+コミュニティー」がさまざまな活動を企画・実行し、人事部門がそれを支援しています。

 

毎年12月初旬には、通年の活動に加え「PwDA+ Week」というキャンペーンウィークを設け、誰もが自分らしく活躍する社会について社員が考えるためのセッションやイベントを集中的に開催しているPwDA+コミュニティー。

前編に続き、ラウンドテーブルの内容をご紹介しつつ、キャンペーンウィークでの活動を中心にお伝えいたします。

(左上から時計回り)CDO(チーフ・ダイバーシティー・オフィサー)の今野智宏(こんのともひろ)、PwDA+コミュニティー・エグゼクティブスポンサーの村澤賢一(むらさわけんいち)、日本アイ・ビー・エム システムズ・エンジニアリング株式会社(ISE) 代表取締役の内藤拓也(ないとうたくや)、PwDA+コミュニティー創設メンバーの河村進吾(かわむらしんご)

 

目次
前編

  • 今から一緒に未来を考えませんか? | あなたの知らないPwDA+Community
  • CDO視点で社外から見たPwDA+(今野智宏)
  • 技術が解消する障がいと、技術を活用した取り組みを体験してもらう機会

後編


 

● 経営者視点でのダイバーシティー – 多様性を体現する組織とは(内藤拓也)

 

村澤: ここからは内藤さんにお話をお聞かせいただきます。

内藤さんには以前PwDA+コミュニティーの事務局でもご活躍いただいていました。その後、日本アイ・ビー・エム システムズ・エンジニアリング株式会社(ISE)の社長という重責を担われるようになり、およそ半年が過ぎました。

新しくそしてオープンな技術領域にもどんどん打って出る技術者集団ISEにおいては技術のD&Iはかなり進んでいると思います。さてそれでは、「人のD&I」はどうでしょうか。

 

内藤: 私も長年ISE社員として働いてきましたが、ISEにはPwDA社員が昔から多数在籍していて、個人的にSEとして尊敬するPwDA社員の先輩が何人もいらっしゃいます。

そういう環境でしたから、「プロフェッショナルな技術者」としての存在がまず先にあり、障がいのあるなしにはあまり意識が向かずにきたというのが実情かなと思います。

ただこれは、身体系の障がいのあるSE職の方が多いという、ISEの特色に過ぎないのかなとも思っています。日本IBMグループ全体で見るとまた話は違いますよね。

というのは、ISE社長就任の1年ほど前、日本IBMにて営業系の組織のマネージャーを経験したのですが、その際は脳や神経に由来する個人特性、いわゆる「ニューロダイバーシティー」の特性が強めのメンバーのサポートに戸惑った経験があるからです。

本人のために、チームのためにも、どうするのがいいのかどうしてあげられるのか——。発達障がいや精神障がいについて、もっと学びを深くしなければと自覚を持ち、今、勉強しているところです。

 

村澤: 前段の、「働くプロフェッショナル」として、お互いがお互いを尊重・尊敬し合い、一緒に働くのが当たり前になっているというお話は、身体系の障がいを考える上では一つの到達点に達しているのではないかという気がしました。

そして後段のニューロダイバーシティーについては、当事者の方、そして周囲やマネージメント陣などを含めて、まだ私たちみんなでチャレンジを続けている部分ですよね。ISEの社長として、経営者視点を踏まえ気をつけていらっしゃることはあるでしょうか。

 

内藤: まず一つは、これは経営視点とは異なるかと思いますが、ご本人の中でしっくりこない、あるいは納得がいかない部分があった際には、しっかりと対話することを心がけています。

それぞれの個人に得意・不得意があるのは普通のことです。やり方に違いもあっていいと思います。ただ、日本IBMグループのパーパスである「世界をより良く変えていく“カタリスト(触媒)”になる」というところからはブレないようにしようということです。

そこから外れてしまうようなコミュニケーションや言動があったときには、「そこだけは同じ方向を向いていこうよ」と伝えています。

あとは、やり方が違えば、失敗も増えると思うんです。でもそれはしょうがない。周りも含めて、失敗を恐れずにやってみる。そして失敗したらそこから学んでいこうということです。

本人にも、客観的な言葉でそうしたことを伝えていく。そうやって個人も会社も成長できるし、よりインクルーシブになっていくのではないでしょうか。

 

村澤: PwDA+ウィーク前夜祭として11月29日に開催した「PwDA+コミュニティー Happy Friday」で今野さんがお話されていましたが、「一人ひとりが持ち寄る個性を尊重し合う組織」がD&Iの究極的な目標かと思います。

そうした中で、パーパスやビジョン、ミッションなどの組織のステートメントが信頼関係を築いていく中心にあるといいうのは、とても的確であり大切なことだと思いました。ありがとうございます。

『「他人との関係性のなかで初めて認識できる自分らしさ」「自分らしさを保つための(時間や気持ち的な)余裕」「自分らしさとは他者との違いが強みになること」など、さまざまな角度から語り合いました。』

 

 

● QAタイム | D&Iを推進する上で、難しいと感じる場面は?

