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IT人材不足に対応する5つのインテリジェント・オートメーション戦略

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優秀なIT人材を育成し、効率性と拡張性を高めるために役立つ5つの戦略提言

IT部門が直面している人材不足は深刻です。IDCが2022年第1四半期に実施した調査では、IT幹部の70%以上が、人材不足は喫緊の課題であり、それが原因でテクノロジーのモダナイゼーションや変革目標の達成に向けた進捗状況に遅れが生じていると答えています。現在の人材不足は当面解消されそうにありません。ガートナーが2022年1月に発表したIT支出予測によると、技術職の欠員の半数は6カ月間にわたって補充されておらず、こうした傾向は今後も続く見込みです。

IT人材不足は、従業員の離職率の高止まりと相まって、組織に蓄積された知識の喪失や手動プロセスの中断、計画外のダウンタイムを招いています。その結果、新製品の市場投入の遅れや顧客満足度の低下につながっています。さらに悪いことに、日常業務の負担が残りのIT従業員に重くのしかかり、燃え尽き症候群が増加し、本質的な問題がさらに長期化します。

インテリジェント・オートメーションは、従業員体験を向上させることで人材に関する問題の予防や解消を実現できます。やはり、IT部門の卓越性は、優秀な人材を発掘しさえすれば得られるというものではなく、優秀な人材を満足させ続ける組織文化と従業員体験を創造していく必要があります。優秀な従業員たちがこの分野に足を踏み入れたのはイノベーションのためであって、事後対応的な責任に縛られたり、運用上の負担に消耗させられたりするためではありません。単純作業を自動化し、サイロ化を解消し、コラボレーションをサポートするITソリューションにより、優秀な人材にふさわしいツールを与えるべきです。

以下に示す5つの戦略提言と関連テクノロジーは、優れた技術系人材が育つ環境を構築するために有用で、IT人材の効率性と拡張性の向上を実現します。

 

1.アプリケーション・リソース管理を自動化し、手動での配分や当て推量を最小限に抑える

アプリケーション・リソース管理ソフトウェアは、アプリケーションのリソース活用のあらゆる階層を絶えず分析して、アプリケーションの実行に必要なものを必要なタイミングで確保することができるように設計されています。

IT従業員体験の向上効果:従来のアプリケーション・リソース配分プロセスは、時間と手間のかかる計算作業の繰り返しで、通常は当て推量やオーバープロビジョニングが伴います。チームにとって負担となる、得てして事後対応的な作業(コンテナのサイジングやリソースの決定など)の多くを自動化することにより、ITチームは計画立案にかけていた時間を収益創出機能の構築に振り向けることが可能になります。

ビジネス上のメリット:ソリューションの内容にもよりますが、アプリケーション・リソース管理ソフトウェアは、アプリケーション・パフォーマンスを最適化しながら、最大33%のクラウド・コスト削減を確実に実現します。アプリケーションからインフラストラクチャーまでのITサプライチェーン全体をつなぎ合わせることでサイロ化を解消し、手動での配分や当て推量からマルチクラウド環境全体にわたるリアルタイムかつ動的で信頼性の高いリソーシングへと移行することができます。

実際のROI:アパレル企業のCarhartt社は、需要の急増を受けてハイブリッドクラウド・インフラストラクチャーの対応を容易化するために、IBM Turbonomicアプリケーション・リソース管理の運用を開始しました。同社のITチームは、このソフトウェアを使用してハードウェア、仮想化、およびアプリケーション・パフォーマンス管理(APM)ソリューションの間のリソース関係を明らかにし、自社のアプリケーション・スタック全体をつなぎ合わせました。IBM Turbonomicソフトウェアは、改善機会の特定にも役立ちました。その結果、ITチームは年末商戦期間中のパフォーマンスの問題を回避することができ、過去最高の売上高の達成に貢献しました。

また、Carhartt社は仮想マシン(VM)の配置を完全に自動化しました。これは、全体的なパフォーマンス改善に加えてリソース消費の15%削減にも役立ちました。さらに、同社のITチームは、IBM Turbonomicをクラウド・デプロイメントの最適化にも利用しています。その結果、ワークロード・パフォーマンスを確保しながら、Microsoft Azureクラウド環境の効率を45%改善することができました。

「Turbonomicによるアクションの自動化のおかげで、パフォーマンスが改善されただけでなく、チームのリソースに余裕ができました。現在では日常業務に振り回されずに、イノベーションにかけられる時間が増えました」 — ギャリー・プリンドル(Gary Prindle)氏、Carhartt社シニア・システム・エンジニア

 

