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GRI(Global Reporting Initiative)とは何ですか?
2021年11月25日
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Global Reporting Initiative(GRI)は、企業や政府機関などの組織が世界に与える影響を明確に伝えられるようサポートする、国際的な独立非営利団体です。環境、社会、ガバナンス(ESG)の報告を正確に、徹底して行うことは、組織を成長させつつ透明性を維持するために非常に重要な取り組みですが、標準化された方法論がなければ、サステナビリティー・レポートに対する評価を行うのは困難です。
GRIは誰のためのものか?
GRIスタンダードは、サステナビリティー・レポートで最も広く使用されているスタンダードです。現在100か国以上の10,000社を超える報告に使用されており、政府機関、企業、および大小さまざまな組織に適用されています。GRIスタンダードは、低炭素排出への取り組みにおいてネットゼロ排出目標の達成を目指している組織の成果を追跡し、報告するために特に役立ちます。
また、GRIスタンダードはユーザーフレンドリーな形式になっており、ESGレポートやサステナビリティー・レポートに関して、経験やリソースに恵まれていない専門家でもGRIスタンダードを導入できるようにサポートします。組織がスタンダードに「準拠した」報告ができない場合でも(スタンダードに準拠した報告が望ましいですが)、GRIスタンダードを使用してスタンダードを「参照した」報告を行うことができます。このため、GRIスタンダードは、脱炭素化の実現に向けた取り組みにおけるあらゆる段階で、あらゆる規模の組織にとって非常に使いやすいサステナビリティー・レポート作成ツールとなっています。
また、GRIスタンダードには一貫性があり、成果が目に見えやすく成果同士の比較も可能です。標準化された1つの報告「言語」の下で内容を理解することができるため、多様なサステナビリティー要件が存在する複数の地域で活動する多国籍組織にとっても特に重要です。
GRIスタンダードは、組織の影響の透明性を懸念する組織内外のさまざまなステークホルダーにとって有意義であると言えます。こうしたステークホルダーには通常、従業員、規制当局、政策立案者、投資家などが含まれますが、一貫性のある統合版ESGレポートを入手したいと考える理由はそれぞれ多種多様です。
GRIの構成
GRIスタンダードは、「共通スタンダード」、「セクター別スタンダード」、「項目別スタンダード」の3つのセクションに分かれています。3つのスタンダードは相互につながりがあり、モジュール形式のシステムになっています。共通スタンダードはすべての組織に適用されますが、セクター別スタンダードと項目別スタンダードについては、各組織がそれぞれの状況に最も適したスタンダードを選択します。セクター別スタンダードは最近公開されたばかりです(現在公開されているのは1つだけで、さらに3つが開発中です)。
共通スタンダードは以下のように分類されます。
- GRI 1:基礎
- GRI 2:一般開示事項
- GRI 3:マテリアルな項目
GRI 3には、「マテリアルな項目」を特定するための明確なプロセスが記載されています。初めに規定されているのは組織の状況理解で、次に実際の影響と潜在的な影響の特定、それらの影響の重要度の評価、そして報告にあたって最も重要な影響の優先順位付けへと続き、最後に、関連するマテリアルな項目の判定の仕方が記載されています。
項目別スタンダードは、以下のような編成になっています。
- GRI 200シリーズ:経済的項目
- GRI 300シリーズ:環境項目
- GRI 400シリーズ:社会的項目
共通スタンダードは最近改定が加えられ、以前はGRI 100シリーズとして知られていました。2023年以前のレポートでは新旧どちらかのスタンダードが使われていますが、2023年からは新しいスタンダードを適用する必要があります。
このスタンダードでは、組織とその影響に関する報告に透明性を持たせるために必要な指標を指定しており、その指標を「開示事項」といいます。それぞれの項目別スタンダードでは、マネジメント手法に関する開示事項と項目固有の開示事項が定められています。マネジメント手法の開示事項では、組織が重要なトピック、関連する影響、そしてステークホルダーの合理的な期待と関心をどのように管理しているかを調査します。
例えば、GRI 403の労働安全衛生は、「社会的項目」に分類される項目別スタンダードです。このスタンダードには、多くの開示事項があります。
マネジメント手法の開示事項:
- 開示事項403-1:労働安全衛生マネジメントシステム
- 開示事項403-2:労働災害の特定、リスク評価、事故調査
- 開示事項403-3:労働衛生サービス
- 開示事項403-4:労働安全衛生に対する労働者の参加、協議、コミュニケーション
- 開示事項403-5:労働安全衛生に関する労働者研修
