IBM クラウド・ビジョン

“オープンかつセキュア”なエンタープライズ・グレードのクラウドを支える中核技術とは?

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これまで5回にわたり、IBMが提唱するクラウド・ジャーニーのコンセプトや主なソリューションを「クラウド戦略立案」「クラウド移行」「クラウド構築」「クラウド管理」のフェーズごとに見てきました。今回はこれらに通底するIBMクラウド・ソリューションの技術的な特徴を、クラウド移行(マイグレーション)とクラウド構築(モダナイゼーションとクラウドネイティブ開発)にフォーカスしてご紹介します。

佐々木 敦守

佐々木 敦守
日本アイ・ビー・エム
クラウド&コグニティブ・ソフトウェア事業本部
クラウド・プラットフォーム・テクニカルセールス
部長

IBM CloudのGo-to-Marketチームを担当。プライベート・クラウドの開発/運用に従事した後、2014年よりIBM Cloudに携わる。これまで、シニア・アーキテクトとして数多くのお客様のクラウド案件をリードしてきた。自らもKubernetes認定資格 (CKA/CKAD)を取得し、企業システムのクラウドネイティブ化を支援している。

 

蜂谷 美穂

蜂谷 美穂
日本アイ・ビー・エム
クラウド&コグニティブ・ソフトウェア事業本部
クラウド・インテグレーション・ソフトウェア事業部
テクニカル・セールス部長

クラウド製品のテクニカル・セールス担当として、お客様への提案を技術面で支援。さまざまな業界のお客様に対し、アプリケーションやシステム連携基盤のモダナイゼーションを中心とする提案活動と技術支援を経験しており、その数は50件を超える。これまでの技術者としての経験を生かし、お客様とともに“一歩先を行くDX”に取り組んでいきたい。

 

スムーズなマイグレーションを実現する3つのキー・ソリューション

マイグレーションとは、オンプレミスの既存システムを修正なしでパブリック・クラウドに移行することです。そのまま移行するだけでも、クラウド上に用意されたAIやブロックチェーン、IoTなど最新サービスと連携させて既存システムが生み出す価値を高めることができます。「IT人材の不足」や「インフラ更改の負担軽減」といった課題の解決策としてマイグレーションに取り組むお客様も増えています。

IBMはマイグレーションのためのさまざまなソリューションを提供していますが、その中心となるのが次の3つのサービスです。

  • IBM Cloudベアメタル・サーバー:IBMのデータセンターで稼働する物理サーバーを専有利用できるサービス
  • VMware on IBM Cloud:オンプレミスのVMware製品による仮想化環境をそのままパブリック・クラウドに移行できるサービス
  • Power Systems Virtual Server on IBM Cloud:オンプレミスのPower Systems上で動くシステムをそのままパブリック・クラウドに移行できるサービス

いずれのサービスでも、仮想プライベート・クラウド(VPC)をまたいだ通信は無料です。他社のクラウド・サービスでは、VPCを越えて仮想マシンやデータベースのバックアップを定期的に取っていると瞬く間に通信料金がかさんでしまいますが、その心配がなく、毎月のコスト見積りを立てやすい点を多くのお客様にご評価いただいています。

 

IBM Cloud ベアメタル・サーバー ─ 業界随一のベアメタル・サービス

IBM Cloud ベアメタルは・サーバーは、充実したラインアップを誇る物理サーバーをお客様が専有してご利用いただけるサービスであり、オンプレミスの各種サーバー上のシステムをそのままパブリック・クラウドに移行できます。時間課金や月額課金、長期利用割引など豊富な料金プランをご用意しており、既存ライセンスなどの資産も生かしてご活用いただけます。

 

VMware on IBM Cloud ─ グローバルで2,000社以上と圧倒の実績

VMware on IBM Cloudは、VMware製品による仮想化環境をクラウドに移行できるサービスであり、グローバルで2,000社以上と他社を圧倒する導入実績を有しています。可用性設計やバックアップの仕組みなど、お客様が多くの手間とコストをかけて作り上げたシステム環境をそのままクラウドに移すことが可能です。