2.可観測性と即時のきめ細かいコンテキストにより、コード変更の影響を素早く理解する

APMおよび可観測性ソフトウェアは、最新の分散アプリケーションを深いレベルで可視化して問題の特定と解決を自動化し、迅速化するように設計されています。システムの可観測性が高まるほど、特定したパフォーマンスの問題から根本原因を素早く正確に導き出すことができます。追加のテストやコーディングは不要です。

IT従業員体験の向上効果:パフォーマンス・テストは、アプリケーション開発を成功させる上で不可欠ですが、特定のエンドポイントのロード時間のテストなど、膨大な手作業が必要になることもよくあります。アプリケーションのエコシステムをリアルタイムの自動検出によって常時モニタリングできるツールがあれば、問題の特定と解決を迅速化し、製品の市場投入までにかかる時間を短縮できるほか、コラボレーションの強化にも役立ちます。すべてのチームがデータに基づくコンテキストで問題の直接の原因を明らかにし、それによってデバッグや根本原因分析に必要な時間を短縮することが可能になります。

ビジネス上のメリット:適切な可観測性ソリューションは、最終的に企業がより良い製品をより早く市場に投入するための助けになります。また、より多くのサービスをこれまでになくスピーディーに市場に投入し、その過程で新しいアプリケーション・コンポーネントをデプロイしようとする場合、従来のAPMの1分に1回のデータ・サンプリングでは不十分です。エンタープライズ可観測性ソリューションなら、特にカスタマー・エクスペリエンスの向上が必要な場合やビジネスやIT運用に影響を与えるアプリケーションの数が多い場合に、ハイブリッドクラウド環境全体に広がる最新アプリケーションの複雑性をより的確に管理できます。

実際のROI:Vivy社は、患者と医療提供者をつなぐ仲介業者です。同社にとって、患者向けアプリケーションが常に利用可能であることは極めて重要です。アプリケーションが好評を博し、毎秒2億件を超えるリクエストを受信するようになると、同社の開発者は一部のサービスの実行速度が低下していることに気づきました。IBM Observability with Instanaは、対応するすべてのイベントを含め、サービスの速度低下やリクエストに関する問題が発生すると単一のインシデントを提起し、最も確率が高い根本原因を特定します。Vivy社のエンジニアは、この実用的なデータに基づき状況を素早く評価し、問題を解決することができます。このソフトウェアにより、Vivy社の平均修理時間(MTTR)は3日から1日以下になり、66%も短縮されました。

「Instanaは素早く簡単に導入できただけでなく、設定不要ですべてのサービスとそれぞれの依存関係を検出することができました」 — キリル・メルクシェフ(Kirill Merkushev)氏、Vivy社バックエンド責任者

 

3.プロアクティブ・インシデント管理により、「避難訓練」の必要性をなくす

インシデント管理は、ITチームがサービスの中断や計画外のイベントに対応する際に従う重要なプロセスです。プロアクティブ・インシデント管理ツールを使用すれば、インシデントに確実に優先順位を付けて素早く解決し、ユーザーにより良いサービスを提供することが可能になります。

IT従業員体験の向上効果:ITチームが中断に対して周到に備えるには、運用上のイベントや予期しないイベントを素早く分析し、関連付け、学習することができなければなりません。しかし、誤検出の検証や大量のデータの管理に費やす時間が長いと、従業員が疲弊する原因になります。プロアクティブ・インシデント管理ソフトウェアは、従業員が誤検出に浪費する時間の最大80%*を削減できます。その結果、チームは根本的な問題のプロアクティブな解決に時間を振り向けることが可能になります。

ビジネス上のメリット:イベント・ノイズを最小限に抑え、大量の非構造化データと構造化データをリアルタイムに関連付けることにより、データに基づくサービス品質の改善、多大な損失を伴う可能性があるダウンタイムの最小化、およびカスタマー・エクスペリエンスの向上をプロアクティブに実現できます。

実際のROI:Electrolux社は、ネットワークの「ノイズ」を効率的に削減し、運用を正常に維持するためのタスクを特定する必要がありました。Electrolux社グローバル・ソリューション・サービス担当アーキテクトであるジョスカ・ロット(Joska Lot)氏は、「1年の間に、同じ問題を千回は修正しています。当社には、これらの活動を[1インスタンスあたり]1時間かけて手作業で管理する人たちがいました」と言います。そこで、IBM Cloud Pak for Watson AIOpsを導入したところ、解決に必要な時間が合計3週間から1時間に短縮されました。年間1,000時間を要した単純作業を自動化することによって、オペレーターの専門知識をより価値の高いハイレベルなタスクに適用できるようになります。例えば、AIOpsのソリューションに入力可能な新規の相関基準を特定することや、ルールとアクションをローカル条件に基づいて精密化することなどが挙げられます。

