IBM Consulting

ハイブリット開催「CES 2022」進化し続けるモビリティーの更なる行方は?

記事をシェアする:

鈴木 のり子

鈴木 のり子
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBM Institute for Business Value
自動車産業リサーチ部門グローバルリーダー

毎年1月のはじめにラスベガスで開催されるConsumer Electronic Show(以下、CES)は、世界で最も有名な展示会の一つです。名前の通り、消費者向けの電化製品のショーで、最先端のイノベーションを感じられる場所です。過去10年ほどは、自動車やモビリティーの展示も増え、自動車業界にとっても最先端のトレンドを押さえる上で欠かせない場所になっています。

2021年はコロナ禍でオンライン開催となったものの、2022年は厳しい感染対策を敷いてのリアル開催が計画されました。IBMも展示の準備を進めており、筆者も現地のIBMブースの専門家として渡航予定でした。しかし、11月から始まった全世界規模のオミクロン株の流行で、クリスマス休暇直前から大手IT企業のリアル出展取りやめのニュースが相次ぎました。IBMも会場での出展は中止し、ソーシャル・メディアやデジタル・チャネルを活用した情報発信に切り替えました。

CES自体は展示会場で予定通り開催し、主要なプレゼンテーションなど一部のコンテンツはCES Digitalチャネルでストリーミング配信され、現地参加とオンラインでのリモートも参加できるハイブリッドな展示会となりました。

筆者は現地での参加はかないませんでしたが、自動車とモビリティー関連のプレゼンテーションやコンテンツを視聴し、少し先の世界について考えました。

自動車、モビリティー関連の展示

自動車、モビリティー関連の展示では、GM、現代自動車、ソニーの発表が印象的でした。ソニーの電気自動車参入の発表(IBM外のWebサイトへ)は、かなり話題になったのでご記憶にある方も多いかもしれません。GMは大手自動車メーカーならではの全方位での自動運転やEVプラットフォームの戦略(IBM外のWebサイトへ)、現代自動車はメタバースやロボットを組み合わせた未来のモビリティーや工場の姿を発表(IBM外のWebサイトへ)しています。

自動車業界は100年に一度の変革期と言われており、新しいビジネスモデル、商品構成、仕事のやり方などが根本的に見直されています。その先にある未来像として、「車での移動」に限らずもっと広い「モビリティー」「移動」の概念が検討されていることがうかがえます。また、自動車本体または製造段階で培った技術を、メタバースやロボティクスの最新技術と組み合わせて、もっと広い世界での応用も検討されていることもわかりました。

モビリティーでは、従来の車が電動化、自動運転へ向かう大きな流れの他に、個人単位で細かい距離の移動ができるモビリティー、また移動だけでなく身体機能を補完することも含めたモビリティー、地上だけでなく水上や空中も含めたモビリティー、さらには実際に人が移動しなくても、ロボットに代わりに移動してもらって人間が遠くから擬似体験するという、まるでSFの世界のようなコンセプトまであります。個々の要素技術が出来上がってきて、それらのコンセプトを実現化するのも夢物語ではなく、技術の成熟度をあげたり、実用化へ向けての様々な課題を順番に解決していったりという、時間の問題になってきているようです。

IBMの展示

そんなモビリティーにおける未来の一端として、IBMは海洋研究のNPOプロメア(以下プロメア)と共同のプロジェクトで、自動運転で海洋航行する船「メイフラワー」を作成、運行しました。電力源は太陽電池、完全無人のAI自動運転、エッジ・デバイスで情報収集してクラウドで解析する仕組みを搭載しています。膨大な面積の海洋面での調査、探索に活用が期待されます。

メイフラワー号は、1620年にイギリスのプリモスからアメリカのプリモスへ移民が渡航した船の名前で、アメリカ合衆国建国の歴史上とても重要な意味を持ちます。IBMとプロメアのメイフラワー号は、新天地で新しい世界を切り拓いたピルグリム(入植者)のスピリットに敬意を評して名付けられました。

オリジナルのメイフラワー号

「オリジナルのメイフラワー号」

IBMとプロメアのメイフラワー号は2022年のCESイノベーション賞を受賞しており、CES会場でも展示予定でした。残念ながら現地での展示は前述の事情により実現しませんでしたが、メイフラワー号を紹介するデジタル・コンテンツが公開されています。英語になりますが、双方向の体験コンテンツ(英語)もありますので、よろしければ試してみてください。

そのほかにも、ソーシャル・メディアでIBMの先端技術についての対談やポッドキャストが配信されました。

オンデマンドWebセミナー
世界最大級の製造業展示会「CES 2022」で見た最新テクノロジー・トレンドとモビリティーの未来

日本最大の総合自動車ニュースサイト「レスポンス」編集人の三浦和也氏をゲストにお招きして、「CES 2022」全体の振り返りと本稿で紹介した内容を深掘りし「モビリティーの未来を実現するためのロードマップ」について対談しています。筆者も登壇しIBM独自のリサーチや事例を交えながらCES発表の背景にあるモビリティー・自動車業界の最新動向や課題について講演しています。ぜひご視聴ください。

関連情報

More IBM Consulting stories

ServiceNow x IBM、テクノロジーの融合で地域の特色を活かしたDXを推進

IBM Consulting, デジタル変革(DX), 業務プロセスの変革...

ServiceNowと日本IBMグループでは、両社のテクノロジーを融合させ新たな価値を提供することで、日本の地域社会をより豊かにする取り組みを戦略的に進めています。 2024年12月からは「IBM地域ServiceNow ...続きを読む


【PMキャリアカフェ】プロジェクトの幸せのためにPMが取り組むこと

IBM Consulting

近年、ビジネスの現場における心理的安全性が注目されています。心理的安全性とは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対しても安心して率直に発言できる状態が保たれていることを指し、心理的安全性の高い組織やチームほどパフォーマン ...続きを読む


IBMの半導体への取り組み(2) ― AIチップの研究開発で半導体を「ものづくり」の現場へつなぐ(研究員編)

製造, 革新的テクノロジー

近年急速に需要が高まり世界が注目している半導体産業は、研究開発・設計から生産技術、製造、ソフトウェア開発、コンサルティングサービスなど、多くの職種の人々が関わり成り立っています。いずれの職種も半導体業界にとって欠かせない ...続きを読む