- 開示事項403-6:労働者への健康サービス提供
- 開示事項403-7:事業関係に直接関連する労働安全衛生への影響の防止と緩和
項目固有の開示事項:
- 開示事項403-8:労働安全衛生管理システムの対象となる労働者
- 開示事項403-9:業務上での傷害
- 開示事項403-10:業務上での疾病
スタンダードには、各開示事項の要件に加え、最も効果的で完全な説明を作成するためのガイダンスが含まれています。一部の開示事項には、報告に必要な情報を概説する要件、もしくはGRIスタンダードへの準拠方法に関する指示が記載されています。
GRIスタンダードは、組織とそのステークホルダーが、レポートの文脈と、その影響の重要性についての理解を深められるように構成されています。
詳細については、こちらのGRIスタンダードの概要をご覧ください。
GRIの利点
レポート作成が改善されたことで、組織は影響をより適切に測定、開示、管理、理解し、戦略的な機会を特定することができるようになります。
明確で一貫性のあるレポートは、信頼を築きます。組織とコミュニティー、業界、社内の従業員との関係を改善し、長期的な市場価値を高めることが可能になります。投資家からすれば、厳格かつ明確な報告のために、サステナビリティーに関連する組織のリスク・プロファイルの精査がますますはかどるでしょう。
GRIスタンダードを使用したサステナビリティ・レポートの作成によって、将来何に注目すべきかが見えてきます。スタンダードは、最新のフレームワークを反映するために常に見直しが続けられていますが、これは、GRIスタンダードに準拠して作成されたレポート同士が今後も関連性を維持し、過去のレポートや同業界の他組織によるレポートとの比較が簡単にできるようになるということを意味します。
脱炭素化に向けた取り組みに関し、ステークホルダーや投資家の報告要件と透明性に関する条件を満たすためには、世界的に認められた正確なESGレポートが必要です。
2019年には、S&P 500企業の90%がサステナビリティー・レポートを発表しています。規模を問わず世界中の上場企業が、適切な構造を備えたESGレポートを作成する経済的な意義への理解を深めつつあり、GRIはそうしたレポート作成の指針となる適切かつ比較可能なスタンダードを提供しています。
GRIへの報告方法
ESGソフトウェアは、正確で一貫性のある財務仕様に対応したデータを提供するため、GRIレポート作成を支援するツールとして便利に使用できます。これは、温室効果ガス(GHG)排出量の計算など、定量的なデータが必要な環境測定に関するレポートを作成する際に特に役立ちます。温室効果ガスの算定とサステナビリティー・レポートの作成は複雑なプロセスであり、エネルギーに関するリアルタイムおよび過去の正確なデータを入手する必要があります。
情報がさまざまな事業部門にサイロ化されている場合は、GRIレポートの統合が困難になることがあります。また、情報がスプレッドシートに格納されている場合は、バージョンの変更履歴管理が困難になることもあります。ESGレポート作成ソフトウェアは、ローカルで管理されているデータを削除し、情報源を統一します。そうすることで、GRIレポートを正確に作成するために必要な情報を出力できるようになります。
EnviziはGRIフレームワークにどのように対応するか
ESGレポート作成ソリューション内にあるEnviziのESGレポート作成フレームワーク・モジュールを使用すると、GRIフレームワークに関する質問をモジュール内で表示できるため、データを1カ所で取得して、EnviziからGRIに報告することが可能になります。ESGレポート作成フレームワーク・モジュールは、CDP、SASB、GRESB、SECR、NGER、SDG、SFDR、TCFDなど、他の多くのフレームワークにも対応しています。
モジュール内では、各質問とともにガイダンスとヒントも提供され、報告要件に対処するための最善の方法についてのあらゆるレベルの専門知識を得ることができます。さらに、質問への返答は各種フレームワークにわたって同じであるか類似していて何年も変更されない場合もあることから、従来のレポート作成ではたびたび必要だった手動での内容のコピーアンドペーストが不要となり、フレームワークの枠を超えて過去の返答を流用することが可能になります。
レポート作成は、社会と地球により良い影響を与えるために尽力する上で透明性を確保するための取り組みとなります。GRIスタンダードは、最も広く利用されているサステナビリティー・レポート作成のスタンダードです。EnviziなどのESGレポート作成ソフトウェアを活用することにより、先進的な組織は、説明責任を果たし、サステナブルな世界作りに貢献するための取り組みを広く周知することが可能になります。
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この投稿は2021年11月25日に米国IBM Blogに掲載された記事 (英語) を抄訳し、一部編集したものです。
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