SPSS Modeler ヒモトク

データ分析者達の教訓 #19- ちゃぶ台返しを受けないため「最初に」現場と握っておく

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皆さんこんにちはIBM の斉藤です。IBM Data&AIでデータサイエンスTech Salesをしています。

このリレー連載ブログはSPSS Modelerの実際のユーザーで第一線で活躍するデータ分析者に、データ活用を進める上で忘れられない教訓をインタビュー形式で伺い、これからデータ分析に取り組む皆様に参考にしていただくことを目的にしています。

 

今回インタビューをお願いしたデータ分析者は

私どもSPSSチームにとって心強いパートナーであるAITの西村様です。AIT様は2011年からSPSSを取り扱いを開始され、長くユーザー様に製品提供のみならず、トレーニング、伴走支援、コンサルティング、システム開発の実績をお持ちで私自身も日頃からアドバイスをいただいています。今回は西村様に苦い経験と教訓を伺います。

 

西村 剛 様

株式会社AIT

開発事業本部
ソリューション戦略第2部

 

-日頃のデータ活用業務について教えてください

私たちの部門は、SPSSやBIツールなどを用いて企業や官公庁のお客様にデータ活用業務の支援をしています。

具体的には、分析ツールのトレーニング、分析基盤環境の構築や分析用データベースの構築、周辺開発などを行っています。また、すぐに分析結果を求めているお客様向けのコンサルティングサービスや、お客様自身で分析業務を身につけるためのデータサイエンティスト育成プログラムを提供しています。

AITは、経験が豊富なコンサルタントや、データエンジニアが多数在籍しており、お客様の用途に応じた柔軟なサービスに定評があると自負しております。

-データ活用業務で味わった苦い経験を教えてください

まだ駆け出しの私がお客様のデータをお借りして分析を任されたときの話です。そのプロジェクトは主にお客様のデータ担当者が全体設計とデータ準備をして私が予測モデル作成を担当する二人三脚構成でした。

我ながら上出来と思える精度の高いモデルが完成し、実装する提案を現場の方にしたところ「このモデルはそのままでは使えないね」と一蹴される結果に。「統計的に有意かもしれないが自分たち現場の経験から違和感を覚える」というのが理由でした。

それを受けて急遽、休日を返上し、現場の担当者の知見をお借りしながら、多少精度が落ちても、お客様に納得が行くモデル(腹落ちするモデル)、を何度も作り直しました。その時の苦労はこれからも忘れることはないと思います。

 

-その苦い経験から得られた教訓はなんでしょうか

分析支援業務を請け負うときには「分析結果を享受する現場(ドメイン知識がある人)、データの所在が分かる人に最初から参画してもらうこと」をお客様に強く希望するようにしています。

とりわけ、現場の介入なく実施すると、出来たモデルを持って行っても「既にそんなことは分かっていた」や「運用上現実的でない」と厳しい指摘を受け、先のケースのようにちゃぶ台返しにあってしまうからです。そのようにならないためにも当初から現場の意見に耳を傾け、業務での実装を想定したモデル作成に取り組むのが成功するためのポイントです。

またモデルは作成して終わりではありません。精度が下がってきたときに、現行モデルを修正していく必要があります。そのためには、お客様内で現行モデルの中身を理解し、継承していく人が必要です。SPSS Modelerでは専門的な統計知識やプログラミング知識がない人でも、モデルを作成・運用できることが強みだと考えております。

 

-これからのデータ活用領域でのチャレンジについて教えてください

昨年2023年は生成系AI元年と称されました。生成系AIは第5次産業革命とも呼ばれ、データ分析を生業にする私たちも取り組まなければならない領域だと思っております。一方で生成系AIは、ハルシネーションや安全性の問題、著作権の問題があり、現時点では期待値が過度に上回っている印象があります。
AITではIBM様と一緒にwatsonxを利用した生成系AI活用に積極的に取り組みを始めています。watsonx.aiのみならず、AIを利用するための環境をwatsonx.dataで構築できるよう連携を前提に提案活動をしています。今までのSPSSを利用した構造化データ分析で得た知見や経験を活かしながら、お客様のビジネス課題を一緒に考え、テキストや音声、画像などのデータを交えて、生成系AIの利活用に幅を拡げられるようにチャレンジして参ります。

 

インタビューのお礼と感想

西村様、お話をいただきありがとうございます。

さて皆様、いかがでしたか?

西村様が触れた通り現場を良く理解せずITの文脈で予測モデルを提供しても「ブラックボックス」「業務要件に合わない」といった反発を受けてしまうのは私自身も少なからず経験があります。

AIや機械学習モデルの力試しに終始した結果これまで多くのPoCが投資価値なしと判断されてきた(勿体無い!)ことからも最初に現場と信頼関係を構築してデータ活用するのが絶対条件なのだと改めて思いました。

さて次回は日本生命の佐藤様に「分析プロジェクトはスピードが命。鉄もデータも熱いうちに打て」を伺います。お楽しみに。

 

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→これまでのSPSS Modelerブログ連載のバックナンバーはこちらから

→SPSS Modelerノードリファレンス(機能解説)はこちらから

→ SPSS Modeler 逆引きストリーム集(データ加工)

 

 

 

斉藤 明日香

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部 watsonx事業部
Data & AI 第一テクニカルセールス
  

 

 

 

 

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