IBM Sustainability Software
開発ライフサイクルをデジタル変換する4つの方法 | 持続可能な自動車への道のり(後編)
2021年11月22日
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当記事は『Four ways to digitally transform your development lifecycle through automotive engineering』を日本のお客様向けにリライトしたものです。
前編はこちら『持続可能な自動車への道のり(前編)』。
自動車工学のデジタルトランスフォーメーションで、持続可能な自動車開発を
サステナビリティはビジネスの必須事項となりました。気候変動、天然資源の減少、そしてCO2排出への積極的な対応は義務であり、従来通りのビジネスのあり方にはNoが突き付けられています。
こうした変化は想像以上のスピードで進んでおり、事業運営とサプライチェーンを混乱させています。そして自動車業界も、これまでの常識を根本的に再考すべきときを迎えていると言えるでしょう。
シリーズ『持続可能な自動車への道のり』の前編では、環境に優しい自動車へのトランスフォーメーションのときを迎えていることと、その実現にはソフトウェア定義の自動車を実現するための、包括的なクロス・ドメインの自動車エンジニアリングへの着手が不可欠であることをお伝えしました。
自動車業界は、従来の方法がその限界に達したことをまずは認めるべきでしょう。
より持続可能な自動車への転換には、メカ・ソフト・エレキのエンジニアリングの結びつきの複雑さを、しっかりとハンドリングする必要があるのです。
今回の『持続可能な自動車への道のり』の後編では、そのハンドリングを力強いものとする、デジタルトランスフォーメーションの4分野について説明します。
1. 自動車工学におけるソフトウェアの戦略的再利用
自動車工学ソフトウェアの再利用性についての検討を進めるべきです。自動車メーカーやサプライヤーにとって、既存車両への投資を再利用できるようにすることは大きな意味があります。
自動車業界には、「フォルクスワーゲン・MQB」に代表される、アーキテクチャ/プラットフォームの再利用性や規格化に関する優れた事例があります。しかしながら、電気/電子(E/E)システムエンジニアリングの再利用とソフトウェアエンジニアリングの再利用はまったく異なるものです。また、一般的に言われる「ソフトウェア部品表(BoMs)」ともまったく異なるものです。
必要なのは、プログラム全体でグローバルにエンジニアリング成果物の管理を実現することです。それには、システム要件からソフトウェアモデル、テストプラン、実施例、結果に至るまで、ソフトウェア成果物のライフサイクル全体が含まれます。
ほとんどの企業にとってこれは大変革であり、再利用とソフトウェアバリアント管理を念頭に置いた設計への転換が必要です。
一例を挙げると、クルーズコントロールスイッチの5ボルトと12ボルトの制御システムのサポートと、ステアリングコラムのスライドスイッチとハンドルのモーメンタリスイッチの制御のすべてを、1つのソフトウェアを元にして行う必要があるということです。
2. コンプライアンスとトレーサビリティ
自動車メーカーには、ISO26262やISO21434などの安全性とサイバーセキュリティー、そしてASPICEなどのプロセスおよび品質に関する標準やコンプライアンスへの準拠が求められます。
これらの規制や標準は、要件からアーキテクチャ、モデリングからテストプラン、そして最終的なテスト結果まで、設計プロセス全体の完全なトレーサビリティを一般的に求めます。
コンプライアンスチームは、しばしばこれらのすべてをスプレッドシートやシーケンズ図でどうにか文書化しようとしていますが、これはある意味不可能への挑戦と言えるでしょう。
IBM Engineering Lifecycle Managementツールは、異なるエンジニアリング領域をまたがることを問題とせず、必要とされるトレーサビリティを提供します。
さらには、ツールにASPICEをはじめとした主要なコンプライアンス・プロセスが組み込まれているので、エンジニアが通常業務を行えば、自動的にコンプライアンスが確立されるようになっています。
