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「みんなみんなみんな、咲け」ローランズ代表 福寿満希さん講演&トークセッション(後編)[PwDA+クロス11]

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日本IBMは、毎年12月初旬の障害者基本法による障害者週間に重ねて、「PwDA+ウィーク」を開催しています(「PwDA+」は「People with Diverse Abilities Plus Ally(多様な能力を持つ人たちと、味方として当事者を支援する人であるアライ)」の意)。

今年は11月29日の前夜祭「PwDA+コミュニティー Happy Friday」から12月9日の「PwDA+ラウンドテーブル」まで、楽しくそして真面目に、障がいがある社員が輝いて働ける会社・社会に関するラインアップで多様なイベントを開催しました。

 

12月6日のランチタイムには、障がい者雇用に新たな風を吹かし、さらに土壌整備と適切な水やりでその動きを広く日本全土へと広げようと活動されている、株式会社ローランズ代表、兼ウィズダイバーシティLLP発起人の福寿満希さんをIBM箱崎事業所にお招きし、講演とトークセッションを行っていただきました。

当記事では前後編に分けて、ローランズさんの花を中心とした活動、および東京都の支援を受けながら進めている新たな障がい者雇用の取り組みについて、福寿さんのお話をご紹介しています。

前編の講演内容紹介に続き、後編ではトークセッションの模様をお伝えします(聞き手: 八木橋パチ)。

福寿 満希(ふくじゅ・みづき)
株式会社ローランズ 代表取締役 / 一般社団法人ローランズプラス代表理事 / ウィズダイバーシティ有限責任事業組合(LLP)発起人
有限責任事業組合(LLP:Limited Liability Partnership)は、出資者全員が有限責任を負い、経営の柔軟性と構成員課税が適用される法人格のない組織形態

 

目次
前編

  • みんなみんなみんな、咲け | 子どもたちの働く夢を叶える
  • スタッフ80名の7割が、障がいや難病がある仲間たち
  • チーム雇用 | 一社で悩むのではなく一緒に

後編


 

● 花を咲かせることは、人を咲かせることに近い

パチ: 福寿さん、素晴らしい講演をありがとうございました。実は日曜日に原宿のお店に行ってきました。カフェで働いていた方も、フラワーアレンジメントをされていた方たちも、みんなイキイキとそしてプロフェッショナルに働かれている姿がすてきでした。

それではここからはいくつか質問させていただきますね。まずは福寿さんの過去から。確か、学生時代はバリバリのアスリートで、プロ・テニスプレイヤーを目指されていたんですよね。

 

福寿: 高校時代は硬式テニスをやっていて、インターハイにも出場していました。学生時代の友人に会うと、当時との印象の違いにびっくりされます(笑)。

大学進学後もテニスを続けたのですが、周囲にはオリンピックにも出場したというような、

すでにすごい実績を出されている選手たちしか残っていなくて…。

自分が強みだと思っていたものが崩れ去りました。それで、「じゃあ、私ができることってなんなんだろう」ってすごく考えたし、模索しましたね。そしていろんなことがありつつ、結局自分が次に見つけた「種目」がお花屋さんだった。そんな感じです。

日本IBM 箱崎事業所を会場に、IBM社内オンライン配信も実施

 

パチ: 「種目」ですか(笑)。でもプロスポーツ選手って99,9パーセントの人がそこまで辿り着けないものなので、「じゃあそこからどうすのるか」はすごく大切ですよね。福寿さんはそこでフローリストとなり、さらにそこから先に向かっている…。本当にすごいことです。

さて2020年からのコロナ禍では、多くの人が自分自身を見つめ、どうすれば本当に大切な自分の時間や「余白」を見つけるのかを模索しました。そんな中、花や自然との関わりの時間にそれを見出した方も多いですよね。

 

福寿: そうですよね。私自身の経験もその話にもつながるところが多く、現在行っている事業との関連性の高さも感じています。

植物を育てるのって、他者を支援して応援していくことにすごく近いと感じているんです。適切な土のもと育っていけるようにすること、きちんと水をあげるもののあげすぎないこと、風が通るように間引いてあげること…。そんなふうに9つの大事なポイントがあるのですが、その一つひとつが、人が花咲いていくことにすごく重なるんです。

その人に合った環境を考えて作っていくことが大切で、土や水や栄養は、人にとっての環境や情報だと思います。多過ぎても少な過ぎてもよくないんだと思いますね。

 

● 押しつけにならないように——。関心のない方たちを取り込んでいく

パチ: 優しさは必要だけれど、甘やかしすぎてはいけない。でもしっかりした支援は必要。そういうことですね。

次のテーマとなりますが、障がいのある方と一緒に働く上での工夫やアドバイスをIBMに対していただけないでしょうか。

 

福寿: アドバイスというのはおこがましいです。IBMさまの活動を見聞きして、ここまで積極的に障がいのある方たちの働きやすさを考え、アライ宣言(*)などの仲間の存在を可視化しサポートしている企業はとても珍しいし、素晴らしいですね。まずはそれをお伝えさせてください。

