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もっと大きな社会価値を届けるために | 勝見 啓子 Solution Sales, Blockchain Solutions
2021年05月10日
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チームメンバー・インタビュー #39
勝見 啓子 Solution Sales, Blockchain Solutions
Cognitive Applicationsチームのメンバーが、テクノロジーと自分自身とIBM、そして過去と現在と未来について語るインタビューシリーズ、39回目の今回はブロックチェーンのスペシャリスト 勝見啓子さんにお話を伺いました。
(インタビュアー 八木橋パチ)
— 今日はよろしくお願いします。早速ですが、まずは60秒で自己紹介をお願いします。
はい。勝見啓子です。2005年、新卒でIBMに入社して、その後10年強ずっとGTSという主にアウトソーシング・サービスの営業をやっていました。
2018年にブロックチェーンの事業部に異動し、今年からCognitive Applications事業でブロックチェーン・ソリューションを担当することになりました。
— ブロックチェーン事業への異動はご自身の希望だったんですか?
はい、そうです。アウトソーシングの営業はやりがいはありましたが、さすがに10年以上やったので「違う世界」が見たいなぁって(笑)。
ちょうど異動前に、半年間事業部トップの補佐の仕事をやる機会があったんです。それが自分のキャリアについて改めて考える時間になりましたね。結構いろいろと考えて、多くの人に意見やアドバイスをもらったりしながら決めました。
— 今振り返ると、「アウトソーシングの営業」はご自身にとってどんな経験でしたか?
まだ入社2年目で仕事の進め方とかもよく分かっていない時期からすごく大きな契約にも関わらせていただきました。正直、「なんでこんな状態に!?」って何が何だか分からずに動いていた時期もありました。でも、先輩たちがしっかりとリードしてくれたおかげで、周囲の反応を見ながら、段々と仕事を理解していくことができました。
5年とか10年とかにわたる長期かつ大規模契約なので、IBM社内でもさまざまな部門との折衝が必要で、プレッシャーも小さくはなかったけれど、そこでの経験が今に活きているなと思います。
■ 南アフリカで経験した「多様性」と「プロフェッショナリズム」
— 勝見さんは以前CSC(Corporate Service Corps: コーポレート・サービス・コー。IBM社員向けの社会貢献 & リーダー育成プログラム)に参加されてるんですよね?
はい、2013年なんで、ブロックチェーン事業部に異動する5年前ですね。南アフリカで1カ月間、世界中から集まった多様なメンバーと一緒に国連関係のプロジェクトで活動していました。
あの頃も「違う世界が見たい」、「変化が欲しい!」っていう強い衝動を感じていた時期で、CSCというプログラムの話を聞いて「これは行くしかない!」って(笑)。
— CSCは社員の間でも大人気で競争率が高く、選ばれても数年待ちになることもあると聞いていますが…
私はただ運がよかったのか、それとも選抜プロセスに向けてしっかり準備したのが功を奏したのか、申し込んだ翌年に行くことができました。
南アフリカ現地での仕事は1カ月ですが、事前のオンラインでの下調べやチームとしての準備などもとても刺激的でした。
— 南アフリカは希望勤務地だったんですか?
そうです。一番強い刺激を得たいなら、物理的にも心理的にも自分から一番遠い地を選ぶのがいいんだろうなと思って(笑)。
第一希望勤務地をアフリカとして提出したので、念願叶ってのアフリカでした。と言っても、「一体どんなところなんだろう?」って、希望を出した段階ではほとんど想像も付いていなかったんですけど。
–南アフリカというと、治安が悪そうというイメージがありますが…。
そうなんですよ。私もそれは少し不安でした。でも私以上に当時のお客様や同僚の方が心配してくれて…。「本当に行くの? 大丈夫?? 気をつけてね!」って。
でもみんな「すごい経験だよね。頑張ってきてね」って送り出してくれました。
実際、現地では治安の悪さを感じることも少なくありませんでした。それもあって、泊まっているホテルは、ヨハネスブルグの職場からかなり離れた場所でした。そこから、警備付きで安全な「ハウトレイン」というアフリカ初の高速鉄道で通勤していました。
— 一緒に働いていたのはどんなチームメンバーだったんですか? さっき「多様」と言われていましたけど。
国籍も年齢も仕事の上でのバックグラウンドも、本当に多様なメンバーが揃っていました。みんなプロフェッショナリズムが高くて、「こんなに通勤に時間が取られてはプロジェクトに支障がある。ホテルを変えて欲しい」と強く要求するメンバーもいたりして。
そんな中、私は最初のうち、なかなか自分の居場所を見つけられなくて苦戦していたんです…。
■ 困難を乗り越えた先にあったもの
— どんな困難があったんですか?
