社員が語る「キャリアとIBM」

正解がない時代に、IBMのプロジェクトマネージャーに求められるもの

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社員が語る「キャリアとIBM」では、IBM社員のキャリアや仕事内容をインタビュー形式でご紹介します。

今回は、IBMコンサルティング事業本部、保険サービス部のプロジェクトマネージャー、S.A.さんのインタビューです。

Q.現在の所属部署と入社時期を教えてください。

IBMコンサルティング事業本部の保険サービス事業部、保険デリバリーの組織に所属しています。
2017年5月に、日本IBMに2度目の入社をしました。

Q.「1度目の入社」に至る経緯を教えてください。

1度目の入社は2008年4月です。新卒で入社しました。

元々私は「世の中の人たちに使ってもらえるものを作りたい」という思いが強く、大学、大学院と機械工学を学んできました。当初はハードウェア的な製品を作りたいと思っていたのですが、いろいろな方と話をする中で、ソフトウェア的な物作りが世の中にあることを知り、この業界を志望し、IBMに入社しました。

Q.1度目の入社後は、どのような仕事に携わっていたのですか?

新人研修を終えてすぐ、地方銀行様向けのインターネットバンキングの開発、保守に携わりました。

開発メンバー、開発リーダー、小規模のプロジェクトマネージャーと職位を変えながら7年間、仕事をしました。7年間で上流から下流までを一通り経験し、満足感を得ることができました。

Q.「満足感を得ていた」のに、なぜ転職をしたのですか?

会社の中で評価をいただいていましたが、同時に、市場に出た時に自分の能力や評価はどうなのか、興味が出始めたのがきっかけです。

ちょうどその時、他社からお話を聞く機会がありました。上場する直前のタイミング、IBMのように成熟した会社ではない点、変動期の会社に参画してみる面白さ、自分の市場評価の判断がつくかもしれないという思いもあり、転職を決意しました。

転職先の会社では、コンサルタントという肩書きで仕事をしていました。お客様にアドバイスをし、方針を決める仕事です。IBMで培ってきたスキルや、学んできたことは外でも通用しましたし、お客様にご評価いただくこともできました。

Q.具体的にどのようなスキルが社外でも通用しましたか?

プロジェクトマネジメントのスキルです。新卒で入社し、開発メンバーだった時からその勉強をしていました。また、IBMで実践を伴って学んだことが、血肉になっていることも感じました。お客様が困っているときに、教科書的なアドバイスだけではなく、実例も交えながら「本当に大事なのはどのような点なのか」をお伝えすることができたのは、IBMでの7年間の経験があったからだと思います。

Q.「2度目の入社」に至る経緯も教えてください。

転職先でコンサルタントとして仕事をする中で、元々自分がやりたかったのは何か、立ち返る瞬間がありました。

私は、「モノづくりに近いところで仕事をし、プロダクトやサービスに自分の考えや思いを乗せたいという思いが強い」ということに、外に出て、違う仕事をして気がつきました。枝葉の仕様まで拘ることができる立場の方が、自分に合うと思ったのです。

それがきっかけで2度目の転職活動をしている時に、IBMの社員から、銀行業に参入しようとしているお客様の新しいインターネットバンキング構築プロジェクトで、プロジェクトマネージャーを探しているという話を聞きました。新たな銀行を作るプロジェクト自体が珍しく、その重要な顧客接点であるインターネットバンキング領域のプロジェクトマネージャーができることは自分の経験にとって良いものが身につけられると思い、IBMに戻ってくることを決めました。

Q.キャリアの節目節目で大事にしてきたことを教えてください。

何があれば自分が満足するのか、給与なのか、社会的地位なのか、それが何なのかを考えてきました。その上で、自分は何を一番やりたいのかを大事にしてきました。そしてやりたいことができる立場や会社はどこなのか、どのキャリアが一番近いのかを考えてきました。