 

他社のVMwareサービスとは異なり、VMware on IBM CloudではvCenter Serverの管理者権限をお客様にお渡ししています。これにより、オンプレミスの大量のVMwareワークロードを段階的にパブリック・クラウドに移行する際にも、またパブリック・クラウドに移行した後も、従来の管理方法やツールの使用を継続することが可能となります。

 

Power Systems Virtual Server on IBM Cloud ─ IBM iやAIXの移行先として最適

IBM Power Systems Virtual Server on IBM Cloudでは、PowerVMハイパーバイザーを備えたIBM Power Systemsハードウェア上で稼働するPower Systems Virtual Server(論理区画/LPAR)をクラウド上に作成することができます。これにより、お客様がオンプレミスのPower Systems上で運用されているIBM iやAIXなどによる基幹システムを修正なしでパブリック・クラウドに移行できます。小規模ワークロードを試すためのスターター向けから、ソフトウェアのライセンス条件により専用のプロセッサー・コアが必要となるケースまで、さまざまな用途でご利用いただけます。

 

IBM CloudはSAPの移行先としても最適

IBM Cloudは、SAP ERPやSAP HANAなどによるシステムのクラウドへの移行を検討されているお客様にとっても最適なプラットフォームです。例えば、SAP社およびVMware社との強力なパートナーシップに基づき、パブリック・クラウドとしては唯一、IBM CloudだけがVMware上でSAP環境をご利用いただけます。

 

また、SAPの認定インフラストラクチャーであるIBM Cloudベアメタル・サーバーは、SAP HANAのベンチマーク・テストで業界最速のパフォーマンス(2020年7月現在)を記録しています。

 

業界標準のKubernetesをベースにした「OpenShift」でモダナイゼーション&クラウドネイティブ開発を支援

IBMのクラウド・ソリューションは、クラウドの最新技術を用いたクラウドネイティブなアプリケーション開発や既存システムのモダナイゼーションにも最適です。それを支えているのが仮想化技術「コンテナ」の活用です。

コンテナ技術では、OSから上のレイヤーを仮想化し、アプリケーションと、それを動かすためのミドルウェア一式をコンテナ・イメージとしてパッケージングします。コンテナ化することで、どのプラットフォーム上でも修正なしでアプリケーションを動作させられるようになります。VMwareなどのサーバー仮想化技術と比較して実行時のリソース消費量が少なく、起動が速いといった利点もあります。

IBMはコンテナをハイブリッド・マルチクラウドの基盤技術に据えています。その核となるソリューションが、業界標準のKubernetesをベースにした「OpenShift」です。OpenShiftは、Red Hatが提供するLinuxとKubernetes、継続的インテグレーション(CI)や継続的デリバリー(CD)に必要なオープンソース・ソフトウェア(OSS)を包含した、コンテナ・アプリケーションの開発と実行を行うためのエンタープライズ対応コンテナ・プラットフォームであり、主要なパブリック・クラウド上で動作します。

IBMのクラウド・ソリューションでは、このOpenShiftの環境を数クリック、数十分程度でパブリック・クラウド上に用意することができ、さらにその環境をお客様に代わって管理するマネージド・サービス「Red Hat OpenShift on IBM Cloud」も提供しています。これにより、お客様はコンテナによるアプリケーションの開発と運用に集中することができます。開発したアプリケーションはオンプレミス、プライベート・クラウド、パブリック・クラウドなど任意の環境で動かすことができます。

 

 

ハイブリッド・マルチクラウド対応のミドルウェア・ソリューション「IBM Cloud Paks」

また、IBMはOpenShiftをベースにハイブリッド・マルチクラウドを実現するプラットフォームとして「IBM Cloud Paks」を提供しています。これはOpenShiftとOSSやコンテナ化されたミドルウェアを用途別にパッケージングした製品であり、「アプリケーションの開発/実行」「データ活用」「システム/データ連携」「セキュリティー」「ビジネス・プロセス管理」「マルチクラウド管理」など6つの用途向けのCloud Pakがご利用いただけます。Cloud Pakを活用することにより、お客様は次のようなメリットを得ることができます。

