Client Engineering
こころが震えたあのとき(藤井涼平) – AI Engineer、Client Engineering事業部
2023年08月24日
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喜び、悲しみ、怒り…。OECD(経済協力開発機構)の調査によれば、日本人の年平均実労働時間は約1,600時間。その中で、私たちはどれだけこころを震わせて働いているでしょうか。人は、誰かの心の震えを目にしたとき、自分の心も動くのではないでしょうか?
「あなたのこころが打ち震えたときのこと、教えてください。」
Client Engineering事業部でAI Engineerとして働く藤井涼平さんにお話を伺いました。
<もくじ>
- 藤井さんが心の震えを感じるときとは
- データサイエンティストからAI Engineerへ
- 「このやり方でいいんだ」| 喜びの震え
- 「やるしかない、やるでしょ!」 | 共創と共感
- 共創メンバー 田中克典からの一言
1. 藤井さんが心の震えを感じるときとは
— ご自身は「心震えやすい」方だと思いますか?
心が震えやすいか? …そうですね。とくに嬉しいときですかね。嬉しがりやすい方かもしれませんね。怒りとかしんどさで震えることももちろんありますけど(笑)
そう語る藤井さんは、もの腰の柔らかさと「シュッとした佇まい」という言葉を使いたくなる理知的な雰囲気を漂わせている人だ。
そんな藤井さんが心の震えを感じるのは、どんなときだろう?
僕が所属している IBMテクノロジーのプリセールスの役割を担っている「Client Engineering(CE: クライアント・エンジニアリング)」という部門に紐付けて言えば、やはりプロジェクトをビジネス案件として後続チームにバトンタッチできたときです。
お客様の期待に十分応え、僕らと一緒の活動に満足していただき、そしてさらにIBMとの関係を深めて課題解決に取り組もうとご判断いただいたわけですから。それはとても嬉しいです。
ただ、もう少し細かく見ていくと、プロジェクトの中でたくさんの震える瞬間がありますね。お客様にデモをお見せして、期待通りだとか期待以上だと言われた瞬間の嬉しさは格別ですし、社内で一緒にやっている仲間からの称賛やねぎらいも特別ですね。
2. データサイエンティストからAI Engineerへ
誰しも、仕事の中で喜びを感じた経験はあるだろう。その喜びが「自分のスキル」に関連するものであれば、喜びもひとしおだ。
藤井さんのスペシャリティについて説明してもらった。
先日、社内の正式な肩書きが「データ・サイエンティスト」から「AI Engineer」に変わったところです。どちらもまだ多くの人にとってあまりなじみない職種ですよね。私たちCEの活動全体から簡単に説明させてもらいますね。その方が分かりやすいと思うので。
CEのメインミッションは、1〜3カ月という短いスパンで、実際に動くMVP(Minimum Viable Product: 価値提供できる最小限のプロダクト)とともにお客様が持つ課題に対する解決策を提供することです。
典型的なチーム編成として、お客様の課題を深掘りして、本当のニーズを見つけ出すためのお客様とのワークショップなどを行うイノベーション・デザイナーと、特定業界とテクノロジーの動向などに詳しくプロジェクトをリードするビジネス・テクノロジーリーダー、そして開発メンバーとも呼ばれるテクノロジー・エンジニアとデータサイエンティストがいます。
CEのデータサイエンティストはデータとAIに関するスペシャリストで、IBM製品はもちろんですし、それ以外にもこの領域の最新動向やユースケース、そして実装知識と経験を持っている人たちです。
実際に大量のデータを分析・解析することもありますが、それ以上にデータ活用の方法や施策策定、データを用いた意思決定や行動変容のためのアドバイスなどをすることが多いですね。
最近はOpenAI社のChatGPTが爆発的な広がりを見せたこともあり、より信頼度の高いAIを用いた新規ビジネスやサービスをスタートできないだろうかというお問合せをいただくことが増えました。
そうした声に応えていくために、IBMもwatsonxという新しいサービスブランドをスタートし、生成AIに特化した「AI Engineer」というスペシャリストチームが組織され、僕もその一員となりました。
3. 「このやり方でいいんだ」| 喜びの震え
データサイエンティストとしてIBMに入社して2年。AI Engineerとなった今、藤井さんのもとには「直接指名」で社内の複数部門からプロジェクト参加の打診が届いている。
それではこの2年間で、実際に心が震えた瞬間はどんなときだったのだろうか。
そんなに華々しい話ではないんですけど、パッと最初に思いつくのは、初めて結果を出せた、入社から3カ月くらい過ぎた頃に始まったプロジェクトですね。
自分の価値というか、役割をようやく実感できたプロジェクトで、お客様にも社内の人たちにもすごく喜んでもらえて、「このやり方で良いんだ」と確信が持てて安心できたというのもありましたね。喜びの震えの中には、多分に「ホッとした」もこもっています(笑)。それまで「自分は価値が出せていない」と焦っていましたから。
