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[事例 ポーランド空軍技術研究所] 防衛産業リーダーの優位性を支援するIBMエンジニアリング・ソリューション

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紛争中の国境付近での軍隊の不穏な動き。海岸線に接近する国籍不明の水上輸送船団。人道支援や災害救助を必要とする大地震や暴風雨。

—— ベルギーのブリュッセルに本部を置く北大西洋条約機構(NATO)にとって、こうした状況についてリアルタイムで情報を収集することは常に優先事項であり、同時に難しい課題でもありました。

そんな中、2021年NATOは同盟軍地上監視(AGS)システムに5機目の無人広域監視機「グローバル・ホーク」を迎えました。イタリアのシゴネラ基地を拠点とする5機の「空の目」は、地上の移動体を探知・追跡し、NATOの情報アナリスト、軍司令官、政治指導者に詳細な画像情報を迅速に伝達しています。

 

AGS導入と長時間滞空型の無人偵察機の配置前には、現実世界の条件下でシステムが機能することを証明する必要がありました。それには、空、地上、支援の各セグメントにおけるAGSシステム全体のモデル化と、シミュレーションを含む試験の実施が必要でした。

またNATOの要求は非常に厳格で、それに応えるエンジニアリング・テストプラットフォームの構築は、標準化、セキュリティ、レポートのあらゆる面において、まだ誰も成し遂げたことのないレベルのもので、その導入には多くのNATO加盟国による複数年にわたる研究開発と、20億ユーロを超える投資を必要とするものでした。

 

しかし防衛産業で長年経験を積んできたポーランドの科学者とエンジニアのチームは、この難しいチャレンジがNATOのミッションに貢献できる重要な機会であることを十分理解していました。

「NATO AGSバトルラボ・プロジェクトは、AGSシステム開発に欠かせない持続的な実証基盤です。シミュレーション環境をベースとして、地上管制部門も次フェーズへと進化させようという、私たちの提案がベースとなったものだったのです。」ポーランド空軍技術研究所のC4ISRシステム統合担当主任、ヤロスワフ・スルコウスキー氏はそう述べます。

 

ポーランド空軍技術研究所のテスト・検証部門長であるクシシュトフ・ヴャースビッキ氏は言います。

「私たち空軍技術研究所が生み出すプロダクトやサービスは、国外でも注目されており、ポーランドのエンジニアリング力のショーケースとなっています。

AGSバトルラボの実証基盤という提案がNATOに採用されると、我われはこの注目度が高く、そしてまた31カ月という厳しい期限が設けられたプロジェクトに即座に取りかかりました」。

 

NATOとポーランド政府両者の複雑な要件に同時対応

ポーランド空軍技術研究所がAGSバトルラボ・プロジェクトに必要な作業範囲を検討したところ、プロジェクト文書だけでも数十万ページにも及ぶことがわかりました。

加えて、技術研究所はプロジェクトの300以上のテストケースを含むシナリオを実行し、要件の検証を行い、運用コンポーネントとシミュレーションコンポーネント間の相互運用性の検証を行わなければなりません。

 

研究所のヴャースビッキ氏は当時のことをこう語ります。

「AGSバトルラボの複雑さは、私たちの組織でかつて経験したことのないものでした。また同時に、NATOの要求する標準化という大きな課題にも取り組む必要がありました」。

 

「これほどの複雑な標準規格群の実装には特定のツールセットが不可欠ですし、一般的なオープンソース・ソリューションの適用を考えるには時間があまりにも足りません。

ですから、私たちはこのチャレンジには、IBMのエンジニアリング・ポートフォリオが最適なソリューションであると技術研究所に推薦したのです」。IBMのビジネスパートナー、SmarterProcess社の最高技術責任者バルトシュ・クラブスキー氏はそう語ります。

 

NATOの提供データがIBM DOORSフォーマットだったので、技術研究所は既存のDOORSプラットフォームをIBM DOORS Next、およびIBM Engineering Requirements Management DOORS Familyへと移行させました。これは容易な作業でした。

そしてIBM DOORS Nextをプロジェクト基盤として、SmarterProcess社が推奨するIBM Engineering Lifecycle ManagementやIBM Engineering Test Management、IBM Engineering Workflow Managementが一連のポートフォリオとしてシームレスに統合されました。

 

「これらのポートフォリオは、航空機搭載用ソフトウェアの開発と認証に関するガイドラインであるDO-178、およびDO-178BやDO-178Cによって要求される最も重要な概念に対応しています。つまり、IBMのツール群には、品質管理上の重要な利点が多数あるのです」。

