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多様な視点を尊重したプロジェクトマネジメント術 ーIBMコンサルティング【Shift! #3】

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日本IBMの事業の柱の1つであるIBMコンサルティングでは、2021年10月のブランド創設以来、時代に即したビジネスを、これまで以上に迅速に、そしてより多くの共感とオープン性を持って進めています。社員はプロアクティブに自らの日々の行動や成長のあり方、お客様との関係性の築き方を見つめ直す取り組みを始めました。本シリーズでは、IBMの多彩な職種ごとに、社員がどのように自らの成長や仕事に向き合い、IBM Consulting Way(行動規範や仕事の流儀)を実践しているかご紹介します。第三回は、近年ダイバーシティが進むITプロジェクトにおいて、多様な視点を活かしたプロジェクトマネジメントに取り組むPM(プロジェクトマネージャー)職を取り上げます。

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下村 智紀 (Tomoki Shimomura)
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社 クロスインダストリー事業部所属。大手半導体メーカー様コーポーレートシステムのコンサルティング、保守、運用全般をリードしている。

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志賀 淳二 (Junji Shiga)
日本アイ・ビー・エム株式会社 IBMコンサルティング金融サービス事業部所属。 大手金融機関様のプロジェクトにてシステム開発・保守に従事している。

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櫻澤 智志 (Satoshi Sakurazawa)
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社 地域DXセンター事業部所属。公共、流通、メディア等の複数のプロジェクトにおいて、それぞれの札幌開発チームを統括的にマネージしている。

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岡本 啓介 (Keisuke Okamoto)
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社 クロスインダストリー事業部所属。大手半導体メーカー様プロジェクトにおいて開発・保守・運用に従事している。

はじめに

IBMコンサルティングの社員の行動指針(IBM Consulting Way)の一つに「私たちは、多様な視点を尊重します(We embrace diverse perspectives)」という言葉があります。多様なバックグラウンド、視点、スキルを持つ全ての人たちを尊重し、オープンで安心感のあるつながりを持って活動していこうとする考え方です。こうした多様な視点を取り入れることで、より強固な組織文化が構築され、人々が本来の自分らしさや意見を自信を持ってチームに共有できる環境を作り出すことができます。
社会的なダイバーシティの浸透や年々複雑化するITプロジェクトにおいても、多様な人々が混じり合い協業する機会が増えてきました。本記事では、IBMコンサルティングと日本アイ・ビー・エムデジタルサービス(IJDS)のプロジェクトマネージャーが日々実践している多様な視点を尊重したプロジェクトマネジメント術を、実際の経験を交えてご紹介します。

1. 会議では全員発言がキホン。誰が言ったかに関わらず本当にいい意見を採用する

-製造業のお客様の運用保守プロジェクトを担当している下村さん、多様な視点を活かすためにどのようなことを実践していますか。

ijds-sb06-a下村: 私が参画しているプロジェクトでは、所属組織や国籍、文化が異なる人やさまざまな立場・役割を担う人々が混ざり合って仕事をしています。属性の異なる人たちが大勢集まっているにも関わらず、メンバーの間には隔たりがありません。私はIBMに入社する前に他社で働いた経験がありますが、所属や立場など関係なく、誰でも自由に意見を言える「風通しの良さ」は、IBMならではだと感じています。

私自身も、日頃からフラットでオープンなチーム作りを心掛けていて、チームメンバーの誰もが話しやすい雰囲気を作るようにしています。例えば、会議の席では全員に発言してもらうようなことです。黙っている人がいれば、「XXさん、どう思う?」とフランクに声をかけて発言してもらっています。これはなにも立派な意見を引き出そうとしているわけではなく、皆がお互いに気づきや意見を遠慮なく話せるようなインクルーシブなチームでありたいと思ってのことです。

チームがスタートしたばかりの頃は、自分に関係のない話題の時は口を開かない人もいましたが、少しずつ慣れて、今では皆がそれぞれの視点で発言するようになりました。議論が活発になると、建設的な意見がたくさん出てくるようになるものです。最終的にチームの意見として取りまとめる際には、誰が言ったかは関係なく、プロジェクトとしてその時に最も必要なものを選び出すようにしています。自分では思いつかなかったアイディアや新しい視点を得られますので、このような多様なメンバーによるディスカッションは、プロジェクトの推進には欠かせない要素になっています。

2. 全チームが同じ方向を向いて進むための「N:N」のコミュニケーション

-志賀さんは金融機関のプロジェクトでたくさんのチームを束ねているそうですね。多様な人材、チームをまとめ上げる秘訣はどんなことですか。

ijds-sb06-b志賀: 私が担当している大手金融機関様のプロジェクトは、いろいろな専門チームが参画しています。例えば、コンサルタント、デザイナー、アーキテクト、デベロッパー、プロジェクト・マネージャーなど、専門スキルを持つ各チームが集結して1つのプロジェクトを構成しています。
このような場合、どんなに優秀な専門チームが集まっても、互いにバラバラではうまくいきませんし、相乗効果も期待できません。そこでプロジェクトマネージャーが、関係するチーム同士を繋げてOneプロジェクトとして最大のパフォーマンスが発揮されるように動かなければなりません。

