IBM Partner Ecosystem
新しい社会経済の在り方を考え、真の社会課題解決を実現するビジネス構築ワークショップ
2024年12月20日
カテゴリー IBM Partner Ecosystem
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「あらゆるビジネスは、なんらかの課題を解決するために存在している」——。誰しも一度くらい、この言葉を聞いたことがあるだろう。
だが一切の留保なしで、この言葉を掛け値なしに信じることができる人は、一体どれくらいいるだろうか?
たしかに、ビジネスは誰かの、何らかの課題を解決しているのだろう。あるいは、少なくとも解決に近づけているだろう。だが同時に、その解決手段である製品やサービス、そしてその基盤となっているテクノロジーは、解決以上に大きな問題を生み出していないだろうか。
ディープフェイク技術、自律型兵器、高度な監視技術など、悪用を想像しやすいものばかりではない。生成AI、遺伝子編集技術、地球工学など、いずれのテクノロジーも高い倫理性と慎重な議論、そしてそれを適切、かつ的確に伝える公開性や透明性が欠かせず、それなくしては「解決」は独りよがりに過ぎず、そのビジネス、製品、サービスは「混迷」を増やし、自らはもちろん周囲にも「危機」をもたらすであろうことは想像に難くない。
欲しいのは、真の課題解決。
未来へと向かう足元を照らす、正真正銘の社会課題解決ビジネス。
——12月4日、そんな思いを抱えた20名が、富士箱根伊豆国立公園内にて55年の歴史を有する、日本アイ・ビー・エムの宿泊型研修施設「天城ホームステッド」に集い、<新しい社会経済の在り方を考え、真の社会課題解決を実現するビジネスを構築するための一泊二日のワークショップ>を行った。
複雑で厄介な社会課題に向き合い続けるには、冷静さと情熱、胆力と繊細さが求められる。
皆が持ち寄った体験や知見をどのように共有するのか。そこからどんなアプローチで「こと」をスタートしようとするのか——。ここからはその模様を、筆者の主観的な視点から紹介する。
会場に到着してまず行われたのが、「社会課題解決ビジネスについての各社・各者の考え方共有セッション」。
通常、こうした集まりでは数名だけが細かく自己紹介をし、あとは簡単にとなりがちだが、この日は全員が5-10分ほどの自己紹介を行い、企業や組織の中での役割の話にとどまらず、ご自身の経験からの気づきや興味関心分野へのつながりなどについてお話しいただいた。
その後、参加者は3つのグループに分かれ、その時点における取り組みたい社会課題について伝え合い、参加者それぞれがその課題を解きたいと思う理由や、そこに至る個人的な思いや経験について深掘りをしていった。
「一人の人間としての想い」と「ロジックだけではなく感性を」——。ポイントをそこに置いて話し合いを続けたのには大きな理由がある。
「社会的価値と経済的価値はトレードオフで、その両立など夢物語」と捉えるビジネスパーソンがまだまだ主流の中で、社会性と事業性を同期させたビジネスを追求し続けるには、要領の良さや理論、合理性や器用さだけでは持続することは難しい。自らから湧きでる衝動や胆力、社内外の仲間からの支援や広範囲の共創などがなければ、まるで歯が立たないというケースも少なくないからだ。
ここで、皆さんの話を聞きながら、筆者の頭に浮かんでいたことを記載しておこう。
- 企業や組織の成長は「結果」であり、それが目的化してはならない。
- 「誰かを犠牲にしてはいないか?」——この問いを常に忘れないように。
- 「売らなければならない」は営利企業の宿命だが、「売れれば良いというものではない」も大前提である。
時はあっという間に過ぎ、1日目は就寝時間の22時半まで、施設内のあちこちで対話が続いた。
ここからはセッションリーダー山本による講演の一部ご紹介します。
世界の産業界には今、古くは日本社会が得意としていた、「社会課題解決ビジネスを通じて企業価値を向上していく」という考え方が広がり続けています。
