IBM Sustainability Software
アイデアミキサー #1 | parkERs ブランドマネージャー 梅澤 伸也 (前編)
2020年05月25日
カテゴリー IBM Sustainability Software | アイデア・ミキサー
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parkERs ブランドマネージャー 梅澤 伸也 (前編)
ストーリーが生まれるところ。魔法の問い
「アイデア」には大きく2つの意味があります。
思いつきや新たな工夫という意味と、もう一つ理念や本質という意味です。
「アイデアミキサー」シリーズでは、軸となる強いアイデアを持ちながら越境や新分野の開拓を実践している方に、その想いを語っていただきます。– その「アイデア」は、IoTやAIに代表されるテクノロジーや社会と、どう混ざっていくのでしょうか?
第一回目にご登場いただくのは、parkERs(パーカーズ)のブランドマネージャー梅澤 伸也さんです。
(インタビュアー 八木橋パチ)
parkERs – 青山フラワーマーケットで広く知られている株式会社パーク・コーポレーションにて、「日常に公園のここちよさを。」という考えのもとオフィスなどの空間デザインと実装を手がけている事業部。
梅澤伸也 – parkERsのブランドマネージャーで、「ワク」が嫌いな人。ワクをつなぎ合わせて新ジャンルとしてしまうのが好き。好きな言葉は「無為自然(むいしぜん)」。
■ parkERsにとっての公園。そしてスターバックス 表参道ヒルズ店
— 「日常に公園のここちよさを。」を掲げるparkERsですが、実は公園って、人によって頭に浮かべるイメージが結構違うんじゃないかと思うんです。parkERsのいう「公園」とは?
僕たちがイメージするのは手付かずの自然を残しつつも人の手が入っている公園ですね。
遊具もあればたくさんの木々も水辺もある。ニューヨークのセントラル・パークに近い気がします。
— 住宅街の中にあるちょこっとした公園ではなくて、かなりの広さがあるタイプですね。
そうですね。正解とか間違いとかがあるわけじゃないですが、僕らが求めている公園は「異なる目的を持った人たちみんなに応じることのできる、人と自然のちょうど良い距離感が実現している場所」ですね。
— なるほど。でも「異なる目的に応える」ことも 「ちょうど良い距離感」も、すごく主観的なだけに難しいチャレンジですよね。
はい、そうなんです。でもどんな場合でもポイントになるのは「充足感を与える」ことなのかなって思っていて。
— 最近parkERsが手がけた仕事の中で、「これは充足感を与えることができた!」っていう事例を教えてもらえますか?
多くの方にご賞賛いただいたものを紹介させていただきますね。昨年4月にオープンしたスターバックス コーヒー 表参道ヒルズ店です。
これはご来店いただいたお客さまや近隣の方がた、そして僕らから見た直接的なお客さまであるスターバックスさんにも充足感と心地よさを感じていただけたんじゃないかと思います。そしてこれも重要なのですが、僕ら自身も大きな充足感を得ました。
— 私も数回行きました! 緑と水がめっちゃ気持ちいいですよね。
「スターバックス コーヒー 表参道ヒルズ店」1Fエントランス
「スターバックス コーヒー 表参道ヒルズ店」B1内観
それまでのスターバックスの店内って、さほど緑は多くなかったんですよね。でも表参道ヒルズ店は、100年かけて人がつくった森を持つ明治神宮へとつながるケヤキ並木の参道に面している、自然との特別な関係を持ったロケーションに位置しています。
そしてヒルズ前には明治神宮に向って流れる「お清めの水」という小さな流れがあり、その水の流れが、人間にとって大事な飲み物となるコーヒー(=植物)と出会う場所…。そんな、あの土地ならではの物語を紡ぐ「心地よい場所」として、表参道ヒルズ店のデザインでコラボレーションさせてもらいました。
— そんな大きなグランドデザインが、ストーリーがあったんですね。
僕らストーリーはとても大事にしているんです。
あの店舗には生物多様性の保護に寄与する「シェードグロウン(日陰栽培)」というコーヒーの生育方法だったり、コーヒー生産に携わる人々のためのエシカル(倫理的)な豆の調達であったり、そういうスターバックスさんが取り組んでいる社会課題への姿勢もストーリーに組み入れて伝えようとしています。
■ 社会課題への取り組みと経済合理性
— 社会課題と言えば、昨年11月に新装したparkERsさんのオフィスも、さまざまな社会課題への取り組みが形になっていますよね。
はい、僕らは植物のプロの視点から環境問題にオフィスを通じて取り組んでいます。ただスターバックスさんと比べると、規模ははるかに小さくなってしまいますけどね。
そしてこれは自分たちも、そしてどんなお客さまでもそうなのですが、社会課題への取り組みと「経済合理性」とのバランスはいつも大きなチャレンジとなりますね。
参考記事: 自然とテクノロジーでオフィスを公園に! | parkERs南青山新オフィス内覧会レポート
— 社会課題と経済合理性…。いかにも相性が良くなさそうな組み合わせです。
おっしゃる通りです。でもだからこそ、僕らparkERsの価値が発揮できるのかなとも思っています。今年、残念ながら東京オリンピック・パラリンピック競技大会が延期となってしまったじゃないですか。僕らは台東区さまとご一緒させていただき、浅草のマラソンコースを中心に、歴史と伝統を未来へとつなぐ壮大なストーリーを描かせていただく予定だったんです。
でも、今回の延期で、いろんな面からチャレンジ内容を見直さざるを得なくなってしまいそうで…。
— それは…やっぱり費用面が最大のチャレンジ要因ということ?
