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[事例] エネルギーの無駄を50%カット。同時に費用とCO2排出量も大幅削減

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エコプラント社(省エネルギーと圧縮空気システム管理のエキスパート・カンパニー)事例

 

圧縮空気システムの非効率な使用は、最大でエネルギーを50%無駄にし、企業に巨額の負担を課します。エコプラント社は、IBM Watson IoTプラットフォームとIBM Cloud Functionsを用いて、機器のメンテナンスを最適化しエネルギーの無駄とコストを削減する監視・制御システムを構築しました。

 

■ 導入事例のポイント

・  ビジネス課題

汚染を防ぎ、エネルギー消費とコストを削減するために、食品および飲料会社は圧縮空気システムを最適効率で運用し、定期的に検査・保守を行う必要があります。

・ 課題への取り組み

エコプラント社は、継続的なエネルギー調査データとAIによる予測アルゴリズムを用いて効率最適化を実現しました。また、そのプラットフォームには、問題の事前特定とアラーム送信、そして動的コントロールシステムが搭載されています。

・ 導入結果

  • 世界規模の食品会社 – 年間17万ドルのコスト削減。エネルギー消費量25%ダウンによる700トンのCO2排出量削減。
  • プラスチック製造会社 – 年間7万ドルのコスト削減。消費量30%ダウンによる380トンのCO2排出量削減。
  • 圧縮空気システム最適効率による費用対効果を初日から発揮。

 

 

■ ビジネス課題の背景 – 非効率は高くつく

多くの人が日々口にしている袋入りのポテトチップスやペットボトルのドリンクには、袋詰めやボトリング作業に空気圧縮機が用いられています。さらに最近では、食品の切断や成形、機器の清掃など、工場内のさまざまな作業に圧縮空気システムが用いられており、食品加工業においては圧縮空気システムはそのプロセスに欠かせないものとなっています。

 

ただ一方で、最もエネルギーを消費する高コスト機器が空気圧縮機なのも事実です。米国エネルギー省によれば、工場における電力消費量の10パーセントから30パーセントが、圧縮空気システムにより消費されています。

さらに、不十分な空気圧縮機の検査・保守により効率性が下がっている場合、エネルギーの50%程度が無駄となってしまいます。例えば1,000キロワット・システムの施設の場合では、年間総所有コストで30万ドルを失い、その上2,765トンものCO2を排出して環境に負荷をかけてしまっているのです。

 

「漏れ、詰まり、パイプ破損、システム設計不良、不適切なメンテナンス、サービスコール遅延などの非効率は、製造現場や工場のダウンタイムのリスクを高めます。そしてそれは数百万ドルの費用をも意味します。」

エコプラント社のCEOであり共同設立者でもあるアビラン・ヤコブ氏はそう説明します。

その上、問題はコストだけに留まりません。非効率な圧縮空気システムが原因となって、微生物や微粒子、液体油や蒸気油などの汚染物質が食品容器に付着してしまい、食品の安全性に危険をもたらす可能性もあるのです。

 

このように、飲食物の製造プロセスに用いられる空気圧縮機には、健康および安全上の理由からも最高水準の環境と管理が求められます。汚染を防ぎ、エネルギー消費とコストを削減するために、定期的な機器の検査と保守作業を通じて運転損失を防ぎ、最適効率での稼働・運用を確かなものとする必要があるのです。

 

■ 課題への取り組み – 継続的な監視・制御・最適化を

EcoPlantは、圧縮空気システムを継続的にリアルタイム監視し最適化するソフトウェア(SaaS)ソリューションです。企業はエネルギーの無駄を大幅に削減し、メンテナンスを最適化し、コストを削減することができます。

さらに、機器の不調を予測して動的に制御することで、効率最適化とダウンタイムの最小化を実現できます。

 

エコプラント社は、同社の高度な分析エンジンであるEcoPlantサービスを、Functions-as-a-Service(FaaS)サーバーレス・プログラミング・プラットフォームであるIBM Cloud Functions上に構築しています。

IBM Cloud Functionsプラットフォームに組み込まれているイベント反応型、あるいは周期的なアクション・シーケンスを活用することで、プロアクティブなエンジンロジックを開発しました。

 

さらに、可用性と拡張性、そしてセキュリティーに優れているWatson IoTプラットフォームの優位性を、EcoPlantサービスに用いています。

EcoPlantサービスがどのように機能しているのか、具体的に見てみましょう。

 

    • システムの運転状況や正常性、流速やオイル温度、水温や周囲の気温などの環境データ、キロワットやアンペア、機器の稼働時間などさまざまなデータを、巧みに配置されたEcoBoxesと呼ばれるセンサーとスマートデバイスが収集します。

 

    • 各圧縮機内部のPLC(プログラマブルロジックコントローラ)制御装置と電力線上の外部センサーに接続されているEcoBoxesが、それらのデータをWatson IoTプラットフォームに送信します。

 

    • データは、EcoPlantサービスのAIベース予測アルゴリズムを用いた高度な分析エンジンにより、一連のビジネスルールを適用して分析されます。インターネット接続が利用できない場合や接続したくない場合には、ローカル環境で予測アルゴリズムを適用させることも可能です。

 

