IBM Sustainability Software
[事例] オマーン石油開発会社 | バックオフィス業務を一元化。2,300時間をMaximoで削減
2021年08月25日
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全社設備資産の管理および調達などに用いる管理システムを刷新する必要に迫られていたオマーン石油開発会社(PDO)は、それまでの紙ベースの作業からコンピュータ支援施設管理システムへの全面移行にパートナー企業と共に取り組みました。移行と新システム実装はすばやく完了し、それが生みだした価値は莫大なものでした。鍵となったのはIBM Maximoソフトウェアでした。
■ ビジネス課題とソリューションがもたらした結果 | 事例概要
PDOは、12拠点に6万を超える資産・設備を有しており、デジタル変革によるバックオフィス業務の統合管理が急務となっていました。
検討の結果、PDOはバックオフィス業務の一元化をすすめ、設備保全管理システムIBM Maximoソフトウェアを導入し、カスタマーサポート・ポータルおよびモビリティソリューションと統合しました。
- 2,300時間削減 | 46の個別調達ステップを14の自動化ステップに合理化
- 年間7万枚の紙の節約 | プロセス電子化により紙と印刷コスト、エネルギーを削減
- 視認性向上 | 統合プラットフォームにより資産・設備や関連プロセスの状況確認を簡単に
■ これまでの背景 | ばらばらなシステムの間で…
PDOは1937年に設立されたオマーン最大の石油およびガスの開発会社です。近年はその範囲を拡大し、持続可能な社会に向けて再生可能エネルギーの取り扱いを含む包括的なエネルギー企業へと転換を図っています。
国営石油会社として、PDOはオマーンの経済拡大と多様化においても重要な役割を果たしています。雇用創出や職業訓練、専門知識の開発や数多くの社会投資プログラムの推進など、これらの多くの分野でもサポートを提供しています。
PDOは温室効果ガス排出の抑制に関するリソースやテクノロジーを資産・設備に用いることにも力を入れており、2013年以来、統合不動産管理サービスのCarillion Alawi社(CA)と契約し協業を進めています。2018年初頭には、PDOとCAは統合不動産管理サービスに使用されていたERPプラットフォームに焦点を合わせ、新規テクノロジーの実装による効率向上プロジェクトをチームとしてスタートしました。
「当社の既存システムは、不動産オペレーションのニーズに対応していませんでした。炭化水素プロセスの保全管理には適していたものの、他のコンピュータ支援施設管理システムのタスクとの調整が非常に難しかったのです。」
PDO不動産オペレーション・デリバリーチームのリーダーであるAbri氏は、当時を振り返りこう語っています。
「既存システムに顧客モジュールは存在しておらず、それを実装しようとすれば、法外な費用が必要でした。さらに、不動産管理の目的に合わせたレポート作成機能などを追加したくても、膨大な待ち時間と作業時間が必要となってしまう状態だったのです。
その上、当社のERPシステムは外部接続性が悪く、モバイルソリューションを組み込むことや、社外サプライチェーン・パートナーとの協業に用いることができませんでした。」
“これまで、リクエストから発注書発行までに、46のステップ実施が必要でした。それが今では14となっています。”
Ibrahim Abri | PDO不動産オペレーション・デリバリーチーム リーダー
■ カスタマーポータルとモバイルアプリを統合
2018年後半、PDOは従来のシステムからクラウドベースの設備資産統合管理ソリューション「IBM Maximo Application Suite(MAS)」への移行をスタートしました。
MASは、PDOの有する膨大な設備の事後保全と予防保全を行うだけではなく、IoTデバイスの管理やモバイル対応、およびカスタマーポータルのオンライン管理も担っています。さらに、6万を超える資産の関連レポート処理もMaximoソリューションが実施しています。
CA社は移行作業の進行と同時に、新規カスタマーポータルのサービスインと、IBM Maximo Anywhereソフトウェアをベースとしたポータル対応のAndroid版モバイルアプリの開発も進めていました。
モバイルアプリは、BYOD方式により個人所有の使い慣れた端末でユーザーが外部からアクセスできるものです。
そしてコア・システムのサービスインと同時に、PDOはMaximoの適用範囲拡大に取り組み始めました。その高い優位性をよりビジネスに活かすためです。
Abri氏はこう語っています。