うーん、デリケートな点もあり多くは語れないのですが…。
先ほどと矛盾するところがあるのは分かっているんですけど、正直、この件に関しては、お金は二の次でやり切りたい、ストーリーを世界に発信したいという気持ちを持っています。
— ときにはそういう矛盾をもはらんだ熱や不合理さが、困難突破の秘訣だったりもしますよね。
東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた台東区の取り組み 「江戸ルネサンス 伝統と文化が薫るおもてなし」
■ ストーリーが生まれるところ。そして魔法の問い
— parkERsが大事にしているストーリーですが、どうやって作っているんですか?
パチさんはご存知のように、parkERsは建築や空間のプロである「空間デザインチーム」と植物や自然のプロである「プランツコーディネートチーム」、そしてビジネスとしてそれらを実装していく「プロデュースチーム」という企画・設計チームに加えて、施工監理チームとメンテナンスチームをあわせて5つの異能集団から成る事業部です。
ストーリー作成については、設計の3チームのメンバーが入り乱れ、みんなで知識やアイデアを出し合って作っていますね。
— それは幅広い知見が持ち込まれる、多様性の高い価値深いコラボレーションですね! てっきりプロデュースチームがうんうん頭をひねっているのかと思ってました。
ありがとうございます。
建築ってその地域の歴史と切り離せないじゃないですか、だからデザイナーチームはその辺りの知見がすごいんです。そしてプランツチームはその土地や自然の環境特性について人並み外れた興味を持っている人たちが集まっています。だからそれぞれの知見がすごくいい具合に補い合って、ストーリーに幅と奥行きを持たせることができていますね。
— とは言え、プロフェッショナル意識の高いメンバーの集団なので、「いつでも常に和気あいあい」とはならないんじゃないですか?
よくご存知ですね(笑)。自分たちでも「毎日が小競り合い」なんて茶化していますが、衝突はもはや日常ですね。
それだけ強い想いをもって仕事をしてるってことでしょうがないんですが。
— それじゃあもしかして、これまでオフィスで流血沙汰も…?
いやいや、さすがにそれは1度もないですよ! …とは言え涙は結構目にしますね。でもそれが後を引くことはほとんどないし、僕らマネージャー陣が介入しなきゃならないなんてことはほぼありません。
僕たち、意見の相違がなかなか解決しないときの切り札みたいなものを持っているんですよ。それは「これ、今回のクライアントのxxxさんだったら、どちらを求めるかな?」という問いです。議論を交わした後でこの問いに戻ると、魔法のようにみんなの意見がまとまっていくんです。
■ ケニア。そして太陽とガーデナーと微生物
— 梅澤さんが青山フラワーマーケットの運営母体であるパーク・コーポレーションに転職したのは、ケニア旅行がきっかけだったと昨年のTEDxOtemachiで聞きました。でも、そもそもなぜケニアに行ったんですか?
