IBM Sustainability Software
[事例] シーメンスとIBM、CO2削減をAI、ブロックチェーン、IoTで
2020年08月28日
記事をシェアする:
この記事は米国時間2019年11月12日に掲載された、シーメンス社のマラン・マイスナー氏による寄稿『Siemens and IBM showcase an AI-based, CO2 friendly advisor』、および動画を日本の読者向けにリライトしたものです。
次つぎ起こる破壊的イノベーションに飲み込まれないためには、AIやIoT、エッジコンピューティングなどの先進テクノロジーをタイムリーに活かしていく必要があります。
しかし大企業ほど、時代遅れのシステムや古くなったポリシー、孤立しているデータ群など、乗り越えなければならない課題に埋め尽くされてしまっているものです。
100年を優に超す歴史を持つ私たちシーメンスは、これらの大企業特有の課題に飲み込まれず、引き続き卓越したエンジニアリングでAI時代もリードし続けていくために、自らを積極的に変化させていきます。
今回は、リスクを歓迎し、インサイドアウトのイノベーションに取り組み続けるシーメンスの、変革の取り組みの一部をご紹介します。
私たちは先日ミュンヘンのWatson IoTセンターで、変革の道のりに大きな足跡を記しました。
IBM Garageとデータサイエンスチーム、AIチームからなるIBMの多大なる支援、そしてその他のパートナー企業と協力し、AIとブロックチェーンを利用し従業員の二酸化炭素排出量を大幅に削減するPoC(Proof of Concept: 概念実証)を開発したのです。
そしてこのCO2排出量削減モデルは、数値的な義務を設定して強制するというよくあるものではなく、従業員がより環境にやさしい行動を取り、自ら目標を達成したくなるようにデザインされたものなのです。
二酸化炭素排出は気候変動の主原因です。私たちシーメンスは、企業には脱炭素社会へ向け果たすべき役割があることを明確に理解し、パリ協定採択以前から2030年までのCO2排出量実質ゼロの達成に取り組んでいました。
取り組みの一環には、2020 年までに弊社生産設備内でのCO2排出量を半減するという明確な目標も含まれています。
シーメンスのトラベル管理部門も、CO2排出量実質ゼロに向けさまざまな取り組みをしてきました。例えば、出張時の二酸化炭素排出量を削減するために、オンライン・コラボレーションツールを活用して出張回数を減らす。出張時にはテクノロジーを活用し、自動車利用をよりクリーンなものとすることなどです。
その他、シーメンスが重要課題として掲げている「持続可能性」を、従業員と共に高めていくために、彼らの車両から排出される約300,000キログラムのCO2をどうすればできるだけ早急に削減することができるのか – 私たちはこの課題に、ブロックチェーンとAIで取り組むこととし、PoCの検討を始めました。
PoCの青写真についてIBMに相談すると、彼らはすぐにIBM Garageワークショップを開催してくれて、私たちはそこで1つのチームとなり、たくさんの多様なアイデアを創出しました。
その後アイデアを磨き上げ、二酸化炭素排出量削減を支援する、環境に優しいバーチャル・トラベルアドバイザーの開発がゴールとなりました。そして実用最小限の製品(MVP)を6週間でアジャイルに開発する、スプリントがスタートしたのです。
MVPのゴールは、イングランドのウェスト・サセックスで開催される世界有数のモータースポーツの祭典「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」に、ミュンヘンから車で乗り付け、私たちの取り組みをストーリーとして発表するショーケースを実施することです。
もちろん、二酸化炭素排出量は最小限でなければなりません。
このPoCに対し、IBMはプラグインハイブリッド(PHV)スポーツカー、BMW「i8」を私たちに提供してくれました。
このWatson IoTのデザインをまとった「i8」には、位置情報、燃料消費状況、バッテリーレベルなど、自動車のあらゆる活動に関するデータを収集するセンサーが装備されています。
モチベーションがあれば、誰もが優れた計画を立てて迅速に実行します。
それにはストーリーテリングが必要です。
PoCは、多くのパートナー企業にご支援いただき、大成功を収めました。
しかし成功を最も顕著に支えてくれたのは、IBMデータサイエンスとAIエリートチームです。彼らが、Watson Assistantを使用し、IBMブロックチェーン・データを用いたバーチャル・トラベルアドバイザーをすばやく構築してくれたことが、成功の大きな要因だったのです。
このショーケースは、ブロックチェーンとAIに対してこれまでシーメンスが示せずにいた明確なビジョンを表すものとして、シーメンス全社から大きな注目と関心を集めました。
「PoCのMVPでこれだけの成果が出たのだから、果たして、全体に展開されたときにはどれだけのインパクトを出すのだろう?」と。
いま、社内ではIBMとの協業ソリューションを進める話が進行中です。
今後は、バーチャル・トラベルアドバイザーが、レンタカーでお客さま先に向かう従業員に環境に優しいルートやドライブモードを案内してくれます。さらに、目的地周辺やルート沿いの観光地の紹介もしてくれますし、ボイスチャットで宿泊地や施設の予約もしてくれます。
データはブロックチェーンに保存され、どれだけの二酸化炭素排出量が削減できたか、どれだけのリワードポイントが獲得できたかが表示されます。
さらに今後、製品やサービスの割引購入や特別有給休暇の取得など、獲得したポイントを従業員の福利厚生に適用できるようにしたいと考えています。
このプログラムはまだ始まったばかりですが、私たちはこれからもブロックチェーンテクノロジーの探求と活用を進めていきます。
卓越したエンジニアリングを基盤に、スマートインフラストラクチャー・ソリューションの創出・供給を通じて世界をより良い場所にしていく — 私たちシーメンスのそのミッションは、IBMのAI、ブロックチェーン、そしてIoTと共に次世代へと進んでいくことで達成されます。
重要なのは、誰と一緒にストーリーを描くか。そして最初の一歩を誰と一緒に踏み出すかなのです。
関連ソリューション: Watson IoT Platform
問い合わせ情報
お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 cajp@jp.ibm.com にご連絡ください。
関連記事
東京デジタルイノベーション2020 「エッジ・コンピューティングの活用で変わる、これからのITとIoTの考え方」セッションレポート
日本Maximoユーザー会2024@天城ホームステッド 開催レポート
IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software
2024年10月15〜16日の2日間に渡り、IBM天城ホームステッドにて1年半ぶりの「日本Maximoユーザー会」が開催されました。 石油・化学企業、産業機械製造企業、エネルギー企業、エンターテインメント企 ...続きを読む
トヨタ紡織「 A-SPICE レベル3」取得活動事例 | シートシステム/車室空間開発の未来に向けて
IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software
「Automotive SPICE(A-SPICE)の取得を意識し、実際に検討を本格化したのは2021年です。そして昨年2023年3月にレベル2を取得し、そこから約1年半で今回のA-SPICE レベル3の取得となりました ...続きを読む
「何度でもやり直せる社会に」あいふろいでグループ代表 吉谷 愛 | PwDA+クロス9
IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software
「日本は一度ドロップアウトした人にとても厳しく、いわば『敗者復活』の機会が残念ながらとても限られています。ただそんな中で、半年程度の準備期間で再チャレンジの機会を手に入れられるのが『IT』です。 私自身、ITに救われた身 ...続きを読む