後から考えると、それまでは「データサイエンティストの仕事」に自ら縛りをかけていたところがあったんです。データ分析やアナリスティックが自身の仕事の中心にあるべきではないかという思い込みがそこにはありました。
でも、このデータ検索・閲覧・取引などを容易にするオンラインサービス構築プロジェクトでは、データサイエンティストだからこそ出せた、利活用に関する自分なりのアイデアを提供できたと感じることができました。
そしてチームをしっかりリードして、デザイン思考からプロトタイプ作成、そこからフィードバックループを回してアジャイルにMVPを作成し、お客様の期待に応えていくという理想的とも言えるプロジェクトの実践ができたんじゃないでしょうか。チームワークもとても良かったです。
4. 「やるしかない、やるでしょ!」 | 共創と共感
もう1つは、とある企業のデータ分析基盤構築プロジェクトですね。
こちらは、オンプレミスやマルチクラウドなどの複数環境に点在するデータをガバナンスを効かした状態で管理し、社員個々がセルフサービスでもっとデータ利活用をできるようにしたいというお話を、某大手企業のデータ戦略CoE(センターオブエクセレンス)からいただきました。
「これはまさにIBM Cloud Pak for Data(CP4D)のデータ・ファブリック・アーキテクチャーと技術のためにあるようなお話」ということで、超特急でプロジェクトが組まれました。
お客様の熱意の高さも、IBM社内の期待値の高さも、そして僕自身の向上心にも強く響く内容で、正直、タイミング的には自分のワークロードが大変になるのは分かっていましたが、「これはデータサイエンティストの本丸領域。やるしかない、やるでしょ!」と全力投球させていただきました。
最初の1カ月が終わる頃には、お客様が社内で用いているツールの特性や使い方も十分理解できました。イノベーション・デザイナーのサトケイさんこと佐藤 圭一さんが大活躍してくれて、お客様とのワークショップを通じて課題の解像度が大幅に上がりました。僕やIBM Consulting部門も加わり、一緒にお客様の真のニーズに迫ることができました。
お客様が社内で用いているツールの特性や使い方を十分理解した上で、お客様のデータ・ファブリックの利用イメージと、僕らが提供しようとしているもののピントがしっかりと合っていくのを感じました。
夏のお盆休暇を挟み、ユースケース・シナリオ作りとそれに合わせたデモ作成を僕は大急ぎで進めました。
このときは、データ管理者、上司からデータ分析の指示を受けた中堅社員、まだ経験が浅く手の付け方や勘所が分かっていない初心者社員という3つのペルソナに合わせて、それぞれで2〜3個のシナリオを作成しました。
シナリオもデモも、かなり作り込みました。
一例を紹介すると、データ分析・解析作業は、企業全体として見るとかなりの重複作業が発生しています。また、過去の作業から得られたノウハウや知見が共有されないケースが少なからずあります。これを、過去の分析資産を共有できるリポジトリーであるIBM SPSS Collaboration and Deployment Services(CADS)というツールを改良して、従来は見つけづらかったデータを、データ・ファブリックから簡単に呼び出すことができるようにしました。
ここは、CEのテクノロジー・エンジニアの内田 智士さんが大活躍してくれたところです。
このとき僕は、お客様の対象チームに合わせて微調整を加えながら、毎週、新しいシナリオをベースとしたデモを大量に行いました。お客様からその都度フィードバックをいただき、さらに調整を重ねてMVPの精度を上げていきました。
最初の1カ月で共有ビジョンを言語化し、次のひと月でそれを実際に動くもので体感してもらう。およそ2カ月のPoX(Proof of eXperience: 体験実証)期間が終わるときには、お客様にWOW! という体験をお渡しできたと感じました。
力技とは異なる、CEのスタートアップ企業の様なスピード感とテクノロジー集団としてのスマートさ、そして未来展望を踏まえたスケール感を感じていただけたのではないでしょうか。
それからもう一つ、ワンチームで共創を進めていくことにも共感いただけたのではないでしょうか。
5. 共創メンバー 田中克典からの一言
この後、心の震える体験が周囲で増え続けていったと言う藤井さん。
最後に、データ分析基盤構築プロジェクトでコラボレーションしたというIBM Consultingの田中 克典(たなか かつのり)氏に、当時の藤井さんへの印象と、その仕事ぶりに対するメッセージをいただいたので、そちらを紹介する。
そのアウトプットはお客様内部でデータ分析基盤について共通認識をもつための材料・企画となりました。そして本格的な説得材料としてご活用いただけ、IBMビジネスの拡大にもつながっています。このお客様は基盤モデルのビジネス活用について継続して検討されているので、また藤井さんをはじめとするCEの皆さんと一緒に、お客様との共創を進めさせていただきたいです。
TEXT 八木橋パチ
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