コンチネンタル社のPMT部門の責任者であり、シャーシ&セーフティ部門の品質およびプロセス責任者でもあるベルンハルト・リーガー博士は、IBM Engineering Lifecycle Managementプラットフォームについて次のように述べています。
「CASE(自動運転、コネクテッド、電動化、シェアリング)への転換は、当社のビジネスに大きな影響を及ぼしています。これらの変化する要件に応えていくために、私たちコンチネンタル社はIBMと協力して、製品の開発と展開方法を再改革しています。」
3. アジャイルソフトウェア開発とSAFe
自動車業界全体が、ソフトウェア定義のサステナブルな次世代車両へと歩みを進める中で、多くの関係者が従来のウォーターフォール・プロセスがこのタスクに不十分であることに気付いています。
一方で、大規模アジャイル開発フレームワークSAFe(Scaled Agile Framework)に代表されるアジャイルプラクティスを採用しようとすると、その多くが重大な問題に直面してしまうのが実情です。
自動車業界は過去数年間にわたり何万人ものエンジニアにSAFeのトレーニングを提供し続けてきました。しかし今も、アジャイル移行には成功例よりも失敗例の方が多いのです。
この問題に対処するために、IBMはASPICEプロセスと作業成果物を、SAFeプロセス・ステップに完全にマッピングしました。
このSAFeとASPICEのプロセス統合が標準的なアジャイルプロセスと融合して、開発マイルストーンを計画するため、ソフトウェアが納期通りにリリースされる確信をビジネスに提供します。
4. シームレスな製品開発ライフサイクル
次世代車両開発の熾烈な競争に勝つためには、自動車メーカーはシームレスな開発ライフサイクルを採用する必要があります。メカ・ソフト・エレキのエンジニアリング開発の全機能領域において、完全な透明性とトレーサビリティの実現が不可欠なのです。
また、この開発ライフサイクルは、バージョンとバリアントを管理することで変更管理と再利用性を実現しなければなりません。加えてコンプライアンスと標準の準拠を日常の開発プロセスに統合して、どのような問い合わせやアセスメント、監査やレポート要求にも対応できるようにする必要があります。
つまり、ソフトウェアおよびシステム開発チームに必要なのは、要件、テスト、ワークフロー管理、およびソフトウェア設計に最適なツールだけでなく、これらのツールを連携して包括的に機能させることのできるデジタル基盤なのです。
デジタル基盤は、開発プロセスを最適化するためのものです。シームレスに連携しない限り、テスト管理ツールも要件管理ツールもメリットをもたらしません。
適切な変更要求管理やテスト失敗の反映、すべての利害関係者間の効果的なコミュニケーションなど、今日の車両開発が必要としており、未来の車両開発も求め続けるであろう不可欠な機能を提供するのが、車両開発デジタル基盤なのです。
IBMのデジタル基盤は、ツール間の接続性を保証し提供するものです。
開発チームはツール、ダッシュボード、およびレポート間で開発ライフサイクル全体を反映するトレーサビリティを手にすることができます。さらに新しいツールが利用可能になったときにも、将来にわたって継続性のある開発環境が保証されるのです。
IBM Engineering Lifecycle Management
IBM Engineering Lifecycle Management(ELM)は、車両エンジニアリングの全機能領域における複雑な開発環境を管理するためのデジタル基盤です。
要件管理からモデリング、ワークフロー、テストやデプロイメントに至るまで、すべてのデータに完全な透明性と追跡可能性をもたらし、あらゆる利害関係者間のコラボレーションとコミュニケーションを最適化する、統合ソリューションを提供します。
業界標準のツール連携規格OSLC(Open Services for Lifecycle Collaboration)をサポートしているので、Jira、Git、Jenkinsなどのサードパーティツール群をつなぐことができ、これらのツールへの投資もデジタル基盤ELMに取り込み、活用することができるのです。
複雑な製品開発とソフトウェア開発を牽引するプラットフォーム
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