    • EcoPlantサービスがフィルターの詰まりなど人手を必要とする問題を感知すると、管理者へメールなどのメッセージが送られます。また、KPI(重要業績評価指標)に準じた問題解決推奨事項および計画を導き出し、EcoBoxesに実施指示を送ります。

 

  • EcoPlantサービスが各空気圧縮機を動的に制御し、保全最適化を実現します。

 

EcoPlantサービスは、インストールされた直後の手動モードの状態のときから、すぐに生産需要やオンとオフのパターン、エネルギー効率レベルなど圧縮機について学び始めます。

数週間後には、機器を制御する自動エンジンを有効にすることができますし、プラットフォームからの効率向上推奨を受け入れるかどうかを設定することもできます。

 

エコプラント社の共同創業者でありCTOでもあるヤロン・ハレル氏は以下のように説明します。

「この、初期半自動フェーズの間に、工場の管理者は”EcoPlantシステムは、この圧縮機の圧力設定を変更した方が良いと考えています。承認しますか?”などの質問や提案を受けることとなります。

これらを通じ、管理者は数日後にはシステムを信頼するようになり、完全自動フェーズへと変更するのです。その時点からアルゴリズムはさらに学習と改善を続け、EcoPlantシステムはより多くのデータ駆動型の意思決定を行うようになります。」

 


「予知保全ソリューションを提供するスタートアップ企業は少なくありません。でも、実際に問題を感知し、バルブを閉めたり圧縮機を制御したりするところがEcoPlantサービスの素晴らしいところなのです。

優れた制御戦略によりシステムを最適化することで、実際に何が起こり何を得られるのかをお客様に直接お見せすることできるのです。」

— エコプラント社 共同設立者 & CEO  アビラン・ヤコブ


 

■ EcoPlantサービス導入企業実績 – コストとエネルギー消費を大幅削減。ビジネスと地球を守る

    • 世界規模の食品および飲料会社 – 空気圧縮機の効率改善により、エネルギー消費量を約25%削減。5か月未満で合計8万5千ドル、年間17万ドルのコスト削減を実現。
      また、工場は年間700トン近くのCO2排出量を削減。

 

  • イスラエルに本拠を置く大手プラスチック製造会社 – 空気圧縮システムの監視、制御、最適化を通じ導入後4カ月未満で4万ドル弱(年間7万ドル)のコスト削減。
    また、エネルギー消費のおよそ30パーセントの削減と380トンのCO2排出量削減。

 

エコプラント社CEO、アビラン・ヤコブ氏はこう言います。

「私たちの顧客は、導入初日から費用対効果を目にし、実感することができます。エネルギー効率と予知保全の組み合わせは、すぐに効果を発揮するものなのです。

あるお客さまのケースでは、私どものシステムが圧縮機の故障を防ぎました。システムが問題を検知してアラートを送ったのです。お客さまがしたのは、それに対応して50ドルのフィルターを交換することだけでした。でも、その作業がなければ、空気ユニット全体の故障へとつながり、数千数万ドルの費用が発生する可能性のあるものでした。」

 

データの継続的な収集と集約により、EcoPlantサービスが、深刻な問題を引き起こしかねないオイル温度の上昇などの傾向を発見することもあります。CTOのヤロン・ハレル氏は、ある一つのケースを紹介してくれました。

「当社の分析により、過去4週間の間に、機器のオイル温度が3度上昇していた週があったことを発見したことがあります。原因として考えられるのは、周囲の温度上昇か、機器自体の問題です。私たちは工場管理者に”われわれのこれまでの経験から、問題に対処しなければ今後2カ月以内に機器は故障するでしょう”というメッセージを送りました。」

 

EcoPlant社のサービスにより、工場は最大で50%の省エネルギーを実現できます。

同様に、病院や商業施設でも、冷却設備やポンプにEcoPlantサービスを適用させることで、コストとエネルギーの消費を削減でき、それ以外のタイプの施設でも、EcoPlantサービスのインストール直後から、圧縮空気システム最適効率化がもたらす費用対効果をシステムダッシュボードを通じて確認することができます。

 

ハレル氏は最後に、今後の予定について下記のように語りました。

「私たちは現在、事前トレーニングを済ませた分析モデルをクラウド上に用意しています。そして今後12カ月以内には、そのトレーニング済み分析モデルをEcoBoxesにダウンロードしたハイブリッドタイプをお届けできるようになるはずです。このタイプを用いてもらえれば、トレーニング済み分析モデルをインターネット接続のないローカル環境でも実行いただけるようになります。

私たちは今後もIBMとのコラボレーションを進め、もっと進化させていきますよ。」


 

エコプラント社について

2016年に設立されたエコプラント社は、エネルギーの無駄を減らし、産業プラントの空気圧縮機のメンテナンス最適化を実現するAIベースの監視・制御システムをクラウド上で提供している企業です。

イスラエルに本部を置き、ヨーロッパ全土にサービスを提供しています。また、ミネソタ州のオフィスを拠点に、米国にも急速に市場拡大中です。

近年、カーギル社とエコラボの共同出資による「2019 Techstars Farm to Fork Accelerator」に選出されました。

 

問い合わせ情報

お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 にご連絡ください。

 

関連ソリューション: IBM Watson IoT Platform

 

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土屋 敦 | Technical Lead, Watson IoT

当記事は、EcoPlant – Cutting energy waste by up to 50 percentを抄訳し、日本向けにリライトしたものです。

 

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