背景にあるのは、「社会課題を解決する企業でなければ存続できない(社会から退場を命ぜられる)」という強い危機感です。
そしてここ日本でも、大企業を中心に多くの企業がそのパーパスやミッションに「社会課題の解決」や「持続可能性への寄与」を謳っています。
ところが実際の企業活動に目をやれば、人口減少や少子高齢化、インフラの老朽化、所得・地域・世代・情報と拡がる各種格差など、複雑で厄介な社会課題が身の回りに溢れている「社会課題先進国」であるにも関わらず、社会課題や持続可能性に関する取り組みは「本業のビジネス」とは結びついておらず、CSRや社会貢献の範囲内で行っている企業が多いのが日本の実情です。
「世の中にとって良いことをしたい、社会に貢献したい、人を幸せにしたい」という想いを根源的に持つ人の方が圧倒的に多いのにも関わらず、そうしたビジネスが主流になっていかない理由は何でしょうか。
それは我われが、とても強固なシステムの中に閉じ込められてきたからです。そのシステムとは『資本主義』——。ただし、目先の利益が過剰に重視される『行き過ぎた』資本主義です。
日本に必要なのは、現在の資本主義ではなく、個人やチームの努力の結果がしっかりと報われる『私有財産制』と、イノベーションが起きやすく需要と供給のマッチングも進む『自由市場経済』という、その強みをしっかりと生かししつつ、社会を良い方向へと力強くドライブする「経世済民の基盤となる資本主義」ではないでしょうか。そして今こそ、そのためのリ・デザインのときではないでしょうか。
そのために今から、まざまな社会課題の原因を増やし続ける負の側面が大きくなり過ぎてしまった資本主義の構造分析を行い、そこから、「お金の正体」「サステナビリティーにまつわる事実と予測」「経済と幸福、」つまり、人の社会的、経済的、環境的なウェル・ビーイングについての関係を探っていきましょう。
その後、社会課題解決ビジネスの事例をいくつか見ていくことで、社会性と事業性を両立するビジネスをどのように一緒に創っていけるかを、より解像度高く考えていきましょう。
山本のセッションを中心としたインプットとたっぷりの対話を終え、2日目は「頭での理解」から「手を使ったワーク」へと切り替えられ、ビジョンを描くワークと下山後アクションプランの策定〜発表が行われた。
参加者が書いた「ビジョン」から、いくつかをピックアップして羅列する。
- 社会課題解決の基盤となる「新しいFACTFULNESS(ファクトフルネス) 」
- well-beingにつながる地域活性化
- ゴミ・ムダを資源・価値へと変えるマッチングシステム/サーキュラービジネス
- デジタルヒューマン[先生] [店主] [ドクター] [シェフ] [警備員] [看護師] [政治家] [……]
- 経済格差から生まれる教育格差の減少・撤廃
- 貢献経済社会の確立
- カーボンニュートラル・アイランド
- インターナル・ダイバーシティー & 新しいゲマインシャフト
ここで、世の中にありがちな、残念な現実に言及しておこう。
志高い取り組みにほどありがちなのが「頭でっかち尻つぼみ」。キックオフが最も盛り上がり、そこからどんどんフェードアウトしていくというケースだ。今回の取り組みは、はたしてそうならずに済むのだろうか?
もちろん、たしかなことは言えない。誰だって最初から「頭でっかち」にしようとは思っていない。ただ、そうなってしまう理由の多くは、視線の先が遠い未来の壮大な社会へと向き過ぎてしまうことにある。
今回の取り組みでは、すでに2025年の開催枠組みを次々と決定している。そのポイントは「日程と場所と担当者は早めに決定する。そして取り組む社会課題は絞り過ぎない」。
狙いは、そのときどきで、「最初の一歩」をスタートできる状態に近く、かつ社会的インパクトの質と、インパクト範囲と価値を広げられるものから、賛同する同志たちとともに進めていくことにある。
取り組み参画にご興味をお持ちの方は、ぜひご一報いただきたい。
TEXT 八木橋パチ
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