例を挙げてお話しましょう。デザイナーチームはより良い顧客体験を追求してUI/UXをデザインしますから、時には開発のフィジビリティ(実現可能性)にはとらわれずにアイディアを出すことがあります。一方、デベロッパーチームはテクノロジーを実装して動くものを作る役割ですから、どんなに素晴らしいデザインであっても、機能を満たすものを作ることができなければ意味がないと言います。お互いに良いものを作りたいという思いは同じですが、視点が異なることで意見が衝突してしまうことがあるのです。多様な人々が集まれば集まるほど、ぶつかるケースもおのずと増えるということだと思います。

では、プロジェクトマネージャーとして多様な意見をまとめるためにはどうすればいいか。
基本的には各チームの言い分を丁寧に聞いて、対話を重ねながら意見をすり合わせ、関係者全員を正しい方向に向けていくしかありません。
そのために私が始めたことは、1:Nでなく、N:Nでコミュニケーションをとることです。私1人だけで何でもまとめようとするのには無理がありますから、まずは私の考えを理解し、同じ方向に足並みを揃えて伴走してくれるメンバーを私(プロジェクトマネージャー)のチームとして編成しました。私と同じ判断ができるメンバーを揃えて、調整しなければならないたくさんのチームと、「チーム対チーム」で話ができるようにしたのです。そうしてみると、1人で話を聞く何倍も相手チームの話や意見を受け止めることができ、そこからの調整やすり合わせを効率よく行うことができるようになりました。

N:Nのコミュニケーションを行うためには、各チームのリーダーだけでなく、チームを構成するメンバー1人1人がリーダーシップを持って、他チームと意見交換できるようになってもらう必要があります。かつては、チーム内もトップダウンでリーダーが舵取りをしていましたが、多様な人材、多様な視点が集まるプロジェクトでは一人一人がリーダーシップを持って他者と協業する意識を持つことが大切です。もちろんチーム内で合意を得ていることが前提となりますが、何でもリーダー任せ、人任せにせず、若手社員であってもリーダーシップを持って自分の担当業務にあたる。交渉が必要であれば、相手の話を傾聴し、考え、粘り強く話し合う習慣を付けるのです。こうすることで本人にコミュニケーション力が付きますし、担当業務への責任感とモチベーションが上がります。この動きがたくさんのチームにも広がれば、確実にプロジェクト全体のパフォーマンスも向上します。多様な役割や立場の人が多い場合は、ぜひN:Nのコミュニケーションを試してみてください。

3. ロケーションも役割も異なる遠隔チーム編成では、メンバー全員がコミュニケーション力を鍛える

-札幌の地でプロジェクトマネージャーを務める櫻澤さん、プロジェクト拠点が複数あるチーム体制で協業する際に気をつけていることはありますか。

ijds-sb06-c櫻澤:私が所属する札幌のIBM 地域DX開発センターでは、首都圏のプロジェクトメンバーと一緒に、お客様企業のシステム構築や運用保守などの開発業務を行っています。1つのプロジェクトの中でも、物理的なロケーションや役割の違いから、認識の違いや意識のすれ違いが発生することがよくあります。上で志賀さんが述べているように、互いに要求するだけではプロジェクトは進みませんから、そこをすり合わせて調節するコミュニケーションが重要になります。

私のプロジェクトのケースでは、お客様の近くにいる首都圏のチームから、よりお客様の視点に近い意見が出されることが多くあります。それに対し、札幌のチームにいる開発者たちは、技術的な側面から意見を述べます。そうすると、どうしても話が噛み合わないことや意見の相違が起きることがあります。想像していただくとわかりやすいと思いますが、1つの場所の大きなプロジェクトルームに集まって仕事をしていれば、他のチームの様子も見てとれますし、細かなことでもさっと意見を交わして調整できます。しかし遠く離れた地域同士ではそうは行きません。昨今、社員のリモートワークでコミュニケーション不足に陥るケースがよく耳にしますが、チームが分散している場合のプロジェクトマネジメントにおいても、コミュニケーションは最も難しく、かつ大切にすべきポイントだと言えます。