「IBM Maximoは12のPDO施設すべてをカバーしています。中核施設内外に関与するハードメンテナンス、環境管理、ケータリングやクリーニング、これらのすべてです。
私たちはさらに、在庫管理システムの更新を目指しました。統合不動産管理サービス・チームの非効率と、エネルギーの無駄をなくしたかったのです。」
“統合不動産管理サービス・チームは、新しいスペアパーツの調達に紙ベースの手動プロセスを使用しており、承認に約45日間を必要としていました。また、紙も毎年70,000枚以上使用しており、エネルギーと印刷のコストが高かったのです。”
Ibrahim Abri | PDO不動産オペレーション・デリバリーチーム リーダー
■ プロセス全ステップをデジタル化して完全把握
PDOとCA社はIBMビジネスパートナーのPraxis Solutions社(PS)と契約し、さらなる問題解決に取り組みました。
そしてIBM Maximo Asset Managementソフトウェアを介することで在庫管理、補充、購買の調達業務を把握し、在庫管理サプライチェーンのルーティングを実施、また、CA社と協力してPDO全体の勘定科目の基準を確立し、在庫管理システムと適合する電子資産カタログを開発することで、11,000を超える製品の仕分けと可視化を実現しました。
PS社のソリューションアーキテクト兼マネージングパートナーであるアンキット氏はこう言っています。
「最初のセッションを終えたところで、包括的な調達プロセスは確立されたものの、調達チームにはまだ設備・資産管理に関するチャレンジが残されていることに気づきました。
そこで、契約、調達、在庫管理のプロセス全体をデジタル化し、PDOとCAの両者がプロセス全ステップを完全に把握できるようにしました。
現在、IBM Maximoの優れた機能をさらに活用するために、分析を通じたプロセス可視性の強化を進めています。Maximoが提供する洞察により、今後ますますプロセスが磨かれていくことでしょう。」
“Maximoが提供するKPI、レポート、ダッシュボードにより、PDOとCA社はプロセスの有効性についてより多くの洞察を得ることができるでしょう。そしてさらにプロセスが磨かれていくのです。”
Ankit Jain | Praxis Solutions社 ソリューションアーキテクト兼マネージングパートナー
■ 可視化、分析、改善 | DXの大きな恩恵
新しいMaximoソリューションの導入により、PDOのビジネス全体のプロセス効率は大きく向上しました。
中でも在庫管理の取り組みは最大の改善ポイントと言えるでしょう。PDOが2019年の1年間で調達したアイテム数は19万強となりますが、プロセス自動化と合理化により、取引と承認に紙の印刷が必要となったケースはゼロです。そしてさらに、25,579の関連する署名作業が不要となりました。
Abri氏はこう言っています。
「これまで、リクエストから発注書発行までに46のステップ実施が必要でした。それが今では14となっています。
この効率化により、1年間で2,300時間というおよそ職員1名分の年間作業時間を節約することができたのです。」
PDOの運用チームは、新たな統合パフォーマンスダッシュボードにより、施設管理、調達、および保全タスクをより詳細に把握できるようになりました。
そしてほぼすべてのプロセスがMaximoを介してルーティングされるため、日常的なタスクはもちろん問題発生時にも、インテリジェント・ワークフローによりスピーディーな対応が実現されるようになりました。
さらに、Maximoとカスタマーポータルの統合は、顧客満足度にも改善をもたらすでしょう。
顧客のニーズとウォンツが直接タスク管理システムに取り込まれるようになったので、見落とされる可能性がグッと下がり、対応スピードもこれまで以上迅速化されるからです。
そしてモバイルソリューションの実装は、作業担当チームに大きな効率向上をもたらすと同時に、図らずもCOVID-19という未曾有の事態への対応力を大幅に向上させるものとなりました。
“自宅からログオンできるモバイルアプリのおかげで、レポート作成、あるいはレポートを確認するためだけにオフィスに行く必要はなくなりました。オマーンでは今もまだCOVID-19の制限が続いているので、これは本当に助かります。”
Ibrahim Abri | PDO不動産オペレーション・デリバリーチーム リーダー
当記事はPetroleum Development Oman LLC | Make paper-based processes a thing of the pastを、日本の読者向けにリライトしたものです。
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