社会的な責任を伴い、社会に一定のインパクトを出せるような会社でモノづくりの最前線に関わっていたい、というのが今の私のやりたいことです。自分の名前が世の中に残る必要はありません。名前が残る、残らないに関わらず、モノづくりに関わっている人は、一定のプライドを持っています。名前が出ないからといって、手を抜くことはありません。作ったものが自分の満足いく品質だったら、それで良いと思います。

Q.保険業界のお客様の担当になった経緯を教えてください。

新しい銀行の立ち上げプロジェクトが成功裏に終わり、次のキャリアを探す中で、たまたま生命保険のお客様の大きなプロジェクトでプロジェクトマネージャーが必要だということになり、担当させていただくことになりました。

Q.それまで担当していた銀行のお客様との違いはありましたか?

銀行のお客様は、20年前くらいからFinTechが台頭し、収入源を見直さなければならない状況に直面してきました。その中で試行錯誤を繰り返し、新しいサービスを生み出し、時に他社や他行に追随する形でサービスを考えて来られた印象です。

それに対して保険のお客様は、外部の企業が保険業に参入してくることはありましたが、あくまで顧客接点の有り様やプラットフォームが変わったという要素が強く、根幹にあるサービスやプロダクトはさほど変わっていない、というのが銀行のお客様と保険のお客様の大きな違いだと思います。

Q.保険のお客様が抱えている課題感を教えてください。

生命保険のお客様は、お客様の生活の質を高めたい、保険を上手く使ってもらうことで何か問題があったときに金銭的にリカバリーし、安心して生活してもらいたい、という思いを抱いています。また、何かあった時に契約にもとづいてお金を支払うだけではなく、そうでない時にも必要な情報を提供し、何かあった時に備えて、より良い商品に切り替えてもらいたいとも思っています。

お客様に「もっと色々と知ってほしい」「もっと保険を上手く使ってほしい」と思っているわけです。ですが、なかなかお客様にご提案することができていません。

Q.なぜ、保険のお客様は、使ってほしい方々にご提案することができていないのですか?

生命保険は一度契約をすると、なかなか次の接点を作りづらいところがあります。ここは「給与の振り込み」や「ローン契約」等で定期的に、そしてライフイベントのタイミングで、お客様と接点を持てる銀行との大きな違いかもしれません。より良いサービスを提供したいと思っていても、接点が作りづらい。一方で、関わりすぎるとお客様から避けられてしまう。そのバランス感覚が難しいのが現状です。

Q.ジレンマを抱えているわけですね。

「お客様に情報提供をしたい」という方向性を否定する保険のお客様はいらっしゃらないと思います。では、いくらだったら適切な投資なのか、その投資判断の難しさに直面されています。

例えばコストを削減するソリューションなら、見込める効果で、その投資が適切なのかの判断ができます。ですが、お客様とのコンタクトポイントの質と量を増やすのは、いくらが投資ラインなのか、どこが損益分岐になるのか、誰にも分かりません。

何年後を見据えるのか、という問題もあります。10年先、20年先を見据え、新たなチャンネルを活用して契約関係を持ち、その後も良い関係を築いたお客様とお付き合いをする、という考え方があります。10年20年ではなく、さらに長いスパンで考えることもできます。20代で保険に入り、80代、90代になった時にやっと活用される、ということもあるかもしれません。70年後です。何年後を見据えた投資なのかによって、投資判断が変わってきます。

会社の中でも、それぞれの役員や担当の方々で思いが違います。やるべきだと思いつつ、なかなか踏み込めず、構想で止まってしまう要因です。

Q.そのような課題を持たれているお客様が、IBMに期待してくださっている点は何でしょうか?