「当社では、1日あたり約10万件のイベントが発生します。その大海原の中で、一滴の毒を特定することが非常に重要となります。命を守るために、私たちはそれを取り除く必要があるのです」 — ジョスカ・ロット(Joska Lot)氏、Electrolux AB社、モニタリングおよびイベント管理、グローバル・ソリューション・サービス担当アーキテクト

 

4.アプリケーション・リソース管理により、アップタイムと支出をリアルタイムで確実に最適化する

アプリケーション・リソース管理ソフトウェアは、アプリケーションの実行に必要なものを確保するために役立ちます。手動でのプロビジョニングを削減するだけでなく、クラウド・コストやインフラストラクチャー・コストの削減にも貢献します。

IT従業員体験の向上効果:アプリケーションをオートパイロットで実行することにより、ITチームはイノベーションやカスタマー・エクスペリエンスの向上にエネルギーと時間を振り向けることが可能になります。

ビジネス上のメリット:アプリケーション・リソース管理ツールは、アプリケーションに必要なものを必要なタイミングで与えるだけで、パフォーマンスを確保し、クラウド・コストやインフラストラクチャー・コストを削減することができます。

実際のROI:貧困者や社会的弱者に医療を提供しているProvidence社は、予算面で深刻な問題に直面していました。そうした中、新型コロナウイルス感染症が大流行し、無駄を省いてコスト効率を維持する必要性がさらに高まりました。そこでIBM Turbonomicを導入して、ピーク需要時もアプリケーション・パフォーマンスを確保しながら、最適化アクションを通じて200万ドル以上のコスト削減を達成しました。

「2~3年をかけてクラウドの柔軟性の概念を広める代わりに、クラウドを利用してコストやパフォーマンスの管理をどう改善できるかを実証しました」 — ブライアン・デ・ブール(Bryan de Boer)氏、Providence社エグゼクティブ・ディレクター

 

5.ライセンス/リソース管理ツールにより、ライセンス・コンプライアンス(など)を自動化する

ソフトウェア・ライセンス管理ツールは、ソフトウェアの全社的な運用状況の追跡と評価を支援することで、ライセンスの適切な管理を実現します。これは、ライセンス・システムを最適化し、収益を押し上げるために役立ちます。

IT従業員体験の向上効果:ハイブリッドIT環境では、その複雑さゆえにさまざまなベンダーのソフトウェア、ハードウェア、およびクラウド・ソリューションが必要になることもよくあります。これらのソリューションの管理においては、違約金の回避とセキュリティー・リスクを低減するためにライセンス・コンプライアンスを維持することは言うまでもなく、プラットフォーム全体にわたるインサイトの関連付け、ライセンス・コストの抑制、リソース投資の最適化などの責任が、貴重なITリソースに重くのしかかります。ライセンス/リソース管理ソリューションは、手作業によるソフトウェア・ライセンス/リソース最適化を自動化することで、IT人材がソフトウェア・ポートフォリオの適正化をプロアクティブに行えるようにします。

ビジネス上のメリット:ライセンス/リソース管理ツールを使用すれば、リソースの過剰配分をなくしてライセンス・ワークロードをサポートし、サービス終了に伴う停止を回避するとともに、バージョン管理の改善によってセキュリティーの脆弱性を削減することができます。また、ソフトウェア・コンプライアンス違反に伴う違約金の発生リスクを緩和して高額請求を最小限に抑えるためにも役立ちます。

実際のROI:Hobson & Companyが実施した調査によると、Flexera One with IBM Observabilityのようなソリューションは、IT資産データの調査や検証にかかる時間を60%短縮し、外部監査の管理にかかる労力を80%削減し、ソフトウェア・ライセンス支出を合理化によって2%削減することができます。

「Flexera IT資産管理では、高い価値を直ちに得られます」 — Hobson & Company

 

インテリジェント・オートメーション・ソリューションに着手しよう

テクノロジーは人の役に立つべきであって、その逆ではいけません。インテリジェント・オートメーションでIT運用を合理化できれば、優秀な人材を解放してイノベーションや有意義な仕事に集中させることが可能になります。運用上の負担に費やす時間が減れば、全体的な従業員体験が向上するほか、デバッグやアプリケーションのリソース配分、インシデント解決などのタスクが簡素化されます。

IBMのインテリジェント・オートメーション・ソリューションがIT人材不足への対応にどう役立つのかについては、以下のリンクを参照してください。

 

*出典「 Forrester: The Total Economic Impact™ of IBM Cloud Pak for Watson AIOps with Instana」(2021年制作)


IBM Executive, FinOps Foundation Board Member

マンディー・ロング(Mandy Long)

IBMオートメーション担当バイスプレジデント


この投稿は2022年5月23日に米国Cloud Blogに掲載された記事 (英語) の抄訳です。

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