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2021年ドイツのモーターショーはモビリティをテーマに再始動

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「IAA」から「IAAモビリティ」

2021年9月、自動車業界の大規模イベント国際モーターショーがドイツでリアル開催となりました。ドイツ自動車工業会は、これまで2年おきにフランクフルトで開催していましたが、今年からミュンヘンに会場を移し、「IAAモビリティ」として再始動、モビリティをテーマにしたショーに生まれ変わりました。

私はIBMのビジネスリサーチ組織の自動車部門のリーダーとして、自動車業界の未来についてのプレゼンテーション、最新レポートのご紹介のために現地参加しました。

IAAモビリティは、ミュンヘンの郊外にある展示場(メッセ)だけでなく、街中のたくさんの広場も会場となり、街をあげてのイベントとなりました。

IAA

ドイツのミュンヘンは、近郊を含めてAudi, BMW, Daimlerなどの本社や工場が点在し、欧州一の自動車タウンともいえる場所です。そんなミュンヘンも、多様なモビリティが使える街への変容を遂げつつある様子がうかがえました。

街の大通り、住宅街含めて幅広く自転車道が整備され、歩行者と車から完全分離された道路を自転車や電動スクーター(キックボード)が安全に走っています。

住宅地の自転車専用道路

住宅地の自転車専用道路

 

ミュンヘン中心部の自転車専用道・Covid対策でカフェのテーブルも歩道に設置してあるところが多い

ミュンヘン中心部の自転車専用道・Covid対策でカフェのテーブルも歩道に設置してあるところが多い

また、交通系アプリの利用も活発で、地下鉄やバスの利用にはモバイルアプリを使って切符を購入するのが主流のようです。乗り捨て型のシェア電動スクーター(キックボード)も至るところにあり、若い世代を中心に愛用者が増えているようです。IBMとモーニングコンサルトの調査(2021年8月実施)によれば、ミュンヘン市民の76%が公共交通アプリを使用、電動スクーターのシェアリングアプリは18%が使っています。

Source: IBM/ Morning Consult 消費者調査, August 2021

Source: IBM/ Morning Consult 消費者調査, August 2021

乗り捨て型のシェア電動スクーターは複数の業者があります。GPSが内蔵されており、アプリを使えば自分がいる場所の近くに空き車両があるか、電池の残量はどれくらいかが分かります。アプリで予約や鍵の解錠、返却手続き、支払いができます。

住宅街の道路には路上駐車用の電気自動車充電器

住宅街の道路には路上駐車用の電気自動車充電器

ミュンヘンでは、集合住宅に住んでいる人は車を路上駐車している場合も多いのですが、住宅街の道路には路上駐車用の電気自動車充電器が整備されていました。

住宅地の電気自動車充電ステーション

住宅地の電気自動車充電ステーション

今回は、国を跨ぐ移動に制限がある中で開催されたモーターショーで、日本やアメリカなどヨーロッパ以外の自動車メーカーの出展がほぼなかったのは少し寂しかった点です。

しかしながら、街をあげてのモビリティへの取り組みまで含めて、IAAモビリティはドイツ自動車業界の未来への意気込みを感じさせる場となりました。

メルセデスベンツ、街中心部広場の会場

メルセデスベンツ、街中心部広場の会場

 

フォード、街中心部の会場

フォード、街中心部の会場

IBMの展示テーマは「Building the Future of Mobility」

さて、IAAモビリティでは、IBMの自動車産業チームもメッセと街中心部の2箇所にブースを展し、最新の自動車業界向けソリューションや導入事例のご紹介、テクノロジー体験会や専門家による講演を実施しました。

IBMの展示テーマは「Building the Future of Mobility」つまり、「モビリティの未来を一緒に作りましょう」というものです。IBMの技術、ITの専門性や知見が新しいモビリティ社会へどう貢献できるか、さまざまな観点での提案をしました。

ミュンヘン展示場、メッセのIBMブース

ミュンヘン展示場、メッセのIBMブース

 

IBM 街中心部の会場

IBM 街中心部の会場

 

IBMブースの自動運転駐車体験ブース

IBMブースの自動運転駐車体験ブース

 

プレゼンテーション・セッションについては、一部がこちらのサイト(英語・字幕なし・要ユーザー登録)で公開されています。

筆者によるプレゼンテーションセッション

筆者によるプレゼンテーションセッション

 

IBMのビジネスリサーチ機関、Institute for Business Valueが実施した「2030年の自動車業界の展望」では、自動車業界の姿がモビリティを中心に大きく変容すると予測していますが、来るべき未来へ向けて着実にデジタル改革を進めているお客様の事例もIAAでいくつか紹介させていただきました。

1)メルセデスベンツ:盗難車追跡サービス

ダイムラー社とIBMは、Mercedes オーナー向けのアプリサービスMercedes Meの新機能として、盗難車追跡サービスを追加しプレス発表しました。車が盗難にあった際に、迅速に警察へデータを連携して盗難車を見つけるものです。顧客が期待するデジタル、コネクテッドの体験を分析しながらのサービス開発となりました。バックエンドはRed Hat build of Quarkusなどクラウドネイティブのオープンソース技術を活用しています。2020年11月から欧州でサービスを開始し、北米、アジアなど他の地域でも順次サービス展開が始まります。

2)アウディUK: 販売サイト刷新
英国のアウディ社とIBMは、アウディの販売ウェブサイトとアプリの刷新を実施しました。IBMガレージのツール、手法を使い、ユーザー体験を最初から最後まで描き出しました。Adobe社のデータ分析、コンテンツプラットフォームを使い、クラウドベースのオンラインショッピングサービスを共創しました。対面での共同作業が難しい中、プロジェクトのほとんどの部分を複数拠点を繋いでの完全リモートのアジャイル、ダイナミックデリバリーでの開発となりました。開発スピードは3ヶ月程度になり、従来と比べて最大75%短縮できました。

コロナ禍で消費者の行動が変容し、ブランドサイトへのウェブトラフィックも減少、新車販売が29%減少する中、リニューアルしたウェブサイトとアプリでは、購入への引き合いが59%増加、テストドライブの申し込みも5倍に増えました。

3)ハーレーダビッドソン:Livewireコネクテッドバイク
ハーレーダビッドソンの電動バイクLivewireと、オーナー向けのアプリサービス、H-D ConnectではIBMのクラウド基盤が使われています。電動バイクのリアルタイムデータの取得と分析、つながる機能の提供、バイク特有のニーズに応じた安全サービス、充電情報など、プロダクトとアプリが一体となったデジタル顧客体験がクラウド技術に支えられています。

このようなデジタルへの取り組みにわくわくする一方、久しぶりにリアル開催の大規模イベントでたくさんのお客様、各国のIBM同僚と対話ができたこと、新しいプロダクトやサービスを実際に触って体験できたこと、街全体の取り組みを実感できたことが何よりの収穫でした。

鈴木 のり子

鈴木 のり子
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部
IBM Institute for Business Value
Global Research Leader, Automotive, Aerospace & Defense

IBM Institute for Business Value の自動車業界のリサー チ・リーダー。IBM の自動車業界におけるオピニオン・ リーダーシップのコンテンツ策定と、戦略的なビジネス・イン サイトの提言にグローバルの責任を持つ。20 年以上にわたって、世界の自 動車業界大手企業と、事業戦略やビジネスモデル・イノベー ションの分野で協業している。

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