①既存資産を活用しながらクラウドのテクノロジーをオンプレミスに持ち込むことができる
②既存システムを容易にクラウド化することができる
③オンプレミスやパブリック・クラウドで作ったアプリケーションを適材適所で動かせるようになる

 

例えば、アプリケーションの開発/実行用のCloud Pak「IBM Cloud Pak for Applications」を使うことで、お客様は既存システムをコンテナ技術を使ってモダナイゼーションしたり、マイクロサービスやDevOpsなどの技術を駆使したクラウドネイティブ開発を実践したりすることができます。

 

また、システム/データ連携用のCloud Pak「IBM Cloud Pak for Integration」により、クラウドやオンプレミス上に連携基盤を作ることができます。今後、システムの多様化/分散化が加速する中で、用途に応じて連携方式を使い分けることがますます求められるようになります。Cloud Pak for Integrationは、イベント・ストリーム処理、非同期処理、API連携、大容量データの高速転送、サービス連携などを適材適所で組み合わせて、“アジャイル統合アーキテクチャー”により連携をスピーディーに実現します。

 

IBMはOpenShiftを分散型クラウドの基盤技術としても推進

今日、クラウド・ベンダー各社がOpenShiftのサービスを提供していますが、IBMはOpenShiftをハイブリッド・マルチクラウドを実現するオープンな技術として、さらには分散型クラウドを実現する基盤技術として推進している点が他社とは大きく異なります。

例えば、2020年5月開催の「Think Digital 2020」で発表された「IBM Cloud Satellite」は、OpenShiftをベースにした分散型クラウド・ソリューションです。IBM Cloud Satelliteを使うことで、オンプレミスや各社のパブリック・クラウド、さらには工場やネットワークのエッジで稼働するエッジ・サーバー上のアプリケーションを同一のコンテナ技術によって一元的に管理することが可能となります。アプリケーションがどこの環境で実行されていたとしても、IBM Cloudが制御するただ1つの画面を通して管理することができるのです。IBM Cloud Satelliteの提供は2020年後半に開始されます。

 

 

IBM Cloudはセキュリティーも業界最高レベルを実現

オープンであることに加えて“セキュア”であることも、IBMのクラウド・ソリューションの大きな特徴です。

例えば、パブリック・クラウド上のセキュリティーに関しては「IBM Cloud Internet Services」を提供しています。同サービスはDDoS防御やWeb Application Firewall(WAF)などクラウド・アプリケーションの保護に必要な機能を包括的に備え、低価格でご利用いただけるクラウド・セキュリティー・ソリューションです。

また、認証サービスや暗号鍵管理サービス、データ暗号化や監査機能、それらのセキュリティー管理を一元的に行うツールなど、エンドツーエンドのセキュリティーを実現する全てのソリューションをIBM Cloudで提供しています。

このうち、データ暗号化に関しては暗号鍵の管理に力を入れており、Keep Your Own Keys(KYOK)型のサービス「IBM Cloud Hyper Protect Crypto Services」を提供しています。同サービスでは、暗号鍵の管理をクラウド上のハードウェア・セキュリティー・モジュールで行うことで業界最高となるFIPS 140-2 Level 4のセキュリティーを実現しており、クラウドの管理を行うIBMですら暗号鍵にはアクセスできません。金融機関をはじめ個人情報を厳格に保護する必要があるあらゆる企業、および政府機関など最高度のセキュリティーを必要とするお客様に向けたサービスでの採用が進んでいます。

 

このように、IBMは“オープンかつセキュア”な技術を核にして、皆様に末永く安心してご利用いただけるエンタープライズ・グレードのクラウド・ソリューションの開発/提供に努めています。「クラウドで既存システムに新たな価値を付加したい」「クラウド上で新たなサービスを創り出したい」というお客様は、信頼いただけるパートナーとして、ぜひ私たちをお選びください。

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