IBM Consulting
予測困難な調達リスクに備えるサプライチェーン・コントロール・タワー
2022年01月27日
カテゴリー IBM Consulting | データ活用とAI技術の実用化
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調達リスクが深刻に – 納期が1年待ちという事態も・・・
製造業のサプライチェーンはグローバルに延伸しており、これまでも様々なリスクに直面してきました。サプライチェーン担当者は数日レベルの納期をいかにリカバリーするかということに頭を悩ませてきました。現場での綿密な連携と細やかなすり合わせでリカバリーできていた時代の潮目が大きく変わり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行後のサプライチェーンはそのようなレベルを大きく超えた分断のリスクにさらされており、初動対応を間違えると納期が数日レベルでなく、数ヶ月レベルで遅延するような事態に陥いる状況です。優先順位を間違えると重要顧客に対して1年も納期を待たせてしまうというようなことも、製造現場では耳にするようになりました。
アジアの部品工場のロックダウン、半導体供給不足、天候による物流遅延、さらには予期せぬ工場火災や震災・事故といった事態が何年に一度か単発的に起こるのではなく、連続的に、同時多発的に起こる予測困難な状況において、サプライチェーンの責任者やオペレーション担当者はもはやこれまでの経験値だけではどうにも処理しきれない状況になっているといえます。
予測が困難な世界においては、情報可視化がサプライチェーンの成功の鍵に
サプライチェーンの意思決定を難しくしている要因には、サプライチェーンには内外に多くの組織・パートナーが関わっていることがあげられます。組織ごとに情報がサイロ化しており、それゆえに意思決定云々の前に情報集めに翻弄され、状況に応じたサプライチェーン計画の柔軟な見直しが難しくなっています。
サプライチェーンの意思決定をスマートに行うためには、組織横断での見える化とデータ活用が鍵となります。
サプライチェーン・コントロール・タワーはサプライチェーン全体でのデータ、重要なKPI、イベントなどがパーソナライズされたダッシュボードです。サプライチェーン・コントロール・タワーの活用により、企業は組織を横断したプロセスにおける重要な問題をタイムリーに正しく理解し、優先順位を付けて、解決することができます。
サプライチェーンの責任者は、需要の変化や部品供給の問題発生に対して供給を最適化しつつ、コスト目標の達成が求められています。これは、変化が激しく予測が難しい時代においては非常に困難なミッションと言えます。
よりスマートなコントロール・タワーがあれば、サプライチェーン全体にわたってエンドツーエンドの可視性が得られるだけでなく、特に予見できない社外で発生する問題やリスクについて把握できるようになります。
コントロール・タワーとサプライチェーン計画の連携でインテリジェンスな判断を
例えば日本から米国工場に部品を供給するようなビジネスにおいて、ロジスティクスの導線にハリケーンなどの情報を重ね、到着の遅れを予測し、米国工場に連携することができます。部品の到着の遅れの情報と同時に部品在庫の不足リスクを把握することができれば、緊急空輸や生産計画の入れ替えなどをコストの影響を含めて柔軟に判断することができるようになります。
また、サプライチェーン・コントロール・タワーと計画系のシステムが連動することで、部品調達の遅れが判明した後に、部品から逆展開し影響を受ける最終製品を特定し、該当する製品の生産計画を後ろに倒し、影響の無い製品で優先度の高いオーダーを前倒しするようなことを、自律的に行うことも可能になります。リスクが長期化するような場合、S&OP計画と連携し、グローバルでの生産アロケーションやソーシング見直しによりリスクをコントロールすることも可能となります。
ブロックチェーンやAI、機械学習などの高度なテクノロジーを活用することで、データのサイロを打破したり、手動プロセスを排除したり、実用的な洞察をリアルタイムに入手したりすることができるようになります。よりスマートなコントロール・タワーは、チームとパートナー間のコラボレーションを可能にし、情報を最大活用して、スマートな意思決定を加速させることになります。
日本の製造業にはこれまで培った現場でのすり合わせ力があり、AI、機械学習による自律的な判断の精度を更に高められる土壌があると考えます。人間的な判断も加えることでさらにインテリジェントな判断が実現できるといえます。
AIや自動化などのテクノロジーを活用することで近未来の現場がどのように変わるのか、架空の自動車メーカーを例に、顧客接点からサプライチェーンまで企業横断的に業務が連携する様子や、人間的判断も含めて自動化することで業務が効率化されるイメージを、わかりやすく紹介しています。
増山 紀暁
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部
アソシエイト・パートナー
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