もともと旅行好きで、「いつか必ず人類発祥の地アフリカに行きたい」とは思っていたんです。であるときたまたま、前職の楽天でかなり忙しくやってたんですが、珍しく10日間の連休が取れたんです。
ヨーロッパやアメリカに比べたら、やっぱりアフリカってワイルドじゃないですか。当時はまだ子どももいなかったので、そういうところに行くなら今のうちだろうなって思って。
参考動画: テクノロジーとバイオフィリア~‘進化する知能’と‘無意識の本能’のデザイン | Shinya Umezawa | TEDxOtemachiLive
— たしかにそうですね。そして「DNAレベルでの衝撃(詳しくは上記リンク先の動画をご覧ください)」を受けて、すぐにパーク・コーポレーションに転職することにしたんですね?
いやちょっと違うんです。帰国後「自然をもっと日常に取り入れる仕事に就こう」という意思は強くなっていましたが、特に「パーク・コーポレーションで」とは思っていませんでした。
実は転職活動でいくつかの会社からお話をいただいていました。「環境コンサルタント」の職種で前職の倍額のオファーをいただいたり。でも、何か違うような感じもしていて…。
それで、以前から気になる花屋であった青山フラワーマーケットがつながりました。どんな会社かと思い代表のブログを読んだら「トライアスロンのこと多めでしたが、一言一言が本質をついているなぁ」と思いパーク・コーポレーション代表の井上と一度会うことになりました。
— 以前parkERsオフィスで一度井上社長とお話しさせていただきました。メチャおもしろい人ですよね(詳しくはこちらよりメッセージと社長ブログをご覧ください)!
熱量がすごいでしょ(笑)。それで初めて会ったときに面白がってもらい、「今やっている商業施設やオフィス関連のビジネス、僕に任せてくれたら売り上げを倍にしますよ」って打ち上げたんです。
— 言いますねぇ。なんかお二人の姿が目に浮かびます(笑)。それで直ぐ「よし、じゃあ任せた!」って言われたんですか?
直ぐではないです(笑)、その後、自分たちが将来的にはどんな世界を実現したいのかって話しをしました。社会課題を解決していき、花や緑で日常を豊かにに近づけたいですよねって、意気投合したんです。
仕事をする上で、そういう意思を明確にしていくことがすごく大事だと思うんです。僕は、そういう大きなビジョンが一致している人と一緒に仕事がしたいんです。それでparkERsに決めました。
— 胸にグッとくる話です。そうだったんですね。そしてそこから、梅澤リーダーのもとでparkERsがスタートし、急成長が始まったんですね。
いや、もともとパチさんもご存知のparkERsのクリエイティブディレクター、城本がparkERsの前身を担当していたんです。とは言え、城本も別の業務との兼務で手もあまり回らないし、そもそも得意分野がビジネス・プロデュースではなくクリエイターですからね。
それで僕が加わりコンビを組み、そこに別の優秀で熱意のあるチームメンバーたちがさらに加わってくれた。そして急成長っていうとちょっとアレですけど、たしかにぐんぐんと伸びて結果を出してきました。
でもこれは謙遜じゃなくて、本当に成長の動力はチームメンバーで、はっきり言って僕の果たした役割なんてちっぽけなもんですよ。パートナー(チームメンバー)が素晴らしいからparkERsは伸びているんです。
— そりゃメンバーが素晴らしいのは事実でしょうが、梅澤さんの役割がかなり大きいのは間違い無いと思いますよ。突然ですが、どうですか森さん? (parkERs 広報担当の森さんにオンライン同席していただいていました。)
梅澤さんは、チームにとっての未来やゴールを、分かりやすくてつい興味を持ってしまうような例えで示してくれて、尚且つちょっとした笑いを誘いながらチームを盛り上げて、みんなを鼓舞してくれます。
parkERsの未来を誰よりも考えている人だと、個人的には思います!
— 梅澤さんと城本さんと、そして社長の井上さん。この3人の役割を敢えて植物関連でなぞらえるとどうなりますかね?
井上社長は間違いなく太陽ですね。エネルギーの発生源で近づき過ぎると火傷します(笑)。城本さんはガーデナーで育てる人。僕は肥料か微生物かな。
–– あー、梅澤さんは微生物ですね間違い無い。物質を循環させ常に土に栄養を与え続けている。微生物メッチャ大事!
後編ではCOVID-19による価値感の変化や、5Gなどの先進テクノロジーがもたらす人と自然の新しい関係について伺います。乞うご期待。
(取材日 2020年5月12日)
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