IBM Sustainability Software
「普通のビル」を、価値を生み続ける「スマートなビル」に変える方法
2020年01月29日
カテゴリー IBM Sustainability Software | プラットフォーム | 統合型職場管理システム
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あなたの自宅とオフィス、どちらがより「スマート」ですか?
自宅よりもオフィスの方が、イノベーティブなツールでイノベーティブな体験ができるという方は、どれくらいいるでしょうか?
「スマートなビル」は、最近あちこちで耳にする言葉となりました。でも実際のところ、これまでは「単なる普通のビル」だったのでしょうか? 単に、他のシステムから切り離されて、イノベーティブな取り組みをする機会を与えられていなかっただけではないでしょうか。
■ すべてのビルをスマートなビルに
入居者の誰もが、自分が過ごすビルにはスマートであって欲しいと思っており、それが市場の伸びにも現れています。
2017年の74億2,000万米ドルの市場規模が2022年には317.4億米ドルになると予測されており、その間の年平均成長率は33.7%とMarketsAndMarkets社は「Smart Building Market, Global Forecast to 2020」で予測しています。
成長だけではなく、市場は確実に変化しています。新しいテクノロジーにより、これまでできなかったことができるようになり、職場はこれからさらに生産的な場となっていくでしょう。
すでに用いられてきたBMS(建物管理システム)と計測システムが、IoT(Internet of Things)に組み合わされることにより、不動産施設管理と運用方法は根本から変化しています。そしてまた、入居者や利用者の行動や、建物との関わり方も大きく変化しています。
それではさらに、IoTとそれがもたらす変化を、AIと組み合わせたらどのようなことが起こるでしょうか。データを大量に有している建物ほど、他の建物よりもスマートになることもあり得るということです。言い換えると、新しいビルよりも古いビルの方がスマートになる可能性が高いということです。
もちろん、これは必要なデータが適切に取得・管理されていることが前提ですが、それでも「新しい建物ほどスマートである」という、私たちがこれまで持っていた概念とは明らかに異なります。
ビルは何を知っているのでしょう? 私たちはそれを知る手段をIoTとAIで手にしました。ビルは、私たちの予想をはるかに超える、大きなことを教えてくれるかもしれません。
■ 「施設のデジタルツイン」がもたらすもの
新築でも既存であっても、ビルはライフサイクル全体にわたって貴重なデータを生みだし続けます。このデータこそが、ビルのライフサイクル全体をつなげる「黄金の糸」であり、ビルの「デジタルツイン」のDNAとなってデジタル上にミラーイメージを生みだします。
デジタルツインは、物理的な資産を正確にデジタル上に再現したもので、これにより、物理的な資産であるビルが実際にどのように使用されているかについて、より良い洞察を得ることができます。そして正しく維持することができれば、建物のライフサイクル全体を通して正確な状況を把握できます。
2017年の建設動向に関するCETCO Europeの調査では、25%の回答者が「意思決定に必要な意味ある情報・データに基づいたレポートの取得」こそが、もっとも重要な技術的懸念だと答えています。
この高品質なレポートの作成に必要なのがIoTです。不動産施設が、あるライフサイクルから次の段階へと進む際に、すべての利害関係者に意思決定に必要な情報を伝えることができます。
そして建築家や建設業者、デザイナーやサービス提供社などの関係者やビジネスパートナーに、将来に向けた変更や改善、イノベーションの実現に向けた変化を促進します。
■ 既存の不動産施設に新たな価値を付与する方法
現在、不動産施設に対するサービス産業はコモディティ化されており、新しいイノベーティブなサービスはほとんど生まれていません。SLA(合意サービス水準)に見合うサービスを提供しても、お客さまはそれを新たな価値の提供だとは見なしません。
既存の「古い」不動産施設に対して、今できることはなんでしょうか。どうすれば「運用中」のライフサイクルにある不動産施設に、新たな価値を付与してお客さまにお届けし、さらにお客さまを増やしていくことができるでしょうか?
IoTを通じて不動産施設からのデータを活用して建物管理を最適化し、適切な予防保全と状態保全を実現することで付加価値を向上させることができます。このアプローチにより、施設管理者は本来の必要性に応じた管理作業を計画することができ、従来の「スケジュールありき」の施設管理と一線を画することができ、コストと時間の両方を削減することが期待されます。
■ データが費用対効果を高め付加価値を生み出す
2016年、IBMリサーチは他6つの機関と共に、Brickと呼ばれる商用ビル施設におけるアセットを定義するための統一されたメタデータ・スキーマを開発しました。Brickはセンサーやサブシステム、およびそれらの関係性を具体的に定義づけるもので、ビル管理のためのアプリケーションに共通メタ情報基盤を提供することができます。
Brickは商業ビルを対象とした情報交換プラットフォームの仕組みとして用いることができ、人がどのように行動しているかをデータとして意味付けされていきます。その大量のデータが高度なアナリティクスやAIにより分析され、包括的な視点である「ナレッジグラフ」が作られます。こうして、ビルとその居住者がどのように設備などを利用しているかが、継続的に学習されていきます。そしてビルの「デジタルツイン」も常に最新に保たれていきます。
これらのデータやナレッジは、保守担当の技術者や管理者だけではなく、居住者にも大きなメリットを与えます。施設内のどこでどのようにエネルギーが使用されているか、どの場所がどの頻度で利用されているかが細かく分かるようになるので、施設利用をより計画的に予測し、調整できるようになります。
そして将来的には、個々の従業員に合わせた周囲の環境調整や、混雑度に合わせた予約不要の会議室やデスクの配置などを実現することもできるでしょう。
従業員の生産性を大きく飛躍させる施設が実現すれば、それは大きな価値をビジネスに与えるだけではなく、IoTは、高い費用対効果という価値も提供します。
■ まとめ: TCO 削減と驚きのビル体験を
「スマートなビル」に対する市場は成長しています。それは従来のビル管理にIoTを組み合わされることでビルのデジタルツインを作り上げ、さらにAIを組み合わせることで、ビルのライフサイクル全体を通じて価値を高めることができるからです。
そして施設管理者や技術者だけではなく、メリットを享受するのは居住者です。職務内容や好みに関わらず、居住者には生産性の高い環境が提供されるのです。
施設になんらかの大掛かりな変更や調査が必要になった際にも、施設所有者や管理者は、使用資材の材料や調達場所、施工・設置業者に関するデータなどをすぐに確認、提供することができます。さらに、断熱材、窓、空調(HVAC)システムがどのような状態にあるかを正確に掴むことで、予知保全による施設の運用管理を最適化し、TCO(総所有コスト)を削減に寄与します。
最後に、IoTによるデジタルツインとAIによる予知保全を備えたビルが提供するものを、もう一度列挙して終わりとしましょう。
秀逸な設計、優れた構造と建築、高品質のサービス提供。そして、関係者全員に驚きを与えるビル体験です。
問い合わせ情報
お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 cajp@jp.ibm.com にご連絡ください。
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土屋 敦 | Technical Lead, Watson IoT
当記事は、Buildings with DNA: why today’s “smart” buildings were never dumbを抄訳し、日本向けにリライトしたものです。
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