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新たなショッピング・ジャーニー | from IBVレポート「消費者はすべてを求める」

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当記事は、IBM Institute for Business Value(IBV)のレポート『消費者はすべてを求める:オンラインとリアルを融合した「ハイブリッド・ショッピング」、サステナビリティー、自分の価値観にあった「パーパス・ドリブン」なブランド』を一部抜粋し再編集したものです。
全編は下記よりダウンロードしてご覧いただけます。
https://ibm.biz/ConsumersWantitAllJ


 

視点1: 「ハイブリッド・ショッピング」とは

もはやショッピングのオンライン体験とオフライン体験を分けて考えることはできない。

多くの消費者は、実店舗を訪れ、オンラインで買い物をし、その間にモバイル・アプリを使うという「できるやり方はどれでも」的なアプローチを好むようになった。彼らは、その時々で最も便利なショッピング方法を自由に使い分けたいと考えている。

 

本レポートでは、消費者が実店舗とデジタル・チャネルを組み合わせて、自分流の快適な購買体験を編み出していることを表すために、「ハイブリッド・ショッピング」という言葉を使用している。

例えば、実店舗で商品を購入して自宅に配送したり、オンラインで購入したものを店舗の駐車場で受け取ったり(カーブサイド・ピックアップ)するショッピングのスタイルである。

消費者全体の27%がハイブリッド・ショッピングを主な購入方法として利用している。一方、Z世代では、この数字は36%と他のどの世代よりも大きな割合となっている。

ハイブリッド・ショッピングの台頭
消費者は実店舗とデジタル・チャネルを組み合わせ、自分流の快適な購買体験を編み出している。

 

視点2: 顧客の期待を再定義する高速デリバリー・サービス

パンデミックは小売業界にとって未曽有の試練となった。ロックダウンやソーシャル・ディスタンスのガイドラインが世界中に広まる中、小売業やレストランは事業形態の変更など迅速な対応を迫られた。

多くの店がデリバリー・サービスを行ったり、Instacart社、Uber Eats社、Doordash社、Deliveroo 社などのデリバリー・プラットフォームと契約を結んだりした。

またUPS社、FedEx社、DPD社、Hermes社などの、世界中の企業を支えるサードパーティー・ロジスティクス(3PL)への需要も急増した。*1

*1 Hayes, John. “Massive Growth: Challenges and Opportunities for Third-Party Logistics PostPandemic.” Forbes. May 6, 2021.
https://www.forbes.com/sites/forbesbusinessdevelopmentcouncil/2021/05/06/massive-growth-challenges-and-opportunities-for-third-party-logistics-post-pandemic/

 

店舗の営業再開は拡大しつつあるものの、デリバリーの需要は増え続けている。実際、IBMの調査によると、2021年2月時点と比較して、レストランや食料品のデリバリーを頻繁に利用する消費者が増えていることが判明した。

同時に、超高速デリバリー・サービスを行う企業が配送業界のレベルを引き上げている。Gopuff社、Buyk社、Getir社、Gorillas社などの先駆的なブランドは、注文品を15 分から30分以内に届けることにより、世界中の都市でその名を知られるようになりつつある。

このような破壊的な変化をもたらす企業の活動は、さらにスピーディーな配送サービスが当然であると、消費者が期待することを後押ししている。そのため従来型の小売業(オンラインおよび実店舗)は、競合他社に勝つため、こうしたサービスを事業に組み込む必要に迫られている。

3PLプロバイダーも例外ではない。3PLプロバイダーは、どんな状況でも時間通りに商品を届けるために必要な、俊敏性と適応力があることを自ら証明しなければならない。

 

視点3 サステナビリティーへのステップアップ

多くの大手ブランドにとっては、今やサステナビリティーがビジネス上の取り組みにおいて必須事項であり、成長の主な推進要因ともなっている。例えば、Unilever社では、2014年に「Sustainable Living Brands」指標を導入して以来、28を超える「Sustainable Living」ブランドが、ポートフォリオにおける他商品の平均成長率を常に上回る安定的な成長を遂げている。*2

*2 “Unilever celebrates 10 years of the Sustainable Living Plan.” Unilever. May 5, 2020.
https://www.unilever.com/news/press-and-media/press-releases/2020/unilever-celebrates-10-years-of-the-sustainable-living-plan/

 

他のブランドでも、環境に配慮した商品への需要が同様に上昇し続けている。

投資家もまた、よりサステナブルな選択肢を求めている。世界的な資産運用会社であるBlackRock社は、投資家の積極行動主義の高まりを受け、同社のポートフォリオの中でも特に深刻な環境汚染を引き起こしている企業に対して、排出量と脱炭素化の目標を開示するよう、圧力をかけ始めている。*3

*3 Holder, Michael. “BlackRock steps up investor pressure on its portfolio polluters.” GreenBiz. February 24, 2021.
https://www.greenbiz.com/article/blackrock-steps-investor-pressure-its-portfolio-polluters

 

同様に、最近クリーン・エネルギー戦略を示した米国の石油メジャー2社は、その戦略があまり野心的でなかったことから、株主の反発を受けているところである。*4

*4 Ambrose, Jillian. “ExxonMobil and Chevron suffer shareholder rebellions over climate.” The Guardian. May 26, 2021.
https://www.theguardian.com/business/2021/may/26/exxonmobil-and-chevron-braced-for-showdown-over-climate

 

環境に配慮した商品を求める消費者や投資家のニーズに応えるため、多くの小売および消費財メーカーは、今まで以上に総合的なアプローチでサステナビリティーに取り組んでいる。

ほとんどの企業は、バリュー・チェーンのあらゆる部分で、サステナビリティーの目標を達成するための取り組みを始めている。

 

2021年8月のIBVの調査によると、食品メーカーの4社中3社近く(72%)が飢餓の撲滅に向けた活動を開始しており、パーソナル・ケア企業の68%が健康とウェルビーイングの増進に注力する一方で、アパレルおよびフットウェア・ブランドの63%が気候変動を食い止める活動を行おうとしている。*5

*5 Gupta, Sachin, Sashank Yaragudipati, Jane Cheung, and Christopher K. Wong. “The last call for sustainability: An urgent growth agenda for consumer products and retail.” IBM Institute for Business Value. August 2021.
https://www.ibm.com/thought-leadership/institute-business-value/report/sustainability-consumer-products-retail
邦訳:「サステナビリティー経営、不可避の現実 – 消費財・小売業界の経営層に突きつけられた、事業継続への課題とは」
https://ibm.biz/LastCallSusJ

 

こうした流れの中で、食品メーカーのNestlé社と食料品小売大手のCarrefour社は、IBMとの提携を通じて、高い透明性とトレーサビリティーを実現すべく取り組んでいる。

透明性とトレーサビリティーは今、世界の食品サプライチェーンに求められている。これらの企業はブロックチェーンを利用することで、消費者に提供する商品について、より包括的で正確なストーリーを伝えることを目指している。*6

*6 Carrefour and Nestlé Partner with IBM to Extend Use of Blockchain to New Food Categories.” IBM THINK Blog. April 15, 2019.
https://www.ibm.com/blogs/think/2019/04/tracing-your-mashed-potatoes-on-ibm-blockchain/

 

このような進化は、企業内部で行っているサステナビリティーへの取り組みを、顧客体験に結びつけるのに不可欠である。商品のどのような点がサステナブルなのか、そしてそれを購入することが、人々や地球にとってどのように有益なのか。

これらを分かりやすく伝えることで、消費者の視点を変え、購入の意思決定に影響を及ぼすことができる。

 


 

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