そこで札幌の開発チームメンバーには、日頃から積極的にいろいろな会議体のオンラインミーティングに参加して自分とは異なるチームや役割の人とあえて話す機会を増やすことを勧めています。自チームだけの閉じた世界だけでなく、多様な人々がいる会議に参加することで、他者の立場や言い分を理解しようとする姿勢が生まれますし、自分の考えに固執せずに、どうするのが1番いいかを客観的に考えられるようになるからです。このようなコミュニケーション力は、技術力と同じくらいエンジニアには欠かせないスキルであることを、開発者メンバーに知って欲しいという思いもあります。

ところで、いま日本では、首都圏や大都市の企業だけでなく地域でのDXが加速していますが、DXには地域のさまざまなステークホルダーや各方面の専門家、開発チームによる協業が欠かせません。そのためにも、地域のことをよく理解したうえでプロジェクトを推進できるプロジェクトマネージャーがもっと必要になるのではないかと考えています。IBMでもいろいろな地域にDXセンターを開設しているところですが、私は地域DXセンター同士の、いわば横の連携を大切にしていきたいと思っています。地域ごとに事情や働くひとの状況も異なりますが、例えば私がこれまで培ってきた首都圏と地域のチームをつなぐコミュニケーションや調整のTipsなどの共通的なことは、他の地域のプロジェクトマネージャーにも共有していきたいのです。プロジェクトマネージャー同士が連携することでまた新たな視点を得られ、より多様性を活かせるプロジェクトマネジメントのノウハウを学び合えるのではと期待しています。

4. 多様性が増せばミスコミュニケーションが増えるのはやむを得ない。自分の中の「当たり前」を忘れることから始めよう

-岡本さん、自分以外は全員外国人というチームで仕事をしているそうですね。国や文化の違うメンバーとのコミュニケーションでどのような工夫をしていますか。

ijds-sb06-d岡本: 私はキャリア入社で、IBMにはいろいろな人がいて、分け隔てがなく、みんなが自分の役割を果たして成果を上げている会社という印象がありました。自分も成長の機会や活躍の可能性が増えそうだと思い、IBMに転職したのです。
さて、そんな私が入ったチームは、私以外は全員が外国の方でした。はじめの頃は戸惑いもあり、チームドライブに苦労しました。成果をあげるどころか、こちらが想定したアウトプットにならないことや、言葉の行き違いが頻繁に起きて、よく頭を抱えたものです。当時の私は、行き違いの原因が文化や国民性の違いから来るものなのか、個人の能力や仕事への取り組み方の問題なのか判断できなかったのです。外国の方と一緒に仕事をする難しさを痛感しました。
しかし、考えてみればメンバーの多様性が増すほど、悩みやミスコミュニケーションが増えるのは当たり前ことです。それならば、試行錯誤を繰り返しながら少しずつ信頼関係を築いていけばいい、と気持ちを切り替えて、焦らず私なりにコミュニケーションに工夫を重ねました。私が実践して効果があったのは以下のことです。職場の研修で習った「日本と中国の文化の違い」を思い出して参考にしました。

・ 曖昧に伝わらないよう、イメージ(図)で示す。
・ コミュニケーションは簡潔な文章で。
・ 依頼したアウトプットが私の期待と違う場合は、なぜそうなったのか?を話し合う。期待値とのギャップを示して納得してもらう。
・ 相手にあったフォローのやり方を考える。感謝を示す、休暇を取りやすくするなど。

こうしたことを繰り返し行っていくことで、しだいにメンバーとのコミュニケーション上の齟齬が減り、仕事がうまく回るようになりました。この経験から得たことは、多様性あるメンバーとのチームビルディングには、便利な近道も特効薬もないということです。

コミュニケーションの第一歩は、自分の中の思い込みや「当たり前」を捨て、相手との違いを意識するところから始めるのが良いと思います。双方で分かり合えるための工夫を重ねて、お互いに理解する意識を醸成する。次にようやく、一緒に仕事を進めるための正しい道筋に乗せるにはどうするかを考える、という流れです。大切なことは、互いに理解しようとする意識を持つこと、そのためにコミュニケーションには時間を取り、互いが納得するまで対話することが1番だと思います。

おわりに

今回話を聞いた4名のプロジェクトマネージャーは皆、日々多様な視点を尊重し、多様性を活かすチームづくりに取り組んでいます。彼らが共通して述べたのは、コミュニケーションが最も大切にすべきポイントである、ということです。企業のダイバーシティが進んでいることもあり、これからいっそう職場環境やプロジェクトにおいて年齢、性別、国籍、地域、役割などいろいろな属性の人々が混ざり合い一緒に仕事をしていくことになると予想されます。皆さんが多様性のある組織やチームづくりを行う場合、または皆さん自身が多様性ある組織の一員となった場合には、本記事で紹介したコミュニケーション方法を参考にしてみてはいかがでしょうか。

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ijds author
文・写真:加藤 智子 
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス(IJDS)事業企画推進 ラーニング&ナレッジ担当

 

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