IBM Partner Ecosystem
イノベーションを起こす方法をイノベーションしなければならない(From IBVレポート「エコシステムとオープン・イノベーション」より)
2024年04月11日
カテゴリー Client Engineering | IBM Data and AI | IBM Partner Ecosystem
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不確実性が増し、変化が絶え間なく続く時代には「イノベーション疲れ」に陥るリスクがある。誰もがイノベーションを起こしていると主張するならば、結局、誰もイノベーション(革新的なこと)を起こしてなどいないことになるだろう
https://www.ibm.com/thought-leadership/institute-business-value/jp-ja/report/ecosystems-open-innovation
■ 鍵となるのはコラボレーション
従来の「閉ざされた」イノベーションはもはや通用しない時代になった。パートナーシップを基盤とする現在のエコシステム経済において、ビジネスを成長させるために選択すべき手段はオープン・イノベーションである。
コラボレーションと共創(co-creation)を基盤としてオープン・イノベーションを目指す組織は至る所に増えており、オープン・イノベーションはビジネスの成長にとって重要であると答えた経営層は84%だった。 *1
その直観に間違いはない。IBM Institute for Business Value(IBM IBV)の調査によると、オープン・イノベーションを先駆的に活用している企業は収益成長率が他の企業を59%上回っていた。 *2
■ オープン・イノベーションのオペレーション・モデル
企業がオープン・イノベーションの機会を十分に活かしきれていないのはなぜだろうか。
確かにオープン・イノベーションを推進するには多くの課題を乗り越えなければならない。サイバーセキュリティー上の不安から、技術的な障壁、敏しょう性の不足に至るまで、さまざまな課題がエコシステム・パートナーとのイノベーション活動の妨げとなっている。
実際にイノベーションのために組織内部を調整し、部門間の壁を解消することは、想像するよりもはるかに困難だ。さらに社外のパートナーをメンバーに加え、その能力を共通の目標に向けて導くことは、気が遠くなるほど厄介な作業である。 *3
“知識が豊富な世界でも、すべての優秀な人があなたのために働いてくれるわけではない。だから企業は、外部の知識にアクセスしてそれを活用しながら、同時に、社内の知見をいち早く社外に開放しなくてはならない”
■ オープン・イノベーションに望む成果
企業が直面するこうした課題のうち幾つかは、生成AIによって克服できる。実際に、多くの企業がオープン・イノベーションのツールとして生成AIを評価やパイロット運用に活用している。
それは生成AIが、エコシステム内のコラボレーションを向上させることができるからだ。 *4
もちろん、生成AIだけではオープン・イノベーションは実現できない。
テクノロジーが指数関数的に進化していく現在では、組織はエコシステム・パートナーとの協力で、どのようなビジネス価値をイノベーションから引き出すことができるのかを見極め、それを促進するために何が必要かを判断しなければならない。
IBM IBVはAPQC(米国生産性品質センター)と共同で成熟度モデルを開発した。主要なオープン・イノベーション能力の成熟度が、どの程度イノベーション・プロセスの効率化を進め、ビジネス成果を向上させるのかを分析したのだ。
このモデルを「Ecosystem Enabled Innovation Maturity Model(EEIMM:エコシステム活用型イノベーション成熟度モデル)」と名付け、1,000社以上の企業を対象に試験を行った。
結果は目を見張るものだった。オープン・イノベーションの成熟度が高い企業は、ビジネス成果が成熟度の低い企業のパフォーマンスを大幅に上回ったのである。例えば、収益成長率で同業他社を上回っている割合は3.3倍、収益性で上回っている割合は2.7倍にも及んだ。
■ オープン・イノベーションと共創(co-creation)によって優位に立つ
エコシステム経済は主にコラボレーションと共創(co-creation)を促進するオープン・テクノロジーやオープン・スタンダードによって可能になった。
これらのオープン・イノベーションやエコシステムへ、さまざまな組織が関与できるようになったのは、相互運用可能なテクノロジーと標準言語の共有のおかげである。
・ ハイブリッドクラウド
エコシステム経済におけるオープン・イノベーションを技術的に支える基盤はハイブリッドクラウドであり、これによってデータやワークロードを、システムやクラウド、壁のある部門や組織間で共有できるようになった。またハイブリッドクラウドにより、パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミスの3つを統合することで、これらのオーケストレーションや管理、アプリケーションのポータビリティー(可搬性)を実現できるようになった。
この統合された環境は、データへアクセスしやすく、分析が容易であり、オープン・イノベーションで価値を高めようとする組織にとって大きなメリットだ。オープン・スタンダードと相互運用性は、システムや企業の壁を越えて、組織同士を接続、統合し、協力を可能にする。
これらはエコシステムとの連携を可能にするテクノロジーの極めて重要な特長である。
・ データと生成AI
エコシステムは、さまざまなパートナーや利害関係者のデータ、インサイト、テクノロジーを活用する機会を開くとともに、価値提案に欠かせないAI機能を思いどおりに制御することを可能にする。
しかし、この新たな能力を開花させるためには、パートナーと利害関係者とともに、機能や知識を共有するための環境を整え、ガバナンスを整備することが必要である。
データと生成AIを安全で倫理にかなった方法で使用するためのガードレールについて、関係者から理解を得ることは、基本的な出発点である。
こうした取り組みは、より広範な社会の指針、法律、規制に代わるものではないが、エコシステム独自の原則として効果的なコラボレーションのためには必須である。
このエコシステム独自の基本原則は、共通するデータ・ガバナンスやテクノロジーの相互運用性を伴わなければならず、それは相互に価値の創造や価値の獲得をする上での条件である。
共通の基準がなければ、相互の信頼を得られないのは言うまでもなく、生成AI機能の開発に必要なコラボレーションや共創(co-creation)を行うことはほとんど不可能である。
・ セキュリティー
オープン・イノベーションを育て、成功させるためには、セキュリティーこそが鍵を握っている。セキュリティーの新たな脅威に目を向け、その対策を根本から見直さない限り、何年もの歳月をかけて、何十億ドルもの資金を投じて築き上げたエコシステムも、一瞬で崩壊するかもしれない。
IBM IBVの最新調査によると、堅牢なセキュリティー機能をエコシステムまで拡大し、防御を固めている組織は、パートナーとより深く、価値の高い関係を築き、イノベーションを促進するなど、さまざまなビジネス上およびオペレーション上の成果を上げていることが明らかになっている。 *5
今後成功する組織は、より高度な機能を利用してサイバー・リスクを管理しながら、パートナーを取りまとめ、効率化、迅速化、専門化を推し進め、規模を拡大していくだろう。 これらの領域の効果はすべて、よりオープンでレジリエントな組織が生む恩恵である。
*1 Lipp, Anthony, Anthony Marshall, and Jacob Dencik. Open the door to open innovation: Realizing the value of ecosystem collaboration. IBM Institute of Business Value. January 2022.
https://www.ibm.com/thought-leadership/institute-business-value/en-us/report/open-innovation
*2 同上
*3 Lipp, Anthony, Anthony Marshall, and Jacob Dencik. “Open innovation: a growth
powerhouse when integrated with dynamic digital technologies.” Strategy & Leadership. December 2021.
https://doi.org/10.1108/SL-11-2021-0117
*4 Generative AI and open innovation pulse survey, IBM Institute for Business Value, 2023
*5 McCurdy, Chris, Shlomi Kramer, Gerald Parham, and Jacob Dencik. Prosper in the cyber economy: Rethinking cyber risk for business transformation. IBM Institute for Business Value. November 2022.
https://ibm.co/security-cyber-economy
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