ネイティブじゃないメンバーも、私以外は全員、日常的に英語を使って仕事をしているメンバーでしたから、やっぱり言葉の壁が大きくて。みんなの意見を聞きその上で英語できちんと意見を伝えることが難しかったんです。
そしてみんな、個性も自己主張も強かったですね。各国でCSCは日本以上に人気があるらしくて。先ほどのホテルを変えて欲しいというのも、「こんな特別な機会を与えられたのだから、大きな成果を出そう」という意気込みが強いからなんです。
そんな中、私は協調性はあるけれども、前に出たいという強い意思や個性はない。言葉も武器にならない。どうやってポジションを見つければ…って。
— 期間も一カ月と限られているとなると、焦りますよね。それで、どうなったんですか?
あるとき、チームが作ったお客様向けの資料を見たら「文字が多くて分かりづらいな。もう少し視覚的な工夫をしたらどうだろう?」と思ったんで、図を加えたりレイアウトを変えてみたんです。そしたらチームのみんなが「すごい! これからはケイコに資料は任せた方がいいものになるぞ!」って。
そうやって資料作りという役割を手にしてからは、いろんなことがグッとやりやすくなりましたね。
— 一つの役割がコミュニケーションや関係性を変えてくれたんですね。CSCからすでに8年経っていますが、今でもやり取りするメンバーはいますか?
います。さほど頻繁ではないですけど。
プロジェクトが終わって数年後、チリから来ていたメンバーと、インドから来ていた友人に会いに行ったりもしました。インドで現地待ち合わせをして。
— いいですね! CSC全体を振り返って、どう捉えていますか?
本当に素晴らしかったです。ダイバーシティーを体感し、世界が拡がりました。
自分が「アフリカ」を一つの塊として見てしまっていたことの、危険さや尊大さのようなものも実感できた気がします。本当はとても多様な文化だったり民族だったりが集まってできているんですよね。それはアフリカだけじゃなくて、南アフリカという国も同じです。
そして私自身も、「アジア」と一括りにされる経験を通じて、いろいろと感じるところがありましたね。
■ 登山とつわりと消費電力
— 勝見さんは趣味とかあります?
登山かな。と言ってもまだ始めて数年で、去年はコロナもありほとんど行けなかったんですけどね。
パチさんは日本で二番目に高い山ってどこだか分かりますか? 山梨県の南アルプスにある「北岳」って山なんです。富士山はまだなので、この山が登った中では一番高いです。
— すごい! 羨ましい! 行ってみたいです。これからいい季節ですよね。…あ、でも勝見さんは今妊娠中ですよね。何カ月になられるんですか?
妊娠六カ月です。先月からいわゆる「安定期」に入りました。そんなわけで、登山はしばらくお預けですね、残念ですが。
— 最初にインタビューの依頼をしたとき「つわりがひどいからちょっと待って欲しい」って言われていましたよね。出産は初めてですか?
はい。初めてです。つわりは先月くらいまでは本当にキツかったですね…とは言え、もっとつらい方もいらっしゃると思うの、私なんかそれでもマシな方かもしれません。
ある意味、コロナ禍でリモートワークが当然という雰囲気で助かりました。2月3月はいつ吐き気に襲われるかまったく分からなくて。「身だしなみとか構っていられません! このまま横になったままで会議参加しますから!」って感じでした(笑)。
— 先月の社内プレゼン、寝ながらだったのか!(笑)。 ところで、お子さんが生まれるとなると、これからの社会のことも一層気になるんじゃないですか?
その通りですね。特に気候変動が気になっています。でも、SDGsの17の目標は全部気になります。
そして私個人ができることはたかが知れていますが、それでも、担当しているブロックチェーンというテクノロジーを通じて、17の目標達成に貢献したいと思っています。
— ただ、一部で「膨大な電力を無駄にしている」というブロックチェーンへの批判もありますよね。
ああ、それはビットコインなどの暗号通貨に用いられるマイニングの問題ですね。
IBMをはじめ、多くのビジネスに用いられている許可型ブロックチェーンは、特に多量の電力を消費するわけではありません。
— そうなんですね。どんな違いがあるのでしょう?