クラブスキー氏はそう語り、検証と結果に関する情報、およびすべての成果物に対する構成管理と変更要求プロセスのサポートが保存されるIBMのエンジニアリング・ソリューションを高く評価しました。

 

ポーランド政府の機関である技術研究所は、AGSバトルラボ・プロジェクトをNATOの要件に準拠させるだけではなく、ポーランド政府の要件にも準拠させなければなりません。

「政府の要件には、作業指示書、方法論、セキュリティ、レポーティングが含まれていました。AGSバトルラボ・プロジェクトをこれらの規則に従いつつ軌道に乗せることができたのも、IBM DOORSプラットフォーム上ですべての管理と共同配置ができたからと言えるでしょうね」とスルコウスキー氏は言います。


IBMエンジニアリング・ソリューション群を用いることで、NATO AGSバトルラボ実証基盤プログラムの複雑で厳しい要求にわずか31カ月で対応

 エンジニアリング要件管理の改善により、プログラム要件の欠陥数を20%削減


防衛分野のスタンダードとなりつつあるIBM DOORS

AGSバトルラボ・プロジェクトは、最終段階であるAGSのイタリア主要作戦基地におけるエンド・ツー・エンドの試験運用を含む4フェーズを、31カ月の期間内にすべて完了させました。

NATOの要求に対しAGSバトルラボ・データベースが直接連携して応えたことが、今回のプロジェクトをスケジュール通り完了させる上で非常に大きな役割を果たしました。

 

ヴャースビッキ氏はこのように語っています。

「NATOにとってレポーティングは不可欠であり、私たちはすべての変更点を報告しなければならなかったのですが、IBMのツール群はデータ収集とステータスレポートを自動化する機能を備えていました。

これを活用することで、私たちは多くのレポートをオンデマンドで非常に簡単に作成できたのです。多くの時間が節約できました。

IBMの一連のエンジニアリング・ツール群とSmarterProcess社のような経験豊富なビジネス・パートナーなしでは、NATO AGSバトルラボのような複雑なエンジニアリング・プロジェクトを実施することは不可能だったでしょう。

AGS部隊へのプロジェクト引渡しにおいて、NATOはとても高い満足を示しました」。

 

プロジェクトの最初の1年間が調達プロセスに費やされたことを考えると、31カ月という期限にこれだけの成果を出したことは、さらなる驚きと呼ぶことができるでしょう。

その秘訣をスルコウスキー氏はこう述べています。「私はIBM Engineeringの要求管理ツールを信頼していましたから、すぐに設計を開始する決断を下すことができました。その結果、重要な設計レビューの1カ月前には先行的な設計作業を終了することができていました。これがコンセプト確認やスケジュール順守に大きな好影響を与えてくれました」。

 

先日、技術研究所はNATOと協力してAGSシステムの習熟トレーニングを提供しました。そしてNATOや他の多国籍防衛請負業者との新たな協業機会を開拓しています。

スルコウスキー氏は言います。「AGSバトルラボの開発経験を通じ、私たち技術研究所は業務効率を向上させることができました。この経験とIBM DOORSなどで開発したデータベースを基に、私たちは今後より容易にプロジェクト要件の計算ができるでしょう。

そして将来的に協力するユーザーやサブコントラクターへ、優れたソリューションを提案できるようになりました」。

 

クラブスキー氏は言います。「防衛分野の企業は協力し合う必要があります。情報を交換し、コンプライアンスを確保して、コラボレーションしていくことを皆が望んでいます。

IBM DOORSがこの分野のスタンダードとなりつつあることは業界にとってとても良いことであり、同時にすでにDOORSを導入している企業には大きなアドバンテージです。

防衛分野ではセキュリティはなによりも重要であり、企業はこの種の情報はクラウド上ではやり取りしたくありませんから」。

 

スルコウスキー氏はこう述べています。

「これはプロジェクト要件の責任者と合格基準の責任者の両者が任務を完了する上で、この上ない強力で素晴らしいツールです。

IBM DOORS Familyは、私たちの研究所におけるシステム開発のプロジェクト管理のスタンダードとなりました」。

 


ポーランド空軍技術研究所について

1953年設立。ワルシャワに本拠地を置きポーランド国防相の監督下にある。無人航空機などの航空兵装やC4ISRシステム、空港インフラや燃料など、空軍とそのシステムに関するさまざまな研究・開発を行なっている。

 

SmarterProcess社について

ヨーロッパを拠点とするIBMのビジネスパートナー 。DevOpsやアジャイル手法を用いたコンサルティングの他、エンジニアリングやソフトウェアに関わるサービスを幅広く提供している。

 

当記事は、事例『Conquering complexity — a strategic advantage for defense industry leaders』を日本のお客様向けにリライトしたものです。

 

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