世の中にあるソリューションをどう具体的に組み合わせると良いのか、まだお客様の中にアイデアがないケースや、あったとしてもそれがベストなのか、そうではないのか判断が難しいケースがあります。そういった判断や、そもそも、どのようなアーキテクチャーが良いのかをお客様にご提示し、利用する全体サービスの設計をトータルにコンサルからデザインし、構築サービスまで提供してくれるベンダーを探しておられる印象です。それがIBMへの期待なのだと感じます。

また、IBMが求められているのは、自由な発想でお客様と共に頭を悩ませつつ、実際に手を動かし、世の中にない新しいサービスを生み出すお手伝いをすることだと思います。IBMで保険のお客様を担当させていただく醍醐味はこの点です。

Q.プロジェクトマネージャーについてお聞きします。プロジェクトマネージャーに求められるものは変化していますか?

本質的には変わっていませんが、今まで以上に、プロジェクトマネージャーは、お客様のパートナーとしての役割が期待されています。

保険のお客様に限らず、今はお客様の中に正解がない時代です。こういうことをしたい、という目的や経営目標、KPIはありますが、howがない時代です。

従来のプロジェクトでは、お客様の中に絶対の解がありました。Aだったら次はBなのかCなのか、お客様にお聞きすれば正解が得られました。プロジェクトマネージャーは、QCDの面積を最大化することを考えていれば良かったわけです。

今は、そうではありません。お客様の中に正解がない場合が、どんどん増えてきています。Aがきた場合、次がBなのか、Cなのか、お客様も迷っています。だからこそ、こうした方が良いのでは、という議論をお客様と行うことが必要なのだと思います。「Bの方が正しいかもしれないけど、コストが無駄に掛かるから、割り切ってCをやりましょう」のような提言も必要になってくると思います。お客様とディスカッションをしながら、正解を持っていないお客様と、正解を探す。変わってきています。ある意味、コンサル的な能力が必要になってきているのだと思います。

Q.そのような期待に応えられる人材になるために必要なものは何でしょうか?

ただ言われたことを行うのではなく、考え、反芻すること。新しい技術や業務内容を積極的に知識として取り入れ、知恵としてどんどん吸収して理解しようとする姿勢を持つこと。お客様の仰っていることを表面的にトレースするのではなく、疑いながら、本当はこういうことがやりたいのでは、と考えること。

そういうことを実践するためには、テクニカルにも、業界動向にも、直ちに役立つかは別として、新しい知識を蓄えていくことが大事だと思います。

Q.IBMのどのような点が、新しい知識を蓄えるのに役立っていますか?

学びの選択肢が、多彩に用意されている点です。

IBMには、いろいろな研修があります。調べれば様々な情報が出てきます。自分の担当製品や関連する知見も、容易に情報を入手できます。勉強のネタに困らないくらいです。ラーニングコンテンツを提供するUdemyを無料で使えます。英語の学習サービスも無償で提供されていまし、PMP取得に必要なPDUも社内研修で取得が可能です。社外に出ていかなくても、社内で様々な情報が得られる環境です。

また、e-Learningだけではなく、人づてに教えてもらうことも可能です。分からないことや知りたいことがあれば、ラインマネージャーと、もう1つ上の方ぐらいまで聞けば、その領域だったら誰に聞くと良いのか情報が得られます。有識者と簡単に接点を持つことができます。

ただ、プロジェクトマネージャーの場合、机上で得た情報だけでは足りないと思います。得た情報を活用し、プロジェクトを通じて繰り返し実践していくことが必要です。それがお客様のためにもなるし、自分のキャリアのためにもなると思います。

このような環境を活用し、実践することに興味を持てる方は、IBMにマッチするかもしれません。

Q.最後の質問です。IBMでのキャリアを通じて成し遂げたいことを教えてください。

自分だからできるサービスを世に送り出したいと思います。これは以前から変わりません。
一定の責任と覚悟、それまでのキャリアの蓄積を総動員して、そういったものを世に送り出せたら満足です。一つと言わず、どんどん繰り返し、送り出していけたらと思っています。


根本 亮
インタビュー・執筆:根本 亮
Japan Employer Branding Manager
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