簡単に言うと、許可型のブロックチェーンでは、許可された人や組織しか参加できないため、もし誰かが何らかの不正や誤魔化しを行った場合でも、記録を追っていくことでその不正がどこの誰がいつ行ったものかを割り出すことができます。
一方で、パブリック型のブロックチェーンは匿名で誰でも参加できるので、不正を起こさせないためにマイニングという仕組みを用いています。それが多くのコンピューターに膨大な電力消費を伴う作業をさせているんです。
— なるほど。
■ SDGsの達成をブロックチェーンで後押しするために
— ブロックチェーンはSDGsの目標達成にどう役立つのでしょう?
そうですね、たくさんあるのですが、今発表されているものの中で日本に暮らす私たちにも身近なものとしては、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」に直結する「Ocean to Table」というプロジェクトがあります。
参考: ブロックチェーンが伝える、美味しく安全で適正な食の流通
— Ocean to Tableは、持続可能な漁法による東京湾産のスズキの流通・販売システムですよね。
はい。でもそれはOcean to Tableプロジェクトのごく一部に過ぎません。それ以外にもブランド養殖魚の流通や輸出など、日本各地で海の豊かさを守るプロジェクトが進んでいます。今後、続々と発表されていくことになるんじゃないかと思います。
それから、IFT(IBM Food Trust)というブロックチェーン・プラットフォームを用いた取り組みでは、コロンビアの小規模コーヒー農家や社会起業家を支援するプログラムや、アメリカのウォルマートやフランスのカルフールでの食の安全管理に用いられています。
参考: 持続可能かつ倫理的な生産と調達を | 小規模コーヒー農家をブロックチェーンで支援
— なるほど。ただ大手小売店の取り組みは、ひょっとして経営者と消費者にとっては価値があっても、生産者にとっては負担が増えるだけということはないんでしょうか?
たしかに短期的に見れば、収穫場所や出荷時の登録など、現場の作業が増えてしまうというのは事実です。でも、その作業によって、例えば食中毒などの事故が発生した際には、出荷場所や生産地を瞬時に限定して切り分けることで、「問題のない安全な食品」まで廃棄されてしまうことを防ぐことができます。中長期的に見れば、しっかりと取り組んでいる生産者さんほど守られていきます。
そして、社会的にも大量の食品ロスを回避したり、食品価格の高騰を防いだりということで、より多くの人に安定して栄養を届けられます。
でも、パチさんが指摘するように、こういう関係者全員が価値を感じられて、同時に社会全体にも価値を届けられるユースケースじゃなければ、社会価値を届けることができません。そして実は、こうした座組みを組み上げていくのは、実は結構大変なんですよね…。
— そうですよね。「良いことだから」だけではなかなか続かないですよね。
そうなんです。どこかにしわ寄せがあると、結局はうまくいきません。
関係者のビジネスそれぞれすべてに貢献するにはどうすればいいのか、さらに大きな社会価値を生むにはどんなプレーヤーに加わっていただけば良いのか…。
これらをしっかりと考え、PoCや社会実証を行いながら調整を重ねていく必要があります。そういったこともあり、なかなかスピーディーにものごとが進まないという一面もあります。せっかちな人にはもしかしたらあまり向いていないかもしれませんね。
— 慎重さや長期的な視点が必要ですね…あ! それって勝見さんがIBMでの最初の10年間で身に付けてきたものじゃないですか!
そうですね。やっぱりあのときの経験がしっかりと今に生きてますね(笑)。
— 最後の質問です。この夏に生まれてくるお子さんが20歳になる2041年、どんな世界になっていて欲しいですか? そしてお子さんにはどんな人になって欲しいですか?
SDGsは2030年の達成目標だから、それを達成した約10年後ってことですね。
うーん、まず自然が今以上に残っていて、それを楽しめる社会であって欲しいです。私の好きな登山もゴルフも、自然があって初めて楽しめるものですから。
そして子どもには…そうだなあ。世界に目を向けられる人になって欲しいです。
そして課題を解決するだけではなく、その課題の根幹に目を向けられる人、課題発見をできる人になってくれたらいいですね。
インタビュアーから一言
「あ〜〜でも、松山選手みたいにひたむきに夢を追い続けて、たくさんの人に感動を与えられる人になって欲しいかも。でもでもやっぱり、元気ならそれだけでいいかな。」 — インタビューは、ゴルフ「マスターズ」での松山選手の優勝が決まった日に行われました。ゴルフ好きの勝見さんはかなり興奮されていました!
きっと、勝見さんのように広い視点を持った優しい子どもに育つんじゃないかな? おめでとうございます!
(取材日 2021年4月12日)
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