*PwDA+ ALLY宣言の7つの宣言項目

 

福寿: その上で、難しさという点では、働き方の中心に「デジタル」があると思うのでそこがポイントとなるかもしれません。直接的な接点の数や形が限られてしまいますから。

 

パチ: 接点というのは、仕事を通じての当事者の方たちとの接点という意味でしょうか。

 

福寿: そうです。接点の管理やデザインと言ってもいいかもしれません。

私たちは、一緒に働くことをいかに自然に浸透させていくかということを常に考えているんです。

サービス設計でこだわっているのは、障がいや多様性、共生ということに興味のない人たちに、いかに届けるのかということ。それが大きなテーマです。意識を持って取り組んでいる方たちにとっては当たり前となっているのかもしれない、でも、いかに関心のない方たちを取り込んでいけるか。押しつけのようになると良くないと思っていて。

仕事であるとかプロジェクトであるとか、そうしたものに関わっている中で「すてきな商品ができた」とか「素晴らしいサービスが届けられた」とか、そういう結果やそれに向かう努力の中で、気がついたら障がいであるとか雇用であるとか、そうしたものに関わっている。——企業へと推進する上では、そんな状態を作ることがすごく大事だなと思っています。

 

パチ: 講演では雇用率の話もされていましたが、人口比で考えたら2.5%でも決して多くはないですよね。そして「数字は達成されているけれど、当事者との接点はまったくないままです…」という職場もありそうです。

先ほどのウィズダイバーシティLLPですが、今後はどうような展開をしていくのか、あるいはしたいのかについて、もう少し教えてください。

 

福寿: 現在は東京都さんと共に進めていて、そこに山梨と大阪の企業さんもそれぞれ1社ずつご参加いただいています。でも、この取り組みが東京都だけで終わってしまってはいけないなと思っていて。

東京にはビジネスが集中しているのでスタート地点としてはよいのですが、障がい者雇用全体を考えれば、働き口の問題がより大きいのは地方です。また中小企業ほど取り組みが進んでいないという現状もあります。

ですから、こうした取り組みが東京だけで終わってしまうことがないよう、47都道府県すべてに展開したいと考えています。

 

● IBMにはもっとどんどん発信して、多くの企業を牽引してほしい

パチ: 絶対に必要ですよね。生活面などの事情から、実家や実家近くで暮らすことを望まれている当事者の方や、ご家族の方が多いという話も頻繁に耳にしています。「47都道府県に」という考え、強く共感します。広げたいですね!

最後に一つお願いがあります。日本IBMは先日、PwDAの取り組みについての報告・紹介をする記事を出しました。

日本IBMによるPwDA(障がい者の活躍)への取り組み

 

パチ: 記事内では、PwDAアライ宣言であるとか、PwDA+ Week 2024というイベント週間のことであるとか、アライ向けのジャーニーを解説した資料などをご紹介しています

長年、このフィールドで活躍されている福寿さんの目にはどのように映りますか? アドバイスやエールをいただけると嬉しいのですが。

 

福寿: いや、本当にすごい、素晴らしいという言葉しか出ないですね。アライ宣言などの素晴らしい実践がたくさんあり、私がアドバイスするのではなく、むしろこうした取り組みから学ばせてもらいたいくらいです。

先ほど、接点の数や多様さの話をしましたが、繰り返し伝えていくこと、そして実行していくということが接点につながっていきます。

そもそも接点がなければ始まらないし、繰り返すことで日常へと近づいていく。そして最終的には、障がいのある方と一緒に働くことが当たり前になっていくということだと思います。

 

パチ: 一緒に働くことが当たり前の社会。

 

福寿: そうです。その最終形に辿り着くには、もしかしたら何十年もかかるのかもしれません。でも、そこを目指して、IBMではこうした接点を作る取り組みを社内で行っているということを、もっともっと社外に向けても発信してもらえたらなって思いますね。

それが、これから始める企業様が行動を起こす際の大きな参考になります。IBM様にはぜひどんどん取り組みを公開していただきたいです。お願いします。多くの企業がそこを目指すのを牽引してください。

 

パチ: めちゃくちゃ嬉しい言葉をありがとうございます!

残念ながらもうお時間となってしまいましたので、最後に一言お願いします。

 

福寿: 私たちが大切にしているのは、共に働く仲間の違いを歓迎しあうことです。それは働く当事者同士だけではなく、会社同士の違いも歓迎しあおうということ。そうやって互いの違いを歓迎しあっていけば、「なぜ今、IBMのような企業と福祉事業会社は分断しているんだろう?」と、多くの方たちが一緒になって考えていけるようになると思うんです。

私たちローランズは、いつか、スウェーデンで2万人の障がい者雇用を生み出している「サムハル」という会社のようになれたらいいなと思っています。

参考 | 2万2000人強の障害者を雇用するサムハル:日経ビジネス電子版

 

福寿: 全国の雇用対象となる障がい者数365万人全員の雇用が叶う社会を目指して、これからも活動していきますので、ぜひこれからも皆さん応援をよろしくお願いします。

 

 TEXT 八木橋パチ

 

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