 

村澤: ラウンドテーブル今ご視聴いただいている方から「D&Iを推進する上で、難しいと感じる場面は?」という質問をいただきました。

私が難しさを感じているのは、「知る」から、その知識に基づいた「実践」へのハードルというか、高い階段のような存在です。

今年のPwDA+ウィークのテーマは「実践してみる」「体験してみる」で、先日はIBM箱崎事業所からも本当に目と鼻の先にある株式会社CAC様のボッチャ専用コートをお貸しいただき、新しい試みの一つとしてPwDA+コミュニティーの皆さんとボッチャ大会を行いました。

私も初めてのボッチャ体験だったのですが、やっぱり実際に体験してみることで、物事の見え方が変わってくることってありますよね。それはスポーツやレクリエーションも、仕事の現場も、変わらない事実だと思います。

ボッチャは障がい者スポーツとして考案され、そこから広く社会に拡がりつつあるパラリンピックの正式種目。一度体験すれば、その奥深さに誰もが虜に!?

 

私も初めてのボッチャ体験だったのですが、やっぱり実際に体験してみることで、物事の見え方が変わってくることってありますよね。それはスポーツやレクリエーションも、仕事の現場も同様だと思います。

ただ、こうした体験のハードルをいかに下げて、どれだけ多くの方に実体験していただくか——。すごく重要なテーマだと思うのですが、今野さんはこの辺りどう思われますか。

 

今野: 今回のスペシャルウィークでも、コミュニティーの皆さんが本当にいろいろと企画を考えて実行してくれています。村澤さんが言われたように、実際に一緒に働いてみる経験を持つと、「あ、そうなのか」だったり「自分がやれることとしてこういうこともあるな」だったりと、いろんな気づきも生まれます。

だからこそ、ひとりでも多くの社員のみなさんに、そうした経験を持っていただける機会があると良いと思っています。

トップダウン的に参加してもらうというよりは、自発的に参加することで企業文化としていきたいと思います。

もちろん、日々忙しくて時間が取れないなど、いろいろな事情や考えがあると思います。「誰かが推進してくれている」ではなく、まずは体験し知ってみることから始めることで、その後の行動につながっていくと感じています。

先日開催されたACEフォーラム2024の基調講演で、だれもが楽しめる新しいスポーツを開発している「世界ゆるスポーツ協会」代表理事の澤田智洋さんの話を聞かせていただきました。そこでは「ゆるスポーツ」や「ゆる楽器」のことを教えていただきましたが、そういう少しカジュアルな場・形で体験したりご一緒したりする機会を作っていくことの大切さを改めて学びました。

 

● 知識を持つことも大事。実際に触れ合う中で感じていくことも大切

 

村澤: ローランズの福寿代表が先日言われていたのは、「私たちは障がいや共生に興味のない『無関心層』にむしろこだわっている」というお話でした。そうした方がたが、無意識のうちに体験していて、気づいたら関わりを持ち続け、「当たり前」へと近づいていく——。そんな理想の形に向け、我われも接点の数を増やしていく活動を続けていこうと思います

最後に、先ほど尊敬する先輩とのお話をされていた内藤さんにも、関わり合いの増やし方や当たり前に近づく方法について伺えればと思いますが、いかがでしょうか。

 

内藤: これは私の個人的な経験でしかなく、特定の人にだけに当てはまる部分も多々あるのかもしれません。でも「本人はそれほど気にされていない」というケースもあるのではないかと思います。

知識を持つことも大事ですが、実際に触れ合う中で必要なものを感じていくことも大切かと思います。さりげなく気遣ってあげるくらいでちょうどいい——。そんな要素も少なからずあるのではないでしょうか。本当に困る部分は、付き合っていくうちに分かりますから。

そうした思いをもとに、「配慮が必要なら遠慮なく言ってくださいね。もちろんそれ以外でも、何かあればいつでもなんでも言ってください」と伝える。そんなふうに、考え過ぎず、尊重する気持ちを持ち、ただただ普通に接することも大切ではないかとも思います。

 

村澤: 互い肩の力を抜いて、リスペクトし合う関係を目指そうということですね。

お二方、そして全体司会を務めていただいた河村さん、そしてご参加いただいた皆さんも、本当にありがとうございました。

 

来年も、障がいの有無にかかわらず誰もが自分らしく生き、活躍できる会社および社会の実現に向けて、取り組みの苦しい部分や良い点、先へと進むための光を見出した点などを社内外に発信していこうと思います。

敷居をどれだけ下げられるか試行錯誤や模索を積み重ねながら、「接点」と「実践」を忘れることなく、皆様と一緒に歩んでいきたいと切に願っています。

引き続きご支援をよろしくお願いいたします。

 

 TEXT 八木橋パチ

 

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